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過剰回復の竜少女〜回復は最強の攻撃です〜  作者: 羽狛弓弦
第二章:スピカとメーティスの学府潜入編
22/36

20 呼び出し

 呼び出された。


 放課後、指定の場所に来るように言われたのだ。

 相手は誰だかわかっている。

 ミラだ。

 ついにミラはスピカを人気のない所に呼び出したのだ。


「えーと、ここかな?」


 指定された人気のない校舎裏に向かうとそこにはミラとその取り巻き達にがいた。


「来ましたわね」


 腕を組んでデンと構えていたミラがスピカの方に一歩踏み出す。


「いいこと!! あなたよりもわたくしの方がレオナルド様に相応しいのよ!! 身の程をわきまえなさい!!」


 ミラはいつも通りにスピカを威嚇する。


「……」

「……」


 しかし、会話は続かない。


「何か言ったらどうですの!?」

「いや、だって。後ろの方達も私に何か言うのかなって思って」

「どうして彼女達が貴女に言うの? これは、わたくしと貴女の一対一の女としての勝負ですわよ!!」


 スピカには意味がわからなかった。

 いつ、勝負を始めたのだろうか?

 仮にレオナルドの取り合いという意味なら、今すぐに敗北したいものだ。

 しかし、彼女にはレオナルド事をどうとも思っていないとそれとなく何度も言っているが聞き入れてもらえない。

 スピカにとって都合の悪いように解釈するのだ。

 そして、もう一つ。


「えと、だったらどうして彼女達はここに?」

「え? それは……その……こんな所に一人でいるのは怖いから」


 と、少し顔を赤めながら消え入りそうな声でそういった。


《なにこの子かわいい!》


 メーティスは思わずそう言った。

 事実、後ろの取り巻き達の何人かはミラを慈愛の目で見ている。


 こうしてスピカに度々突っかかったり呼び出したりしているが、実はこの学府ではスピカと人気を二分する程に高い。

 教室が離れているため、こういう時以外にスピカにはあまり関わりはないが、学問も非常に優秀であり、少しきつめの表情をしているが、まごう事なき美少女であり、その本質は善良で甘ちゃんの世話焼きのため、特に女子生徒からの人気がすごい。

 こうして、取り巻きを連れているにもかかわらず、本当に一対一で話が出来ているのも彼女のカリスマ性故であろうか。


「と、とにかく!! 身の程をわきまえるのです!! 次はこの程度ではすみませんわよ」


 そう言ってミラは取り巻き達に引き連れて去っていった。

 本当に何しに来たのだろうというレベルでミラは何もせずに帰っていった。

 本人は威圧したつもりなのだが。


「なんだったんだろうね」

《さあ?》


 スピカとメーティスは本当に何もされなかった故に呆然とするしかなかった。



 ー▽ー


 そして、その翌日。

 教室は朝から騒ついていた。


「あれ、どうしたの?」

「スピカちゃん……。これ……」


 スピカの友人は痛ましい顔をしながらスピカの机を指差す。

 そこにはスピカの教科書が破り捨てられていたのだ。


「これは……、もったいないね。とりあえず先生の所に持っていくよ」


 スピカは事もなさげに破られた教科書を持つ。

 普通の子ならショックを受けるところだろうが、スピカは違う。

 教科書は先生に事情を説明すれば支給されるし、その前に既に内容は全て頭に入っている。

 だからこそ、教科書を持ち帰ったりせずに学府に置いていたのだ。

 他にも鞄が借りてきた本で圧迫されており、教科書を入れるスペースがなかったりといった理由もあったが。

 どちらにせよ、半分くらい教科書を置きっぱなしであった自分が悪いとも思っているので、破られていた程度でショックを受ける事はなかった。


 それよりも気になるのは犯人だ。

 スピカの教科書破るという事はスピカに害を与えようとした事。

 スピカは悪意を持って自分に害を与える者を許さない。

 今回はこの程度なので、そこまで固執するつもりはないが、犯人が誰なのかを考察する。


《普通に考えればミラだよね?》


 スピカの教科書が破られたのは学府の授業が終わってからだ。

 そして、教室に誰もいなくなる時間帯かつ、学府に居残れる時間帯。

 昨日ミラがスピカを呼び出したのはちょうどその時間帯だ。

 つまり、自身がスピカを呼び出して、その間に取り巻きに命令してスピカの教科書を破りさせたと考えるのが自然。

 嫉妬に狂ったが故の行動と考える事ができる。


《それはないわね》

《だよね》


 しかし、メーティスは即座に否定してスピカも同意する。


 ミラの性格からいって、この様な姑息なマネをするとは思えないのだ。

 昨日のように正々堂々といったミラには。

 仮にミラがスピカを本気で排除しようと思っているのなら、スピカを簡単に退学させる事ができる。

 それほどの権力を持っているのだから。


《どちらにせよ、これが続くのなら全力で叩き潰させてもらうよ》


 犯人は手を出した相手が間違っていた。

 スピカの儚げな外見を見て勘違いしたのだ。

 スピカは誰かに守られないと生きていけないような女ではない。

 むしろ、多くの者を守ってきた実績があるのだ。

 犯人が助かる道は、これ以上スピカに手を出さない事であった。



 ー▽ー



「うそ、どうしてあんなに平然としているの?」


 女はスピカが破られた教科書を見ても特にショックを受けた様子がない事に驚く。


「なんで、レオ様はあんな女に」


 女はスピカを憎む。

 自身の想い人の心を奪ったスピカを憎む。


「待っててねレオ様。邪魔者はみんな始末してあげるから。私、レオ様の為に覚悟を決めたから」


 女はレオナルドとの未来を思い、それを邪魔する者を排除しようと決意した。


「うふ、うふふふふふ」


 邪魔者が誰であれ、みんな。








次回、物語は動きだす

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本作品の改訂版です。

大いなる癒しの竜少女~アンデッドの弱点は回復魔法です~

竜と精霊の回復ファンタジーです。

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