症例報告:Vamp陽性患者に対する姑息的治療の一例
狐憑きは『解離性同一性障害』
おこりやみは『マラリア』
医学はまやかしの世界を光で照らしつつある。そんな過渡期の、医学と魔術と吸血鬼のお話。
深夜の救急病院。オンコールはひっきりなしだ。ほらみろまたかかってきた。
『10代女性TA。意識レベル30、第三臼歯の破折あり、外傷は見られません。ただ…虹彩に赤着が見られます。レボアキセビル服用歴の疑い』
『Vampポジ疑い了解。受け入れます』
「Vampポジ疑いが10分後到着する。Vamp陽性として扱う。到着後直ちに7番手術室に。非接触でやりたい。口外で術式使える奴いるか?」
「今日は満員です!」
「俺がキャリアになるわけにはいかないからな…誰でもいいから当直呼んでこい!」
「今手が空いてるのプシとラジしかいません…あ、ラジは医長先生が残ってくれてますね、あと術系病理さんも…挿管だけ麻酔科の先生にやってもらって術中管理は病理の先生、でどうでしょうか?」
「ラジに連絡。医長はハイリスク症例のリザーブにしたい。Vampポジの対応はさせられん。医長の相方に手術依頼しろ!」
「了解!」
『はい放射線術科です!』
『手術依頼だ。Vampポジのフラクチャー。入室は15分後。麻酔と執刀医の2人でやれ』
『えっ!?私ですか!』
『医長はヤバい症例の待機要員だ。折れてる親知らず抜いて血止めるだけだ!感染防衛と非接触だけは徹底しろ。以上』
ガチャ切りされたコール。餅屋にケーキの注文。粉まぜて焼くだけだ!と言われた気分。上司のPHSに発信する。ワンコールで緊張感のない声が返ってきた。
「こんばんはハルカちゃん。どしたん?」
「医長!私1人でオペさせられそうになってるんですけど!?」
「あー人手足りひんからねえ、Vampの破折やろ?」
「そうそう!ってなんで知ってるんですか!?」
「代わろか?」
「いいんですか!?」
「ええよ。20分後骨盤骨折と大動脈破断の合併が来はるんやけど…」
「…無理です」
「やろなあ。ほな頑張り」
低地地方の訛りが鼻に付く上司だが、DOAの境界を彷徨ってるエクストリームハイリスク症例の対応と比べたらまだ私に回ってきた無茶振りの方がマシだ。歯を抜くだけなんだから。心の中でこれでもかと悪態をついて、更衣室に向かう。
「あ、ヒナタ先生、ショアー先生!」
「あらハルちゃん、ガウンを着ない科の組み合わせなんて珍しいじゃない」
「こっから私1人でオペなんですよう…」
「ああ…お疲れ様。私これから骨盤骨折。朝日を見るコースね」
「うげえ…ヒナタ先生は?最近は迅速も病理がオペ室に入るんだねえ」
「…あ、私、ハルカ先生の麻酔…です」
「え、マジ!?」
「歯折れてるからそれなりに挿管難しいよ…?ヒナタ先生病理だよね…」
「…不安です、挿管指導はショアー先生が?」
「いや、申し訳ないけどあんたら2人だけ。Vamp陽性なの。術式で身を守れる子じゃないと厳しいわ」
「じゃあハルカ先生」
「ん?」
「まだ手洗いしてないよね、ぎゅーしよ」
「…えっ?」
そう言って彼女は私に抱きついてきた。そっと彼女はつま先立ちして、私の耳許で囁いた。
「一番不安なの先生だよね。怖かったらいつでも言ってね」
なんで彼女はこんなに人に優しいんだろう。私がお気に入りだったりするのかな。研修医とブービーを争うくらいできないお荷物なのに、この病院でヒナタ先生だけは優しくしてくれる。
手洗いを済ませ、手術室に入る。
「一応終わらせました…挿管と抹消2本、Aラインは要らないですよね…?」
「導入と維持、何使ってる?」
「普通のTIVAですよ。ガス苦手なので、ハルカ先生もおかしいと思ったらここ、指摘してくださいね」
「ばっちりです…10分ですよ…?よくこんな…?」
「大学でやったこと思い出しただけですよ。麻酔ならちょっとは…できますから…」
頼もしい。術代のメスを1人で取る。術部を見る。SOAPを思い出す。緊急性はない。丁寧にやっていけば問題ないはず。
「血餅すごいわね。どーしましょ」
「ハルカ先生、超音波使える?できるだめ高周波で」
「やってやろうじゃないの」
「小さな棒の先を激しく振動させ、血糊を洗っていく」
——麻酔から2時間半。一番来て欲しくない人がドアを開けて入ってきた。いわゆる直属の上司だ。
「ハルカちゃん、まだ終わられへんの?」
「あ…ファンデルフリンテン先生…こんばんは」
「こんばんはヒナタ先生。エルヴィンでええよ。長ったらしいやろ、ボクの名前」
「いやそんなことは…」
代打で麻酔を受け持ってくれている彼女に挨拶する。誰にでもさん付けで呼ぶような礼儀正しい真面目な先生や。ヒナタ先生と自分の属僚、同じ東洋人やのにどこでこんな差がついたんかな。
「エルヴィンファンデルフリンテン医長先生様、何しにいらっしゃったんですか?骨盤骨折のほう終わったんですか?」
「ハルカちゃんが終わらとボク帰られへんの。わかる?」
「突っ立ってるなら歯科からステープラー借りてきてください!それか手伝って!」
「どっちも無理。吸血の子やろ?ディスポの器具しか使いたくないねん。麻酔ならできひんこともないで。ヒナタ先生と変わろか?」
「ダメです!どっか行っててください!気が散ります!」
「生憎様、ERの子らはDOAの子につきっきりやけど、血ぃ止めたボクはお払い箱。今日はずーっと暇や。ボクの教育が行き届いてるお陰やな」
「歯科のウィズ連れてきてくださいよ!」
「ラジが親知らず抜いてる時点で歯科は手一杯だってわからへんの?ほんまどうしようもない子や。なあヒナタ先生」
「でも…ハルカ先生はとっても丁寧ですよ。私でも安心して管理できます」
「おもろいこと言うなあ、専門外でもヒナタ先生の麻酔は認定の先生並みや。それに比べて…」
「何ですか?言いたいことあるんですか?」
「ボクが入ってきてから7回スイッチしとるやろ。口ん中やで。血と唾の区別もつかへんの?」
「この子16歳なんで。ちゃんと止血しないと1ヶ月くらい腫れちゃうから…」
「ヒナタ先生」
「はい?」
「ハルカちゃんが馬鹿なのは僕の教育不足や。ごめんな。でもな」
「馬鹿なことやってる術者には注意してええんやで。少なくともうちの子らにはそうしてほしい。ヒナタ先生の言うことならこの子も聞くと思うし」
「何なんですか!もう!」
「ヒナタ先生、言ってやり」
「……あのねハルカ先生…出血して腫れちゃうのは心配だよね。だけどね、小さな血管を焼いていくよりも早く傷を閉じてあげたほうがいいと思うの。患者さん、Vamp陽性だけど、マーカーも低いし…」
「ヒナタ先生…そういうの早く言ってよ…」
「ラジの悪い癖やな。明日お説教や。ごめんな、ヒナタ先生」
「…嫌な気分のまま寝たくないんで…あと1時間で終わらせるんで…説教会今日でもいいですか」
「ええよ。お、ほんとに閉創だけやな。30分で閉じたら会場はバルにしたる、それ以上かかったら明日7時にボクの部屋や」
「…先生ってやる気にさせるのだけは上手いですよね」
「なんでも上手いで、君みたいに抜歯に3時間もかけられへんけどな」
「あの…」
「私も至らなかったので…一緒にご指導いただいても…」
「ヒナタ先生おもろいなあ!キミに非はあらへん。今回のケースならボクが怒鳴られて謝り倒す側や」
「まあええやろ。ハルカ先生、バルのお説教ならオブザーバーはヒナタ先生、明日になったら…えーと、今日の歯科当直、誰?」
「ペルシュマン。『エキストくらい素人でも出来るだろ』とか抜かしてヘルプをガチャ切りしやがったあいつ…」
「そらまあ破折してる吸血の子なんて触りたくないやろ。ペルシュマン先生は外傷外科医やで?ハルカちゃんがERを受けもてへん以上、完全な正論や。敢えて言うなら、素人でも出来るって言うならヒナタ先生に任せるべきやったな。まあ、あと22分。22分で終わらなかったらペルシュマン先生がオブザーバーや」
「それは絶対嫌だ!エルヴィン先生、これでいい?」
「汚ったない縫合やなあ、でもまあ勘弁したる。この後の処置を説明してみ」
「生食3L流して…」
「ダメや」
「なんで!?」
「吸血感染性廃棄物、ボトル8ポンド。3L流したら24ポンドかかるんやけど、事務長に殴られたいん?」
「これは…言い訳できないです…」
「これも、や。あと8分やで」
タイムリミットギリギリで私は処置を終えた。麻酔科医の手を借りる外科医なんて笑えない。怒られるため、駅前の居酒屋まで足を運ぶため、それぞれの更衣室に向かった。Vampポジの子の後処置はいつも大変らしいけど、私は素手でやれるから気が楽だ。
「ヒナタ先生、今日はごめんね」
「私こそ…ごめんなさい」
「共通語やめよ。私たちだけだよ」
『あ…しばらく使ってないから忘れかけてた』
『やっぱり?嶌国出身だと思われてないのかと思った』
『ハルカ先生背高いし、訛ってないし、こっち育ちなのかなって』
『違うよ!私は追放世代。ヒナタ先生は留学世代だよね』
『まあね…ギリギリ』
『はーこれで気兼ねなく悪口が言えるわ、エルヴィンってほんと最悪。性格の悪さが顔面に出てるわ。嫌な上司ナンバーワン!診断のローレンツ先生と取っ替えてほしいわ』
『でもいい先生だよ。身内に厳しすぎるかもだけど』
『出来る奴には甘いんだ。ヒナタ先生とか超気に入られてたじゃん』
『いやいや。甘やかすなって怒られちゃったよ。ハルカ先生大事にされてるよ』
『オモチャにされてんのよ。シェール大出てるからってみんなのこと馬鹿にしやがって!ちくしょう…』
『え?ハルカ先生は術系じゃないの!?』
『バリバリの医系…セントブルックリン女子医科大学…なんて聞いたことないよね』
『医学部詳しくなくて…ごめんね』
『いいんです…医系の間じゃ馬鹿で有名だから逆に知られてない方が…』
『でもすごいよ。医系であんなに術式使えるなんて』
『そんなこと言ってくれるのヒナタ先生だけだよう。もっと褒めて』
『ダブルライセンスなの?』
『ううん…全くできない系統が何個かあって、結局諦めちゃった。その点では医学部で良かったと思うわ』
『ハルカ先生っぽいなあ…先生のラジは本当に凄いと思ったよ。私のとこでもあんなに出来る人はいなかった』
『ヒナタ先生術系だよね、どこ出身だっけ』
「……シェール大の…霊理」
「ドン引きエリートじゃん…。エルヴィンをギャフンと言わせてやろうぜ!」
更衣室を出る。コーヒーを飲んでいるエルヴィンがソファに腰掛けていた。
「遅かったやないの。ボクの悪口で盛り上がってたんとちゃう?」
「女の子には色々ありますんで」
「ああ、言葉足りひんかったわ。『いつもと違って』遅かったやないの。ハルカちゃん」
偉そうなことを言ってるけど、今日は強い味方がいる。。シャール大卒エルヴィンどんとこい、だ。
「コミュニケーション取ってますからねえ。誰かさんと違って」
「そかそか。そうやって時間を無駄にしとるんやな。いこか」
駅前のバルに着く。病院から駅まで徒歩20分。私のようなペーペーは職員寮に住んでいるので駅前商店街に繰り出すのなんて半年ぶりだ。ちょっと楽しかったのに、目の前の金髪上司がそれをぶち壊しにしてきた。
「愚かな術医に乾杯」
飲み会史上最悪な音頭を聞いた。医学校時代のセクハラ教授の挨拶『本日の会費は教員は2ポンド、学生は無料。すなわちこれは実質的なキャバクラです!』を超えてきた。
「ほなハルカちゃん、ボクが怒ってること当ててみ」
「止血に時間がかかったことですか」
「せやな、なんでやと思う?」
「細かい血管まで焼いてたから…」
「それはヒナタ先生に言われたことやろ。本質やない。心臓手術でも同じことするん?細かい血管見逃してたら患者さん死ぬで」
「慣れてない手術でどうしろって言うんですか!」
「ハルカ先生、あのね…」
「ヒナタ先生。それはあかん。あくまでお説教や。気付きを与えるのが教育や。答えを渡すんはよくない」
「あ…すみません」
「ええんやで。で、ハルカちゃん。わかる?分からへんのやったら切開から縫合まで全部振り返ってみ」
「フラクチャー摘除するとき高周波焼灼しました…それですか?」
「そんなことしてたん!?初耳やな。でもいい線いっとるで」
「ペンチでスポッっと抜くべきでしたか…?」
「そやなあ、他は?」
「止血も電メスとか使うべきでしたか?でもモノポーラとかほとんど使ったことないし…」
「おお、ほぼ正解や」
「私放射線術医ですよね…?そんなん言われたらキリがないじゃないですか…!」
「なんでこの子は褒めるとすぐにボロを出すんやろ、なあヒナタ先生」
「先生は今日の麻酔、何のために入ったん?」
「痛みや恐怖から患者さんを守るためです。不安や恐れは伝播しますから…」
「キミうち来いひん?ハルカちゃんとコンバートで」
「え…」
「冗談や。この子のスカスカな脳味噌に病理が叩き込めるとは思ってへん」
「ハルカちゃんは放射線しか使えんの?医師免許持っとるんやろ?」
「私は…」
「私は放射線で戦うって決めたんです!」
「戦えてないやん。歯ぁ一本に3時間もかけて。それ、誰のための決意なん?」
「でも、今日みたいな、Vampポジティブのときは、私だって…」
「吸血の子はかわいそうやったな。ネガティブならペルシュマン先生が処置してくれはったやろうけど。まともな医者なら神経ブロックから30分で抜歯処置は終わり。朝には帰れたところを、吸血鬼だったばっかりに全身麻酔の『大手術』で結局3日間の入院や」
「でも感染の危険があるじゃないですか。出血してるVampの人は電車にも乗れないんですよ?QOLが——」
「細血管焼灼による術後出血リスクのアセスメント?エビデンスで勝負するんならそれでもええで。絶対負けへんけど」
「私はナラティブを…」
「だから、それ、誰のナラティブや?全麻かけられた吸血の子か?付き合わされたヒナタ先生か?ちゃうやろ」
「それは…」
「教えたる。自己満足って言うんや。放射線術医はリスク管理が仕事や」
「…リスク管理?」
「分からんの?血ぃ止めるんが放射線術医や。放射線適応の出血ばっか止めてたけどな、今日みたいなケースはガーゼと電メスで止めなかん。使える言うてやれ滅菌や癌治療やって色々やってるけどな、そういうんは臨床医の道具でしかない。100回は修羅場に連れていったと思うけど、まさかただのヘルプだと思ってたん?失望させんといて」
「なんでもできるのが、揺り籠から墓場まで関われるのがラジだって、そう言ってたじゃないですか!」
「ああ…ハルカちゃん医大出身やったな。そこのケアは忘れとったわ」
「…どういうことですか」
「先週の水曜日、ギネの円錐切除後のアンコントラーブルに呼ばれたやろ?ハルカちゃん、キミは内腸骨動脈からの分枝の出血を見抜いて止めたけどあれどうやってたか、自分で覚えてる?」
「ギネの先生から色々聞いて、造影見て、ここかなって思ったら破れてたんです」
「ああ、なるほどなあ」
「ハルカちゃん、ボクら先輩はどうやって出血部位特定してると思う?」
「私と同じじゃないんですか、臨床所見を確認して、血だまりの中を探して…」
「ちゃうなあ、ボクが今まで一度でも術野をガサゴソしてたことある?そんなやり方なら他の先生らに任せたほうがええやろ」
「ラジはα線の自己照射で緊急なら一瞬で手洗いが終わるからヘルプとして呼びやすいって…」
「どっかのアホ教授の方便やろ。それ」
「ボクらはな」
衝撃的な言葉だった。
「直接視とるんや。透視術式でどの血管が破れてるか一発で分かる。血管なんて大動脈でもなければタングステンケーブル1本で灼けるやろ?ボクらがしとるんはそういうこと」
「…私もそのうちできますか?先生も最初は訳が分からなかったんですよね?」
「前者はイエス、後者はノーや。ボクはハルカちゃんみたいに電離放射線を扱うのは苦手やったけど最初から視える方だったからなあ。できひん奴の気持ちは分からん」
「ねえ…」
私の味方をしてくれそうな、隣の席の黒髪の先生に声をかける。7年目、ストレートで卒業しても3×歳のはずなのに、学生だと言われてもわからないだろう。
「ヒナタ先生、こういうの知ってた…?私全然知らなかった。超えられない壁を逃げて医学の道に進んだのに、なんでここでもそうなるのさ」
「…さっき言えなかったんだけどね、あのね…」
私はヒナタ先生が好きだ。いい歳して子供みたいな喋り方をするところが特に好きだ。小児科っぽい!って言われるけど彼女は病理診断科。うちの小児科はゴリラしかいない。
「エルヴィン先生…エルヴィン・ファン・デル・フリンテン先生の前職は…」
「それは関係ないやろ、ヒナタ先生」
上司に口を挟まれて口ごもるヒナタ先生。かわいいけど。でもこいつの前職の方が気になる。明らかに弱みっぽいし。どうせろくでもない商売なんでしょ。マルチとか。
「言って。教えて。じゃなきゃ嫌いになる」
やばい、最後の一言は余計だった。逆に私が嫌われる。そんなことを逡巡している脳に、警戒方向の真反対から弾が飛んできた。
「…シェール大の教授。止血術医学講座の」
「冗談でしょ…うちの規模の病院で40手前で医長ってだけでもおかしいと思ってたのに…」
「そう、冗談や」
「先生は黙ってて」
「たった3期で終わっちゃったんだけどね、私の先輩が受けてて、あんま評判は良くなかったみたいなんだけど…その…」
バレてしまったなら仕方ない。そんな表情で彼は種明かしをする。
「教えることが無さすぎたんや。ボク、1回目の授業の最初にな、犬を連れて来てん」
「330人が見てる中で術式で細動脈切ってな『1Hと35Clに合わせて2DNMR、あと複素透視で見てみ、写像はあかんで』って言うたんや。せやけど写像使わんと複素透視できたんがまず3割、2次元磁気共鳴できたんはその中のさらに半分、マルチバンド走査ができたんは7人しか居いひんかった」
「そりゃそうでしょ!レベル6の観測術式4個と7の観測術式2個併用!絶対無理!あーでもシェール大の術医でそれかあ…うーん…?」
「でな、分からへんのかな思て魔導方程式を板書してやったんや。写像と触媒アリにしたらレベルは2コ下がるやろ?犬が貧血で気ぃ失うまでに何人が再現できたと思う?」
「わかんない、ヒナタ先生にパス」
「まあこれはええやろ、でもヒナタ先生は霊理やからな。外すかもな」
「難しいのは慣れない35ClのNMRですけど、普通のNMRができるなら機械流体触媒を使えばできないことはないと思います。上位10%の30人くらいは出来たのかな…と」
「その気持ちわかるで。ボクもだいたいおんなじ見立てやった。でも結局教えて出来たんは3人。最初からできた7人は全員領域志望やった」
「2回目の授業からはノーマジにもできる止血医学を教えた。市民救命講習で教わるような圧迫止血とか、ちょっと術式を使うんは冷凍とかな」
「…楽単教授じゃないですか。ちょっと見直しましたよ」
「ハルカちゃんのそういうとこ好きやで」
「話戻すで。1回目の授業で悟ったんや『これは学問やない。才能や』ってな。ダイヤが欲しければ石ころを磨くんじゃなくて原石を拾いにいかなあかん。一度就任した教授職は王法で3年間はその身分が保障されとるからな。シェール大最年少教授の威光を着て色んなとこに勧誘に行った」
「女子医大に来たのも…じゃあ…」
「そういうことや。ハルカちゃんとこの大学は緩くてな、シェール大追い出されて地方都市の総合病院で新興診療科医長なんていう怪しい肩書きのボクも受け入れてくれた」
「まあ…ウチってそういうとこですから…」
「でな、学長先生に『放射線使える子がいるよ』って言われてハルカちゃんに会いに行ったんや。当時この子は熱帯医学研究室で人間オートクレーブやってはったんやけど、ヒナタ先生には言わんほうがよかったかな」
「もう言ってるじゃないですか!」
「…人間オートクレーブ?」
「あれだよ、私全然研究できなかったからさ、実験器具にガンマ線を照射して滅菌する係をしてたんだ」
——鉛の部屋に入れられて、滅菌したい機材が置かれる。私はその部屋で全方位に、ストレスを発散するためにモノに当たるように、放射線を照射して滅菌する。そしてみんなが帰った後、先輩の論文の『おこぼれ』を書き写す。悲惨な青春扱いされるからあんまり人には言わないけど「縁の下の力持ち」って感じがしてたから、あまり嫌じゃなかった。ということにしている。
「はじめまして、ボクはエルヴィン。キミは?」
鉛の扉を開けて誰かが入って来た。部屋の光が差し込む。安全のため、こちらから解錠しない限り開かない作りになっているのに。鍵を閉め忘れたのかな。でも普通は誰でもインターフォンを鳴らして解錠を求めてくる。
「ハルカ・———。……って違います!どうやって入ってきたんですか!?ここ危ないですよ!」
「何が違うんやろ。まあええわ。ボクな、キミを口説きにきたんや」
「………」
「えっ!?」
「いやっ!私彼氏いるんでっ!」
「おらんやろ」
「失礼なっ!?事実ですけど!」
「やろ?」
「でもあなたとはお付き合いしません。ごめんなさい!」
「まあ話だけでも聞いてや。ボクな、ハノーファー総合病院で働いとるんや」
「…病院のスカウトですか」
「そう、放射線術科や」
「放射線科ですか?すみません興味ないです。診断にも核医学にも」
「ちゃうねん。『放射線術』や。ラジオ波からガンマ線まで、あらゆる周波数の電磁波を使って、魔術にしかない指向性を使って診断から臨床までなんでもこなす。究極のジェネラリストやな」
「ERも興味ないかな…総合内科とかも別に…」
「へえ。ハルカちゃん、もう心に決めた相手がおるんやな」
「そうですね…感染症です。今は手術室をホルムアルデヒドで燻してますけど、私なら1分でクリーンにできます。そういう力なんです。私のは」
「ふーん…厳しいこと言うで、ハルカちゃん。これ何かわかる?」
写像板に提示される写真。血液培養のグラム染色。紫色。双球菌。ピンと来た。
「肺炎球菌!」
「ハズレ。腸球菌や」
「…うっ」
「こんなん初歩中の初歩やで。できて当たり前なんや。感染症内科志望なら。これは血液や。敗血症患者やで?キミの鑑別に従ってペニシリンを入れても効かへんやろなあ。外したら死ぬ症例を今外したんや」
「……でも!訓練すればそのうち…」
「じゃあキミの言う『訓練』で何人死ぬん?いや、何人殺すん?」
何を言ってるのか分からなかった。消化器外科のジャクソン教授だって犠牲にしてきた患者数を自慢してたのに。医学が歩んできた道に広がる屍を侮辱されている気がした。
「…それって悪いことなんですか。医者が一人前になるには犠牲がつきものじゃないんですか。だからこそ目の前の命を大事にできるんじゃないんですか!」
「医学部さんってキミみたいな子にまでそういうこと教えてはるん?おっそろしいなあ。怖くないの?ハルカちゃん」
「怖がってたら、医者なんかできないじゃない…」
「ボクは怖いで。血ぃ見るんも嫌や。放射線術医はな、今んとこみんな術師や。医者が平然と死に立ち向かう現場で青い顔して震えとる。ボクらは免許は持ってるけど医系さんとは違う。診断を捨てて電磁波で戦う、リスクを管理して救って成長するのがボクたちや」
「全然かっこよくない…」
「そやな、かっこよくはないなあ。でもな『犠牲の上に一人前になる』なんて理屈が通じるのはちゃんとした医者だけや。ハルカちゃんの評判はだいたい聞いとる」
「死を克服する学問で死を恐れるなんて。殴られることにビビってるボクサーと一緒よ。周りがどう言おうと私は医学部に入ったときからもうリングに立つ覚悟はできてるの」
「医学は生と向き合う学問やで。知らんけど」
「全ての学問が生と向き合う学問よ。医学はそれを脅かす敵から身を守る学問なの」
「ちゃんと考えてはるんやな。気に入った。これ見せよ」
写像板を差し出される。見たことない色味だ。
「これ射影板。写像板の連続記録装置ってところやな」
彼が手をかざす
「…なにこれ…ひどい」
「酷いやろ。末期の胃癌や。もうそこらじゅうに散らばっとる」
「これ、これをどうにかできるの?」
「できひん。わかるやろ」
「…じゃあなんで見せたの。治せないものを見せて。絶望させたいの?」
「ほかになにも見えへんのか?来年国試やで?」
「…カラードプラーにして」
「超音波やないねんけどなあ、流路解析はあるで。似たようなもんやろ」
「噴門部から出血……なにこのワイヤー…あれ?止まった?」
「ちゃんと見れとるやないの」
「当然よ。医学部だもの」
「球菌の鑑別外しとったけどな」
「これなんなの?こんな機械見たことない」
「やろうなあ。ただのタングステンのワイヤーや」
「なんでこんなことができるの」
「出血部位を特定して放射線照射。新生血管を壊死させて吐血を止めた。それだけや。癌は全く小さくなっとらん。いわゆる姑息的治療ってやつやな」
「この癌を治す研究が私たちの使命でしょ!吐血を止めて満足?いいわね術師は低レベルな世界で!」
思わず怒鳴ってしまった。殴られるかな、いや、殴るタイプじゃないな。もっと辛いことを言ってくる感じだ。言葉の暴力タイプ。そんな予想と裏腹に、彼は私の首を指差す。レーザーでも撃ってくるのかな。魔術師なんて全然分からないや。
「ハルカちゃん」
「なに」
「濡れてるで、ほら」
教授、助教、先輩、同期、みんなと違ってメチレンブルーの汚れひとつない綺麗な白衣の襟が、瞼から溢れた液体で赤く染まった。一番見られたくないものを、見られた。でもいいや。スカウトを断るシンプルな理由になる。それどころか彼はすぐ逃げていくだろう。この部屋に、私はまた一人だ。
「分かったでしょ。私が体良くここに閉じ込められてる理由」
「ハルカちゃん」
もう一回名前を呼ばれた。彼の裾が私の頬を拭った。
「もう闘わなくても、逃げなくてもええんやで」
「なにしてるの、この意味わかってるでしょ、あなた色盲?」
「吸血鬼やろ。涙は感染源やない。ボクこれでも医者やで」
「それに」
「赤い涙はちゃんとレボアキセビルを飲んでそれが効いてる証拠や。リゾチームの共役系がちょっと長なってるだけやよ」
「医者っぽいこと言わないでよ…」
吸血鬼病はVampウイルスに感染することで発症するとされている。免疫を司る細胞がだんだんと減っていき、やがて日和見感染を起こして死ぬ。発症を防ぐため、脳は自分と異なるMHCクラス1分子を持つ細胞を摂取して、免疫を叩き起こそうとする。飲血衝動だ。私が生まれるちょっと前くらいに、飲血衝動に対する特効薬が開発された。レボアキセビル。でも免疫機能の回復は望めないから結局少量の血をリンパ節に注射する。軽症の人は月に1度、だんだん進行してきて、毎日打たないといけなくなる。そうなれば死は近い。
「でも不思議やな。みんな目ぇ赤なる言うて薬飲まへんけど、ハルカちゃん普段は赤ないで」
「シャント手術受けたのよ。おかげで24時間ドライアイ。でも色素の定着は抑えられたわ」
「へぇ。そんなんあるんやな」
「Vamp+、CD198+細胞<100個/μL、飲血は1日2回経髄に全血2mL。分かるでしょ」
「Vamp細胞の数はいいのに飲血量多いなあ。クラスⅢ?」
「クラスⅣB。今年が最後の夏になるって言われ続けて20年、自分でも引くほど健康よ」
「ええやん。血液接触しても感染せえへんやつや。免許取れるで」
「取れないわ。指定感染症だもの」
「クラスⅣは指定から今年外されるで」
「どこ情報よ」
「衛生省医事管理局」
「なんでハノーファーの勤務医が中央の情報にアクセスできるのよ。おかしいじゃない」
「出身大学のコネやなあ。ボクが嘘つく意味ないやろ?」
「…あなた何者よ」
「言うたやないの。ハノーファー総合病院放射線術科医長、エルヴィン・ファン・デル・フリンテン」
「フリンテン家…!?」
「キミこそ——家やろ。お互い家柄の話はやめよ。気分悪なるだけや」
「わかったわ」
「本題。ハルカちゃん。もうここ抜けよか。ポリクリとしてうちで経験積も。ボクがさっき写像板と東方の医学書寄贈を申し出たら単位に加えて卒業認定の約束までしてくれはったで。ここはそういう大学や。問題は国試やけど9時5時で帰したるから頑張って勉強し」
「それ私に何かメリットあるの?闇医者やれって言ってるようなもんじゃない」
「あくまで医師の監督下でやる補助行為や。問題ない」
「メリットは?」
「キミが一流になる道を用意できる、キミの家から解放してあげる、勉強もちょっとは教えられるかもなあ」
「あとは?」
「それくらいやな。もう逃げんでも、隠れんでも、負け戦を挑まんでもいい」
「条件もあるでしょ」
「そらな。みっつ。ひとつめ、今日から5年は転科しないこと。ふたつめ、ボクには上司として接すること。さいご、Vampの病状に変化があったら絶対にボクに報告すること。ええか?」
「釣り合わないでしょ。最後の条件の理由は何?」
「条件を呑んだら、教えてもええよ。でも聞かない方が身のためやと思うよ」
「……断る」
「じゃあもう一個つけたる。ボクだけはキミが教授になっても何歳になってもハルカちゃんって呼び続けたる。どお?」
なんでこんなしょうもない理由で心の平衡が傾いたのか。全然分からない。メリットと条件が均衡に近かったのか『おまけ』が魅力的だったのか。本当にわからない。でも気付いたら。私の口は条件を受け入れてた。
「——分かりました。ファンデルフリンテン先生」
「エルヴィンでええよ、長ったらしいやろ。ボクの名前」
「Vampの病状に変化があったら、という条件、教えてもらえますか」
「ちゃんと敬語使えるやないの。いい子いい子したる」
「はぐらかさないでください」
「どうしても聞きたい?」
「はい」
「魂魄麻酔って聞いたことある?」
「…なんですか?それ」
「呪術や。魂の相分離操作を行う下準備」
「何の関係があるんですか」
「吸血鬼の呪い、医学風に言えば「遷延性VAMP症候群」を治療できる」
「…は?」
「ハルカちゃんみたいなⅣ型はある日突然血球貪食起こして死ぬやろ?それを防げるんや」
「…?」
「分からへんか。Ⅰ型とⅡ型はウイルス感染症、Ⅳ型は呪い、Ⅲ型は呪いとウイルスの混合型やな。感染症は物理的な異物の侵入やから魂魄をどうこうしたところで治せへん。呪いは魂魄への感染だと考えてもらってええよ」
「なんで公表されないんですか、そんな大事なこと」
「どうしようもないからや。この術式を行える魔術師は王国に12人。VampⅣ型は13万人。どうしたって手が足りひん。魂の相分離は最後の手段や。それに呪いは発症しないとよう取り除かれへん」
「発症したときに助けてくれる…そうおっしゃりたいんですか」
「そや。でも助けてあげるのはハルカちゃんだけや。ほかの発症患者は絶対に繋げへん。キミがいくらお願いしても、キミの担当患者でも、絶対に、助けへん。看取ってもらう」
「そんなこと私が望んでると思うんですか…なんでそんなことするんですか」
「ボクは術道の人間、ハルカちゃんは医道の人間だからや。ここはきっぱり分けんと、みんなが不幸せになる」
「救える手段があるのに使わないなんて間違ってます…」
「医学の発展に犠牲はつきものなんやろ?ボクはハルカちゃんを医学から解放したるとは言ったけどこっち側に招くつもりはない。吸血鬼は医学が解決すべき『疾患』や」
「ああもう泣かんといて、やたらに泣くのもダメや。こっからよう環境変わるで」
——これだから回想は嫌なんだ。喋りたくないところまで喋ってしまって。赤色の涙が頬を伝っていた。どこまで喋ったんだっけ。
「ハルカ先生、大丈夫。なんとなく、なんとなくだけど分かったから。周りに人に見られたくないでしょ。落ち着いたら合図してね」
そう言ってヒナタ先生は、自分の胸に私の顔を抱き寄せた。このどうしようもない優しさが大好きだ。こっそり耳打ちしてきた。
「何型?言いたくなかったら言わなくていいよ」
「……ⅣB」
「…そっか。大丈夫なやつだね」
数秒の静寂は会の主催者によって破られる。
「あれ、ヒナタ先生どないしたん?強張ってるで、顔」
「大丈夫。いくら泣いてもいいの。私たちは医者だから…」
「違うやろ。ボクらは術師や」
「医者です」
「術師や。ちなみにボクは7相11環抑性や。ボクとハルカちゃんの距離感でⅣBを疑わなかった言うんならそれは正しい判断や。ゴメン」
「あなたは術師かもしれません。でも私は医者です」
この人たちは何を話してるんだろう。なんでこんなときに肩書きを争ってるんだろう。どうでもいいことじゃない。
「…それ今話すことなんですか」
「ハルカ先生、聞かないで」
「まあそやな、レアとはいえⅣB型疑いを否定せずに抱き寄せた時点で霊理失格や。失望したわ」
「私は病理医です。霊理術師じゃありません」
「そか。ハルカちゃん、聞きたいなら話すで。自分の身体のことや」
「ヒナタ先生ごめん…。でも聞きたい…ごめん…」
「Ⅳ型吸血鬼にはA〜Eまで6種類がある。B型はスーパーレアで、感染経路が面白い。ⅣB型はスリーアウト制なんや。ⅣB型吸血鬼に3回魅入られると、自分も発症する。人によっては2回、1回で発症する人もいないことはないけどな。でも3回目は確実や」
「魅入られる…?」
「吸血鬼は鬼や。鬼に好かれることを『魅入られる』言うんや。怪しいなあ思てたけどさっきのハグがトドメやな。ハルカちゃん、ヒナタ先生のこと好きになってもうたやろ」
「私が…鬼?」
「鬼。魂の性同一性障害だと考えてもいい。ハルカちゃんは自分を人間だと思っている鬼や」
「なんで言ってくれなかったの?」
「端的に言えば無礼や。ヒナタ先生が怒ってはったんはそういうことや。真偽を問わず「お前ゲイだろ」って男性に向かって言ったら失礼やろ?それとおんなじ」
「私が…鬼…で人を好きになっちゃって…」
「別に否定しなくていいんやで、好意のベクトルは自由や」
なんで言ってくれなかったんですか、いつもならそう返していて、きっとこの男は「医学の問題だ」とか言って、大昔に私がかぶれていた進歩主義を持ち出して嘲るのだろう。けれど、今日の私の口から出たのは全然違う類の言葉だった。
「ねえ…ヒナタ先生はどうなっちゃうの?」
「さっき言った通り。魅入られたのが1回目ならまずセーフ、2回目もまあセーフ、3回目は100%アウト」
「どうなっちゃうの!」
「1回目と仮定しよか。まず他の人を好きになるときⅣB疑いを排除する。カウントは子孫に受け継がれるから子どもの相手も気をつける。2回目なら遭遇可能性を考えてもうハルカちゃんとずっと一緒にいる方が安全やろな。鬼は縄張りを作っているから『3回目』を避けられうる。3回目ならすぐに2人は離れたほうがええな。鬼の縄張りが2回目と逆に作用して
魂魄自殺を招きかねない」
「ヒナタ先生、ボクは澄鏡を読むのは苦手やねんけど、大体の魂相なら見えるんや。ハルカちゃんのが感染したのかどうかは1週間は経たないと分からへんけど、現時点のカウントなら分かるで。何回目か当てたろか?」
「ダメです。医師免許を持っている以上守秘義務は遵守してください」
「そか、残念やな。ハルカちゃん、子孫に受け継がれていく性質を持つ、要は遺伝子みたいな形質が、なんで10万人に1人の希少疾患になってるんやと思う?」
「…淘汰圧でしょ。同性愛が遺伝しないのと一緒だよ」
「ちゃうなあ。鬼が死んだら、カウントがチャラになるんや」
そのときのヒナタ先生の表情を見た私は、彼女が何番目なのか分かってしまった。分かりたくなかったことを、平気で暴いてくる。
「…ヒナタ先生霊理だよね。『魅入る』ってさ、ネガティブな感情でもいいのかな。このクソ上司にも効くのかな」
「…いいわ。一緒に殺しましょう」
「ヒナタ先生おもろいなあ!ほんと。さっき言うたやないの。ボク第7相11環抑性。絶対に吸血鬼にならへん形質や」
「知ってたやろ」