安静のとき3
皇子にひたすら頭を下げ続けられて肝が冷えたソフィーは、もうわかったのでそろそろ勘弁してほしいと懇願して、しぶしぶクロームは部屋を出ていった。
それからクロームは毎日お見舞いに顔を出すようになった。
といっても、体調に問題はないか、生活に支障はないかと、一言二言話して(生存確認して)また仕事に戻っていく程度だ。
忙しいのでは?と思いながらも、この国一番のイケメンに毎日お見舞いに来られて、悪い気はしない。
クロームだけでなくダンテやフィナも毎日来るので、皇子宮で過ごす時間はさほど退屈ではなかったが、一人になると、自分がなぜ狙われたか、これからどう動くべきかを考えて寝付きの悪い日々が続いた。
お茶会で毒を盛られたのは、結局クロームとの婚約が原因じゃない?という結論に至って、領地に戻る前にクローム本人に婚約破棄を申し出ようと決意した。
身体は順調に回復したが、婚約破棄については言い出せるタイミングを見計らっているうちに、一日、また一日と時が過ぎた。
もう明日にはカンデス領へ戻らなければいけない。
今日こそは、と意気込んでクロームが来るのを待っていた。
「体調はどうだ」
「殿下。おかげさまでだいぶ良くなりました」
「それは良かった」
(今日はいつもより遅かったのね)
いつもならすぐ出ていくけど、様子も少しおかしい。
考え込むような素振りを見せ、そのまま黙ってしまった。
(今がチャンスよ、ソフィー!)
ぎゅっとシーツを握りしめて、クロームに向き合う。
「殿下、今日は大切なお話があるのです」
「なんだ」
「私と殿下の婚約ですが……白紙に戻してはいただけませんか?」
「……なぜだ」
「な、なぜと言われましても……」
理由を聞かれるとは思わなかったので焦る。
「……気になる男でもいるのか?」
「はい?」
続く言葉が予想外すぎて、声が裏返ってしまった。
「いえ、そんなお方はおりませんが……」
気を取り直して。
「殿下はどうなのですか?一番初めにも申し上げましたが、私との政略結婚はあまり意味がないのではと思っています。中立派の立ち位置もそうですが、私自身取り立てて器量が良い方でもありませんし、殿下の隣に並んで遜色ないような美しい娘でもありません」
殿下は黙って私の話を聞いている。
「ましてや殿下は、私を信頼できないと仰っていましたよね?殿下が私を信頼しない限り、私も殿下を信頼できません。殿下が信頼できる女性と婚約を結び直した方が、殿下にとっても都合がいいのではありませんか?」




