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頼まれごと1

「お父様、お母様。私クローム皇子とは結婚しませんから」


昨日手を取り合って娘の婚約を喜んでいたダンテとフィナは、きょとんとした顔で自分たちの娘を見た。


「私、シスターになろうと思うのです」


カシャーン!

ナイフやフォークなど、金属が床に散らばる音が響いた。


「な、なぜそんなことを言うんだ?ソフィー……殿下のことが嫌いなのか?あんなにイケメンでこの国の皇子だぞ?!何が不満なんだ?」


「お父様……イケメンで皇子だから賛成されたんですか?」


「そ、そんなことはないよ…ただ、うちは中立派で叙位も高くない。おかしな貴族の男に求婚されて断れなくなるよりは、皇子と婚約した方がソフィーも幸せになれるんじゃないかと思ったんだよ…何よりあの美貌だからな!世界一可愛いソフィーの隣に並んでも赦せる」

「まあ変なところに嫁がされるよりは確かに…いやいやいや私の顔よりも皇子の方が数百倍お美しいですからねお父様?!」


「まあソフィーちゃん…殿下のお顔はタイプじゃなかったの?好みは人それぞれだから強くは言えないけれど……彼、すごくイケメンよ??」

「お母様はメンクイですものね。ええ、否定はしませんけど。顔は好きですけれども……というかそういう問題ではないです!」


あやうく流されそうになってハッと我に返る。天然なのか腹黒いのか、なんだんかんだいつも二人の雰囲気に飲み込まれがちだ。


「いいですか、お父様、お母様。私がクローム皇子に嫁ぐ。それはいずれ、私がこの国の母になるということです。森でのんびり過ごすことはできなくなりますし、それどころかこの国の未来を背負って立つ責任が私に降りかかるのです!」


演説が熱を帯びて、だんだん鼻息が荒くなってくる。


「そもそも私が初めて妃候補になったというだけで、これからまた妃候補は増えるでしょうし。あまり夢は見すぎない方がいいと思っていますの」


「とは言ってもソフィー……シスターになることはないだろう?もし殿下がどうしても嫌というなら、他の選択肢もある。貴族に生まれた令嬢が自らシスターになるなんてそんな」


「シスターの生活はきっとそれほど悪いものではありませんわ。見知らぬ男に嫁ぐ必要もなく、贅沢ではないけれど程よい質素な生活!やんちゃな子供たちの面倒を見て過ごす、にぎやかで穏やかな町の暮らし!私には十分幸せな人生に思えますわ」


「ソフィーちゃん、あなた本当に15歳よね?」


年若い令嬢の言葉とは思えない達観した人生論に、娘の今後が心配になるフィナだった。

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