突然のとき
無事にパーティが終わり、いつもの日常が戻ってきた頃、それは突然やってきた。
(なぜこんな状況に……?)
広々とした室内に、カチャカチャとメイドたちがお茶を用意する音が響く。
いや、静かすぎて物の雑音しか聞こえないのだ。
「あ、あの~、クローム皇子」
「……なんだ」
「もう一度おっしゃっていただけますか?最近耳が悪くなったようで……」
「あなたとの婚約が決まったと言ったのだ。ソフィー・ラ・カンデス嬢」
やっとテーブルに出されたお茶に口をつけながら、事も無げに言い切った。精悍な顔つきは一切崩れることがない。
というか、いつもより遅いお茶出し、いつもより多いメイドは気のせいかしら?頬を赤らめたメイドたちが名残惜しそうにぞろぞろと部屋を出ていく。
「とは言いましても…突然なぜ私なのでしょう?もっと他にお似合いのご令嬢がたくさんいらっしゃるかと存じますが」
あの日、国王様には丁重にお断りしたはず。
「理由はあなたの知るところではない。とにかくこれは決定事項だ」
事務的で有無を言わせない言い方に、以前の彼を思い出した。あの頃はどんなことを言われても黙って従っていた。彼のことが好きだったし、彼の力になりたいと本気で思っていたから。でも今は、
「急に言われましても困りますわ」
「……は?」
冷静さを装いながらお茶をいただく。アツいわね、この茶。
「私よりもクローム皇子の妃にふさわしい爵位の家柄のご令嬢は他に沢山いらっしゃいますし、そもそもカンデス侯爵家は王党派でも貴族派にも属さない中立な立場。もし派閥的に力を固めていきたいとお考えでしたら、今後の政権争いに備えて王党派から引き抜かれた方がよろしいのでは?」
皇子は予想外の私の発言に驚いたのか、若干目を丸くしてこちらを見ている。
ツラツラと口から出たのは、元より婚約を逃れるために殿下用に用意していた言い訳シリーズだ。
急な展開で動揺はしたが、このまま黙ってやられるわけにはいかない。ほしいのは平穏な毎日!




