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お前の名前は? 第1話

いつものようにソファに座りコーヒーを飲みながらパソコンに向かいコシミズは真剣な顔をしていた。

「何してるんだ?」

隣の工房から黒く汚れた手袋を脱ぎながらリビングに入ってきたアオキが聞いてきた。

「なにって仕事だよ、そりゃもう」

「うそですね、さっきからパソコンでゲームをしていたじゃないんですか?」

ソファに座っているエルヴァの持っているブサイクなぬいぐるみが言ってきが鼻で笑っていった。

「パソコンの画面の反対側にいるお前が何で俺がゲームをしてたなんてわかるんだよ?」

「ふふ、それは私がスーパーコンピューターでコシミズさんがタイピングした時のキーの音を分析して使用されているキーが少ないことから容易に想像できますよ」

「想像しただけだろ?スーパーコンピューターのクセに何か物証を出してみろよ、動けたらな」

言ってコシミズが笑ったが今度はエルヴァの隣に座っていた黒田ユウがため息を付き呆れながらコシミズを見た。

「コシミズさん、後ろの窓に映ってますよ、パソコンの画面が・・・」

思わず後ろを振り向き窓ガラスを見るとガラスに映る自分の体の端にパソコン画面が移っていて今までしていたFPSゲームの画面が移っていた。

「まったく、すぐに嘘をつくんですから」

「そういうなよ、あれでも首領なんだから」

ユウに言いながらアオキがその隣に座った。

「あれでもは余計だ」

「やっぱりあれでもですよ、あれでも」

ブサイクなぬいぐるみが言う声が聞こえるとアオキが言った。

「なぁ、ぬいぐるみ」

「なんです?アオキ」

「アオキさんだろ!」

殴ろうとしたがすばやくエルヴァが庇ったので殴るのをやめてため息を付いたので何かが引っかかり聞いた。

「どうしたんだ?アオキ?ため息なんか付いて?そのぬいぐるみむかつくのか?燃やすか?壊すか?」

アオキが笑うとエルヴァが振り返りコシミズを見た。

「冗談だよ、冗談、そんなことしないさ」

(つい昨日のことだが冗談でコシミズがぬいぐるみをゴミ箱に投げ捨ててアオキが火をつけようと近くにあったライターの火をつけた瞬間にコシミズの体が浮かび上がるとアオキの手に持っていた火の付いたライターが飛んできて服に燃え移りもうすぐで丸こげになるところだった)

エルヴァが超能力を使わなかったことを確認したアオキが言う。

「今気が付いたんだが、俺達がブサイクなぬいぐるみって呼んでいるエルヴァのぬいぐるみの名前ってあるのかなっと思ってな」

「そういえば聞いたことがあるような無いような・・・・」

コシミズは口を開けながら天井を見て少し考えて答えた。

「そもそもだが、俺はエルヴァの声も覚えてないよ、だって最後に聞いたのがあの研究所から」

「研究所?」

ユウが不思議そうな顔をしながらすぐに聞いてきた。

(そうだ、ユウにはエルヴァは親戚の子供を預かっていると説明していたんだった)

「違った違った、とりあえずまぁ覚えていないってことだ」

「まぁ、俺とコシミズが話しかけても何も言わないしな」

アオキが言うとコシミズはなんとなくだが座っているデスクチェアを回転させてクルクルと天井を見ながら回った。

「まぁ、そのことは置いておいて」

「置いておいていいんですか?コシミズさんがエルヴァちゃんを預かっているんですよ、保護者として無責任なんじゃありませんか?」

コシミズの発言にユウが食って掛かってきたので仕方なく椅子の回転を止めて前にいる三人を見てどう言い訳をしようか考えているとアオキがユウに向かって言った。

「まぁ、まぁ、その点はユウさんがいないところでコシミズも気にしているみたいだからそんなに責めないでやってくれよ」

アオキがすかさずフォローしながらコシミズを見てきたので頷くとユウはまだなにかいいたそうだったが口を閉じてくれたのを見てアオキが続けた。

「それでこのブサイクなぬいぐるみの名前なんだがエルヴァは何て呼んでるんだ?」

全員がエルヴァの抱いているぬいぐるみを見たがぬいぐるみは黙ったまま何も喋ろうとはしないのでコシミズが呼びかけた。

「おい、聞こえてるんだろ?返事しろよ」

だがなにも返事をしないので仕方なく立ち上がりエルヴァの抱くぬいぐるみに近づいて覗き込んだがぬいぐるみなので表情がないので何も分からないのでもう一度聞いた。

「おい、何て呼ばれているか聞いてるんだ、返事くらいしたらどうだ?」

すこし語尾を優しくして聞くとぬいぐるみから声が聞こえた。

「実はですね・・・・、余り話したくはないのですが・・・、私はエルヴァさんに名前を呼ばれたことが無いのですよ」

(どういうことだ?)

頭で考えているとユウが尋ねた。

「それっていつもアレやコレって呼ばれてるって事?」

「いえ、そうでは無いんですよ、ただいつも無言で私を抱きしめるといいますか・・・・」

「エルヴァは何も言わないって事か・・・・、なら前いた場所では他の人になんて呼ばれていたんだ?そのエルヴァの周りの人には何て言われてたんだ?」

アオキがエルヴァを連れてきた研究所の職員という言葉をうまく避けて聞いた。

「私はスーパーコンビューターですから『おい、コンピューター』とか『ぬいぐるみ』とか呼ばれてましたね、なにせ私は世界に一個しかないオリジナルのエルヴァさん専用のぬいぐるみなんでうからね」

「これってスーパーコンピューターが入っているんですか?」

ユウがアオキとコシミズの顔を見て尋ねてきたのでコシミズが答えた。

「これはおれがアオキに頼んで作ってもらったんだよ、そしてエルヴァの両親に渡してどうなるか観察しようとしたんだよな?アオキ?」

「あぁ、そうだ、そうなんだよ、まぁ、そのことはいいだろ、このぬいぐるみの名前を今はどうしようかって話だ」

うまく話をあわせてくれたアオキは言いながらユウを見た。

「俺やコシミズがエルヴァに聞いても無反応だからユウさんがぬいぐるみの名前を聞いてくれないか?」

「わかりました、ですが二人とも離れてくれませんか?もしかしたらエルヴァちゃんが気を使ってしまうかもしれませんから」

言われて思わずコシミズとアオキの二人は肩を落として呟いた。

「二人で向こうで酒でも飲むか?」

「そうだな、それに嫌われ者仲間のこいつも連れて行くか?」

返事をしながらコシミズはエルヴァの抱くブサイクなぬいぐるみを掴んだ。

「あなた達と一緒にしないでください」

ぬいぐるみが反論してきたがコシミズが言う。

「そんなこといっても名前を呼ばれてないんだろ」

ぬいぐるみをエルヴァから取り上げようとするとエルヴァがしっかりとぬいぐるみを抱きしめて離さずコシミズを見上げた。

「コシミズさん、ぬいぐるみは置いてってください、その方が話しやすいので」

ユウに言われては仕方が無いので手を離した。

「仕方ないな、俺もアオキの仕事を手伝うかな」

「コシミズに出来そうな雑な仕事はないな」

バカにしたような含み笑いでソファから立ち上がり工房兼倉庫に向かうので後に続いた、工房兼作業場でアオキは作業台の前の椅子に座ってテーブルの上の拳銃の物をいじり始めた。

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