温もりのとき
「「ソフィィィ――――!!」」
急にがばっと抱き着かれ、目の前が真っ暗になった。
懐かしい温もりにふと身体の緊張が和らぐ、なんてことはなく、痛い。骨、砕けそうです。
「お父様、お母様。痛いです」
「父の痛みはさらにだぞ!木から落ちてしまうなんて……嗚呼!なんてかわいいんだ!」
「心配したんだからっ!こうなると知っていたら木から落ちたときのあなたの可愛い泣き顔を絵に残しておきたかったわ!」
「いやいやいや、色々とおかしいですよ色々と」
「はあ。私たちの娘は今日もなんてかわいいの……」
「本当にな。不思議だ……ハッもしかして地上に舞い降りた天使?」
「ハッもしかして月からやってきた月の姫?!」
「さっさと朝食にいたしましょうね?そうしましょう?」
娘が10歳にもなるのにこの溺愛ぶり。
まだ小さくてよくわからない頃は褒められるだけで嬉しくてキャッキャ笑っていたけれど、物心がつくようになってからは、二人の異常なまでの愛情に若干、いや、かなり引くようになった。
とはいっても、皇后になって王宮に移ってからは、
ほとんど会える機会もなくなってしまったお父様とお母様。
久しぶりに親の顔をみて、どこか安心してしまった自分に思わず苦笑する。
あの日のことは知られずに、両親には幸せな日々をずっと過ごしてほしい。
愛する娘が城を追われ、山賊に追われる途中に死んだなんて。
その後の世界がどうなったか、そもそもその後の世界があったのかもわからないけど。
あの頃当たり前であったお父様とお母様のやさしいまなざしを見て、そう願わずにはいられない。
☆誤字など少し修正しました。