神の宣告(仮)
私が夢で見たものを頑張って思い出しながら少しずつ改編しながら書いてみました。
そこら辺にありふれた展開だったり伏線ばかりですが生暖かい目で読んでいただけるとありがたいです.*・゜(*º∀º*).゜・*.
10歳の初詣の時に神から
「ここで働け、お前は10年後にそこの火事で死ぬ、そこで他の人を助けるのがお前の定めであり運命だ」
と告げられた
月宮虎太郎は平々凡々な容姿で人のお願いは断れない質なうえ、生きる事にやる気がなかったこともあり、神の言うことに従う事にした
虎太郎は高校を卒業し言われた場所へ就職した
就職先はもちろんそんな事があるなどとは知らない為、普通に就活をして無事就職が決定した
就職した場所は町外れではあるが、そこそこ有名な旅館であった。派手という訳ではなく昔の日本の良さを閉じ込めたようなお淑やかなわびさびを感じさせられる場所である
旅館にはすぐ横に別館があり、そこで暮らしながら働くことになった。今時と言っていいのか男女同じ棟で暮らすという事を後に知らされるがそれはまた別の話…
そこまで人手不足では無い為その年の雇用人数が前年に定年退職で空いた3人だったので今日は顔合わせが行われる別館の食堂に来た
男の友達ができればいいなという小さな願いは打ち砕かれ、黒髪ショートヘアでメガネをかけた女の子といかにも都会にいそうな言ってみるとギャルのような見た目の女の子の2人が話し込んでいた
ギャルの方が主人公を見つけると、立ち上がって近づいてくるやいなや
「なんでここに男がいるのよ!あんた誰?」
あれ、さっきまであんなに笑顔で話してたのに急に怒鳴られることがあるか?
と心で思いながらも
「僕も今日からここで働くことになった月宮虎太郎と言います」
と、自己紹介をしてみたがギャル、もといヤンキー女は
「あっそ」
と言って席へ戻っていってしまった
少し気まずくなってしまったところで、女将さんが入ってきて顔合わせ会が始まった
「月宮虎太郎と言います。趣味は読書です。よろしくお願いします」
と自分はシンプルな小学校からずっと使っている自己紹介文をコピペして発言した
続いて大人しそうな女の子の方が立ち上がり
「空見まほと言います。運動は苦手で、す、好きな食べ物はシチューです。一応この旅館の女将の娘です。よろしくお願いします」
と少し可愛げのある自己紹介が終わった
次にギャルの方だが、
「星野愛です。よろしく」
と素っ気ない挨拶で終わった
自己紹介が終わり、仕事の内容や別館の使い方などの説明を受けた後3人で色々と話すようにと言われて顔合わせ会が終了した
「あの、虎太郎さんはなぜうちで働こうと思ったんですか?」
と、まほに聞かれたが神に言われたからなんて言ったって笑われるだけである
「昔家族でここに泊まったことがあって、とてもいい所だったから働いてみたいなって思ったんだよ」
…嘘ではない。現に家族とこの周辺に旅行に行く時は毎回この旅館を利用していたのだ
「そうなんですね、そう思ってくれるとみんな嬉しいと思いますよ」
「雰囲気もいいし周りの自然も綺麗ですごく好きなんだよね」
などと2人で会話をしている間横でそっぽ向いている愛にも
「星野さんは何故ここに?」
「親がここが好きだからここで働けって言われて来ただけよ」
「あ、そうなんだ。ここに何回も来てるんですか?」
「来てない」
「そ、そうなんですね」
というぎこち無い会話が終わりを迎え、少しの沈黙を経て
「明日は朝早いですからこの辺で解散して休みましょう」
というまほの言葉でその場は解散となった
最初の1年は覚える事が多すぎて目まぐるしい日々を送っていた
部屋数も多く、礼儀に厳しかったり今まで気にしなかった事も言われるので大変だった
3人は同い年であった為、少しずつだが仲良くはなっていた
まほは当初から気さくに話してくれていたが、虎太郎から仲良くなろうと話しかけていたら愛も慣れてきたのか少しずつだが会話ができるようになった
1年が経ったある日
春の忙しい時期のお昼の休憩時間にトイレから休憩所に戻る途中に階段の方から大きな音がして急いで駆けつけると、散らばった洗濯物と倒れて蹲った愛の姿があった
「大丈夫か!落ちたのか?」
と近寄って声をかけてみるが唸るだけで一向に返事がない
焦った虎太郎は愛を急いで女将さんの所へ背負って行き、仲居さんの1人と病院へ向かった
見送ったあと階段に散らばった洗濯物を片付けようと戻ると、まほが先に片付けをしていた
「急に駆け込んでくるからびっくりしたよ、愛ちゃん大丈夫かなぁ」
「慌てちゃって、ごめん。血は出てなかったようだけどどうだろう、心配だね」
「うん、心配だね。すぐに駆けつけて助けてくれるなんて虎太郎くんはヒーローみたいだねっ」
「そんなんじゃないさ、あの状況だと誰だって心配するって!」
最近、こうしてまほはからかってくることが増えてきた
夜に愛が帰ってくると虎太郎の所へ来て
「虎太郎、今日はありがとう。足踏み外しちゃって、、ドジふんじゃった」
と笑いながらお礼を言ってきた
幸いにも骨は折れておらず、捻挫と打撲で済んだ
すぐに他の人とのところにも謝りに行くと言って行ってしまった
その日から愛からあの時のお詫びだと言って、夏祭りに誘ってきたり休みの日に美味しい店へ一緒に行ったりということが増えた
「別に大したことをしたわけじゃなかっただろ、そんなにする必要ないぞ」
と毎回言うのだが
「私にとっては怖かったんだよ、ほとんど命の恩人みたいなもんなんだから素直に受け取ってよね!」
と愛はいつもそういう風に答える
虎太郎はそれが心地よく思えて何も言えず受け入れてしまうのだ
そして虎太郎は8月7日に20歳の誕生日を迎えた
もう3年目となると仕事もある程度様になり、仲居さん達や厨房の人達とも仲良くなっていた
3人の中で1番誕生日が遅かったので、3人の誕生日をまとめて祝おうと従業員全員で飲み会が行われた
お酒を今まで飲んだことがなかった虎太郎は日本酒を1口貰ったが美味しいとは思えずお茶を飲んでいた
厨房の男達は豪快に酔っ払って大声で話しており、女性陣もみんな陽気になっていた。女将さんだけは流石というかお淑やかに飲んでいた
忙しなくすぎる日々に神に言われた言葉が頭から抜け落ちていた
10月に入ったある早朝、自分の咳で目が覚めた
部屋の中に煙が充満していることに気づいた虎太郎は、直ぐに窓を開けて煙の出処へと向かった
向かった先は別館の食堂だった
そこには料理長が既に消火しようと水を撒いていた
「大丈夫ですか!とりあえずみんなを起こして本館のお客様に避難誘導出来るようにしてきます!」
「すまねえな!できるだけ急いでくれ」
「はい!!」
虎太郎は別館で暮らしている人達の部屋を回って事情を説明し、本館へ向かった
この頃に別館に住んでいた人は虎太郎達3人と女将さんと仲居さん2人の6人しかいなかった為、女性4人が本館へ向かって避難誘導して男で別館をどうにかするという振り分けとなった
もしものために自分の部屋から貴重品は移動させてみんな持ち場に移動した
女将さんが先に消防署へ連絡はしてくれたらしいが、町外れにあるため来るとしても30分はかかるという
最初に来た時よりも火が燃え広がっており、とても数人で消す事ができるものではなくなっていた
被害を抑えようとしていたが、15分が経とうとする頃には本館にまで火がまわってしまっていた
「本館も人が足りてねぇかもしれねえからお前はあっちの応援に行ってくれ!残念だがこっちは諦めるしかねえかもしれねぇ」
「了解です!料理長も危ないと思ったら早めに避難を!!」
そう言って本館へと走って行くと玄関から沢山の人が出てきていた。この時期は近くの紅葉が有名な場所がある為、人が多いのだ
「みなさん!慌てないで!安全に外へ向かってください」
と声をかけながら本館の奥へと向かっていく
「虎太郎!」
と愛に呼ばれて振り向くと30代と思われる夫婦と一緒にいた
「中にお母さんと娘がいるんです!先に避難してると思って出てきたら誰も2人を見てないって言われて」
「どの部屋に泊まられてましたか?」
「菊の間らしいのよ」
菊の間は3階の奥から2番目で別館に2番目に近い場所だ
「別館側に一部屋挟んでいるから気づきにくいのかもしれないわ」
「わかりました、私が見てきますので皆さんは先に避難しておいて下さい」
と虎太郎が向かおうとすると後ろから追ってくる足音が聞こえる
「私も行くわ、何かあった時に2人の方がなんとかなるもの」
「……わかった、じゃあ急ごう」
向かう間もまだ避難している人達の避難誘導を行いながらなのでなかなか進めず、たどり着いた時には部屋の前まで火が来ていた
とにかく菊の間の中へ入ると先程の夫婦の母親と娘であろう2人が窓のそばで泣いている娘をあやしていた
「大丈夫ですか!まだ道も通れそうなのでこっちへ!」
2人を連れて避難をしていると娘さんが1階まで降りたところで急に戻ると言って手を振りほどいて走り出した
虎太郎が追いついて事情を聞くと、宝物をお風呂に置いてきたと言ってただをこね始めた
内容を娘の祖母と愛に伝えると
「僕がそれを取ってくるからお姉ちゃんとおばあちゃんと一緒に外で待っててね」
「大丈夫なの?もう火が回っていつ崩れるかわからない状況よ」
「まだなんとかなるだろう、この子を行かせるなんて出来るわけないし」
「うん、分かったわ、でも無理はしないでね。2人を外へ連れていったら火を止めておけるように何とかするから」
「わかった、じゃあまた後でな」
そう言ってそれぞれの方向へ向かった
別館側はもうほとんど火が回っていたが床はまだ大丈夫そうだったこともあり勢いをつけて菊の間まで駆けていった
お風呂場に入ると、奇跡的にそこにはまだ火が来てなかったようで、あの子の宝物である写真が防水ケースの中に入って置いてあった
急いで外へ出ようと入口へ向かうと扉が燃え始めていたので蹴破って廊下に飛び出した
そこはもう足の踏み場もないほど燃え始めていて、所々が既に穴あきになっていたり脆くなっている
どうにかこうにか階段までたどり着いたが、下の階も火の海でいつ崩れてもおかしくないまでになっている
その頃には上からも木片が落ちてくるまで時間が経っていた
急いで戻ろうと火の中を駆けて行くと玄関が見えてきた
「虎太郎、急いで!もう崩れ始めてるわ」
「あぁ、なんとか……」
ガラガラガラッ
「虎太郎ぉぉぉぉ!!」
愛の叫び声が聞こえた
(あぁ、ここでこうなる運命だったんだ…ここで死ぬんだな、、この2年ちょっとは楽しかった。もっとここで過ごしたかった!もっと生きていたい!!)
そんな気持ちを踏みにじるかのように上から瓦礫が降ってきて目の前が真っ暗になった。。。。
2年後、、、
虎太郎は病院のベッドの上で目を覚ました。
ベッドの横には目を見開いて涙を浮かべる母親と愛とまなの姿があった
終
最後まで読んでいただきありがとうございました。