29/57
安静のとき5
「……そうか」
(わ、笑った……?)
顔を緩ませたクロームは一瞬笑ったようにも見えたが、すぐいつもの無表情に戻っていた。
「それから、君に毒を盛った犯人について調べているが、まだ真相はわかってはいない。ただし……貴族派には十分注意するように。危険なので私が遠征で不在にする間、夜会への参加はするな。あと、君を脅した男の話は他言無用だ。アマなんとかというのも忘れろ」
「は、はい」
淡々と告げられる内容は、注意というより命令に近い。
「あと」
「まだ何か?!」
じっと私を見つめた後、私にくるりと背を向けて彼はつぶやいた。
「君は……美しく、なくはない」
「へ?」
「話は以上だ」
ドアを開けて颯爽と出ていった。
なんだったの。というか、あの人最後なんて言った?
美しく、なくはない?
どっちよ!
一人になった部屋でヒイヒイ言っていると、部屋に入ってきたジェシーが心配そうな表情でつぶやいた。
「薬の後遺症かしら……お嬢様、気をたしかに」
翌日。
カンデス領についた私は、当分の間森への外出が禁止され、泣く泣く家の中で大人しく過ごすことになった。




