再会2
「今日の収穫は終わったの?」
「ええ!近頃は雨も定期的に降ってたし、乾燥でダメになる量も減ってきたから今日は収穫も多かったわ」
「これはエルダーフラワーね!」
「さすがリリー、正解よ」
「エルダーフラワー?ハーブの種類か?」
「そう。見た目はこんなに可愛らしいんだけど、発汗作用があって、風邪の引き始めとかに効くの。あとは体内の毒素を排出してくれるから、ダイエット効果もあるわ。今日は十分に収穫できたから、近々商品化して販売しようかなって考えているの」
ソフィーは一年前、城下町にお茶の店をオープンした。
カンデス領で育てた草花でオリジナルブレンドのお茶を作って、庶民でも気軽に買えるような価格で販売している。今では大人気のお店で、新商品が出るとあっという間に売り切れてしまうほどだ。こうして売り上げた利益の半分はセントラノ教会に寄付している。
「私も飲んでみたいから、完成したら教えてね!」
「勿論よリリー!完成したら一番に教えるわ」
大好きなお茶の研究と販売ができて、毎日は充実している。ソフィーはこんな日常がずっと続けばいいのに、と思うほどには今の生活を気に入っていた。あとは殿下との婚約さえ無くなれば御の字なんだけれど。
「俺も飲みたいな~」
「リリーの次に知らせてあげるわ」
「アリガトウゴザイマス」
「えっお兄様がハーブティーを?最近は令嬢からのお茶の誘いを片っ端から断っているあのお兄様が?」
「妹よ……余計なことは言わなくていいんだぞ?」
暫くすると、リリーは土の状態を調べたいといって、畑の方に一人で行ってしまった。
大量の収穫で疲れたソフィーは、もう少し身体を休めてから行くと伝えて、俺も残ると言ったルークとのんびり話していた。
「そうだ。最近城下町にオープンしたカフェがあるんだけど、一緒に行かないか?」
「最近オープンしたお店なんてあったかしら?」
「ああ、少し外れたところにあるから、まだあまり知られていないと思う。俺も知人から教えてもらったんだが、有機野菜をたっぷり使った料理がメインで、ものすごく美味いらしいんだ」
「有機野菜……?ちょ、ちょっとだけ気になるわ。なんていうお店?」
こっそりリリーと行こうかな~?と、店の名前だけ聞き出そうと自然に質問してみる。
「……俺を置いていく気?」
「そ、そんなことはないわ」
お見通しだったようで、ルークの指摘にギクッと顔が引きつってしまった。
「俺と行くのは嫌?」
「嫌ではないけど……。リリーも行くのよね?」
「行くのは君と俺の二人。だめかな?」
そんな捨てられた子犬みたいな顔されても。ソフィーは一瞬頷きそうになったが、すぐ我に返った。
「だめです。リリーが一緒に行くならいいですよ?」
(その店にはものすごく興味があるけど、さすがにルークと二人はマズいでしょう。一応、私は殿下の婚約者ですし)
クローム殿下と婚約していることは気が重くなる話だが、最近では開き直って、婚約者という事実を都合よく利用することにしている。
「わかった。リリーには俺から伝えておくよ!」
一段と機嫌がよくなったルークは、休憩を終えてリリーと合流した後も、にこにこと二人の話を聞いていた。いつもなら二人の間に入ってあれやこれやと口を挟んでくるけど、今日は会話を邪魔することもない。
リリーは様子の違う兄をちょっと気持ち悪いなと思いながらも、思う存分ソフィーと土の状態について夢中で語り合える時間をめいっぱい楽しんだ。




