すけすけ眼鏡1
悪の秘密結社KA団(仮)の首領コシミズと研究員のアオキのおっさん二人はアオキの工房兼倉庫でダーツをしていた。
「ダーツってうまい人がやれば面白いのかも知れないけど下手な奴二人だとな、真ん中を狙ってもなっ!」
コシミズがダーツを的の中心に向かって投げるとダーツは一番外側の円に刺さりそれを見ていたアオキが笑いながら言う。
「たしかにな」
アオキが投げたダーツは的には当たって床に落ちて刺さった。
「あなた達暇なんですか?」
作業台の上に置かれたブサイクなぬいぐるみが話しかけてきた。
「暇なわけ無いだろ、ダーツで競ってるんだから」
言いながらアオキは持っていたダーツをぬいぐるみに向けて投げた。
「グヴッ」
ブサイクなぬいるみの頭部に刺さった、コシミズは近づいてぬいぐるみからダーツを抜いて作業台に置くと背後から声が聞こえた。
「そういえばこのぬいぐるみってなんかのキャラクターか?クマにも見えるが猫にも見えるし体は紫色で体と頭が一体化してて狸みたいな尻尾って?」
「見たこと無いけどな、そういうアニメとか漫画のキャラクターならコシミズの方が詳しいだろ?だけど人気のキャラクターって事はなさそうだ」
「そうだな」
「酷いことを言いますね、私はハンドメイドの特別製ですよ」
ぬいぐるみが反論してくる。
「ならもっとかわいくて人気があるように作ってもらえよ」
「コレが最先端のかわいさなんですよ、現にエルヴァさんも結構気に入っているようですし・・・」
「気に入ってるね・・・・」
言いながらアオキが含み笑いをしながら近づいてきて言った。
「そのエルヴァは今、ユウさんと買い物にいってるしな・・・・」
「解体するなら今だな」
アオキとコシミズは向かい合って笑った。
「止めてください、エルヴァさんに言いつけますよ、この間のこと覚えていないんですか?」
この間、エルヴァの前でこのぬいぐるみを解体しようとしたら道具が壁に刺さるわ体が浮いて床にたたきつけられるは、関節逆に曲げられそうになるはで大変だった。
「だけど今はいないからな、心配ないだろ、それにコレがある」
そういってアオキは作業台の上に置いてある二つの銀色のスキー用のサングラスみたいな物を一つ掛けたので聞いた。
「何だそれ?」
「すけすけ眼鏡だよ」
「すけすけ眼鏡?」
コシミズが思わず聞き返すとアオキがもう一つをとってコシミズに差し出したので大人しくつけたがサングラスのように視界が薄暗くなった。
「サングラスじゃね?」
「フレームの右側のダイヤルを回してみろ」
言われて手探りでダイヤルを探し出してまわした瞬間に一気に外の景色が見えた。
「すげー、外が見える!」
「回しすぎだ、ゆっくり戻してぬいぐるみの中を見れるように調節するんだ」
「ゆっくりね~」
言いながらダイヤルを回すとぬいぐるみの中の綿が見え、ダイヤルを調節しながら中を探ると成人男性の握りこぶしくらいの大きさの機械が入っていた。
「それがお前の本体か?、案外小さいな」
言いながら手を伸ばすとやわらかい感触がした、当たり前だ、ぬいぐるみの中身が見えてるんだから。
「これからこいつの本体というか機械を取り出す」
アオキが言うのでコシミズはすけすけ眼鏡を外した。
「やめてくださいよ、そもそも私を解体してもあなた達には私のテクノロジーが高度で難しすぎて何も出来ませんよ」
「俺は必要か?」
ぬいぐるみが訴えてくるが無視してコシミズが聞くとアオキがすけすけ眼鏡を額に掛けた状態で顔を横に振って答えた。
「ぬいぐるみを裂くだけだから一人で十分だ」
するとタイミングよく玄関の扉が閉じる音が聞こえた。
「ただいま戻りました~」
隣のリビングから黒田ユウの声が聞こえる。
「ひらめいた!!」