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再会9

「あの、私もご挨拶しても?」


クロームの後ろからひょっこり現れた小柄な女性が、ニコニコと会話に入ってきた。

キュッと上がった目尻、大きな瞳、弧を描く紅い唇。

その顔は忘れもしない、ルマン令嬢だった。


「はじめまして、ルマン・ジル・コリンズと申しますわ。そちらはルーク様と……ソフィー様でお間違いないですか?」


「ええ、はじめまして」


「こんなところで会うなんて偶然ですね!……ソフィー様は確か……クローム殿下の婚約者でしたよね?ルーク様とお二人で何を?」


「それは……」

「僕がお願いして連れてきていただいたのですよ。ソフィー嬢がこの教会で慈善事業をされている聞いてね。僕の領地でも慈善事業にこれから力を入れていこうと考えていまして、参考になればなと」


「え、ええ。そうなんです」


明らかにデートに見える状況で、なんと答えるべきか思案していたソフィーを見かねて、ルークが助け船を出してくれた。


「あら、そうでしたの。余計なことを言ってしまったかしら。失礼しましたわ」


「ルマン嬢、君はあちらで待つようにと言ったはずだが」

「殿下が困っているのではないかと思いまして。すぐ戻りますわ」


ルマンは全く悪いとも思っていない顔で謝罪を口にしたあと、馬車の方へと戻っていった。

珍しくため息をついたクロームが、ソフィーに向かって言った。


「ソフィー嬢。君のところにも挨拶に行こうと思っていたが、しばらく時間が取れそうにない。告知だけしていて悪いが、とにかくまた追って沙汰を出す」


「わかりました」


「それから……これから教会に行くようだが、あまり遅い時間までうろつかないように。この辺りは最近警備を強化しているが、治安の悪いエリアもあるから何かあってからでは遅い。くれぐれも一人で歩くな」


「は、はい」


またなにか小言を言われると思っていたソフィーは拍子抜けした。

クロームは一瞬ルークの方を見た後、踵を返して馬車の方へと戻っていった。



「意外と心配性なんだな、君の婚約者」


「はい?なんのこと?」


「君から聞いた話だと、もっと冷徹で人間味のない方なんだと思ってたよ。あれはむしろ……」


「?なによ。ハッキリ言って」


「いや、なんでもない。それより早く教会に行こう。紳士は日が沈む前に君を送り届けないといけないからな」


「はいはい」


紳士的なのかただの女好きなのか、ソフィーには判断がつかなかったが、妹のリリーと同じように自分を大切にしてくれるルークのことを、信頼できる兄のように思い始めていた。


そしていつも通り教会の門をくぐると、相変わらず賑やかな声が聞こえてきた。


彼とルマンが並ぶ姿を懐かしく思うと同時に、胸に小さな痛みを感じたが、近づいてくるこども達の笑い声にかき消された。

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