再会6
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長い遠征を終えて、クロームが王宮へ戻ってきた日の翌日。
3年ぶりに執務室へ足を踏み入れたクロームは、机に積み上げられた大量の書類を前にして、黙々と事務処理に取り掛かっていた。
「殿下も大変ですね~。過酷な長旅を終えて帰ってきたと思えば、翌日にはうんざりする量の書類に囲まれて、これじゃあ休む暇なんてないじゃないですか。もちろん、殿下付きの俺も休みなし。はあ~たまには城下町でパーッと遊びたいなあ」
「ランデル。そんなに仕事がしたいなら、これとこれもやっとけ。今日中だ」
「げっ勘弁してくれよ……」
「無駄口叩いてる暇があったら休憩してきてもいいぞ。その代わりあと1週間休みなしだ」
「鬼。ここに鬼がいる……はいはい、分かりましたよクローム殿下」
砕けた口調で話す男は、クロームの幼馴染兼近衛騎士のランデルだ。
周りに人がいないときは私語連発でどうにも軽い男だが、切り替えの得意なタイプでもある。
近衛騎士としては優秀かつ頭もキレるため、クロームの右腕として周りには一目置かれている。
「婚約者の彼女には会いに行かないんですか?3年ぶりなんだから早く行かないと覚めちゃいますよ。愛が」
「……彼女はそういうんじゃない」
「そういうんじゃないって何?遠征に行ってる間、彼女に危害が及ばないようにアレコレ裏から手回して、こんなに女を大事にしたことあった?これで愛じゃないってもはや何?」
「これも追加な」
「ええーー……黙れってこと?ひどいよ。俺泣いちゃう」
そろそろ本格的に面倒になってきたので、一回力づくで追い出すか、と立ち上がった時だった。
ノックの音がして、今日たまたま王宮を訪れていたコリンズ侯爵が、アポなしで挨拶に来たと言う。
「入れ」
突然の訪問を怪しみながらも、ランデルとの会話で疲れ たクロームは、少し休憩のつもりでコリンズ侯爵を招き入れた。
「殿下、カイード・ジル・コリンズがご挨拶申し上げます。急なお伺いで申し訳ありません。実は、別の用件があり本日王宮に来ていたのですが、南部の遠征から殿下が戻られたと聞きまして。せっかくの機会ですのでぜひご挨拶をと思い参りました」
「……コリンズ侯爵。追って凱旋式を執り行う予定だ。それまでは挨拶も必要ないと知らせを送っていたはずだが。知らなかったか?」
「ええ、知らせは頂いておりましたが、気が急いてしまいました。それにお会いしたいのは私だけではなく……実は私の娘がどうしても殿下にひとことご挨拶したいと申しまして」
「殿下。ルマン・ジル・コリンズがご挨拶申し上げます。長期に渡る遠征から無事に戻られたこと、心よりお慶び申し上げます」
コリンズ侯爵と一緒に現れたのは、見覚えのある、赤い小花柄のドレスを身に纏ったルマン令嬢だった。




