25 壊滅作業
GW中は超人さんと交互に投稿しようかと思います。
男達は酒盛りをしていた。
複数の女性を侍らせて大いに盛り上がっていた。
何故なら、今日たまたま手に入れた獲物が途方もなく上玉だったからだ。
いつの間にかアジトの近くに倒れていた二人の少女。
今まで見たこともない美少女。
方や、白くて弱々しくて儚げな少女。
方や、年齢の割には肉付きがいい少女。
それらでどう遊ぼうかと話して盛り上がっていた。
酒盛りの盛り上がりも最高潮に達したとき、
「そろそろ目を覚ましているかもしれねぇ、連れてこい」
盗賊団のリーダーが命令する。
他の男たちは待っていましたと完成をあげる。
「その必要はないよ」
そこに鈴を転がすような声がが響きわたった。
「あ？」
男達は声のする方をみる。
そこには、今から遊ぼうと思っていた少女二人と、他の捕まえた獲物がいた。
「一応、頭だけは残しておこっか。町や村の場所もわからないし」
その内の白い少女がそう言って、光を放ったかと思うと、男達の意識は永遠に失った。
ー▽ー
「は？ え？」
一斉に仲間達が倒れる。
唯一生き残った男達のリーダーは訳がわからずにいた。
一気に酔いも覚めるが、現実はありえない光景のままであった。
男は混乱して呆然としている。
そんな状態はスピカにとって格好の的であった。
接近、腕をとり、肘に膝蹴りをくらわす。
「ッッッッイガアアアアアアアッッ！！？」
肘の骨は砕け、関節も破壊されて曲がってはいけない方に腕が曲がっている。
スピカはすぐさま反対の方の腕も同じ様に破壊する。
「後は足を縛ってっと」
スピカは布を取り出して、それを縄代わりに男の足を縛る。
「両手両足は封じたし、これで安全だね」
一仕事終えたスピカは満足したかのように頷く。
「よ、容赦ないですわね」
ミラはスピカの容赦のなさに若干引き気味だ。
「大事なのは躊躇しない事。こちらがどう思っていようと相手は情けをかけてくれないからね。自分の身を守るには必要な事なんだ。だから、ミラ様ももしもの時はそれを思いっきり突き出してね」
「わ、わかりましたわ」
スピカがミラに持たせたそれとは、先ほどスピカがむしり取った鉄格子の一部である。
先が鋭くなっているため、ミラであっても本気で突き出せば、相手に大怪我を与える事ができるだろう。
もっとも、箱入り娘であるミラには無理だろうなとは思っているが。
それでも、言っておくことに越した事はない。
それから、スピカ達は男達に侍られさせられていた女性達を回収し、アジトの中を進んでいく。
男達が身につけていたいくつかの武器も回収して、まだ動けそうな人たちに与えていた。
それでも変わらずスピカは先頭を歩く。
向かう先は、アジトの出口ではなく、宝物庫だ。
「と、ここだね」
そこには、誰かから奪ったであろう品物が多数置かれていた。
武器だったり貴金属だったり。
「あった」
そして、そこには大事なスピカの剣もしっかりと置かれていた。
「良かったぁ」
スピカは剣を抱きしめる。
大切な物なのだ。
師匠から譲り受けた大切な剣なのだ。
「それは、スピカさんの剣ですの？」
ミラが後ろからひょっこりと顔を出して言った。
スピカが大切に抱きしめているのを見て気になったのであろう。
「うん。私の大切な大切な宝物なんだ」
「そう。良かったですわね」
「うん！！」
スピカは、剣を装備して、それから他の人たちにも可能な限り装備を与えていく。
女子供しかいない為、扱いやすいナイフや槍しか使えそうにないが、それでももしもの時の為に持っていた方がいいのだ。
ミラも鉄格子とはおさらばしてナイフを持つ。
「それじゃあ、今から脱出するよ！！」
スピカは彼女達にそう言って行動を開始する。
このアジトのある程度の構造は聞いているので後は出口に向かうだけであった。
ほとんどの盗賊達が酒盛りをしていたからか、出口まで他の盗賊に出会う事は無かった。
「けど、やっぱり出口にはいるよね」
盗賊達によって急に攻め入られるのは勘弁願いたいため、もちろんアジトの入り口には見張りを置いている。
「どうしますの？」
「どうって、こうするよ」
しかし、見張りであるため外を、つまりスピカ達の後ろを向いているのだ。
スピカは見張り達に気づかれる事なく回復魔法をかける。
見張り達はばたりと倒れた。
「よし。後は外に出るだけだね。誰か、ここから村か町までの道のりを知っている人はいない？」
スピカは彼女達にそう聞くが誰も答える事はなかった。
アジトの外は森である。
この森の中からどうやって出ればいいのかわからないのだ。
「一人残していて良かったね。おい起きろ」
スピカはそう言って男に蹴りを入れる。
今までスピカはリーダーを引きずってきていたのだ。
「ぐはっ。い、いてええええええ！！ 腕がぁ、俺の腕がぁ！！」
せっかく気絶していなのにもかかわらず、スピカが蹴り起こした事によって、砕けた腕の痛みを認識してしまう。
「ここから村か町に案内して、そうしたら命だけは助けてあげる」
スピカは男に剣を突きつけて脅す。
スピカの細く、鋭い剣先は男の首に触れていた。
「わ、わがった。案内する。だから、命だけは、助けてくれ！！」
「わかった。もしも、変な動きを見せたらその首と胴体を永遠におさらばする事になるからね」
コクコクと男は頷く。
「それじゃあ、みんな帰るよ！！」
