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過剰回復の竜少女〜回復は最強の攻撃です〜  作者: 羽狛弓弦
第二章:スピカとメーティスの学府潜入編
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17 黒い宝玉の捜索

日刊にランクインしたみたい。やったぜ!これからも応援よろしく

 それから、スピカは学府祭が終わる数日間。

 黒い宝玉を探したり、不浄の化け物の出現を警戒したりとしたが、全て徒労に終わった。

 それでも、スピカは黒い宝玉の捜索を諦めるつもりはない。

 アレは放置するにはあまりにも怖い物なのだ。


「でも、どうやって探そうか?」

《うーん。あんな物普通は持ち歩かないわよね。それでも、持ち歩いたって事は学府で何かをしたいのだと思ったけれど、実際は何も起こらなかった》

「あの黒い宝玉を使って何かをしたいのが、学府に無関係の者なら、あんな物持ち歩いてまで学府祭を楽しまないよね」

《逆に言えば、学府祭の最中に学府で何かをするでもなく持ち歩いているのは学府関係者》

「つまり、生徒か先生か」


 スピカとメーティスが推理した結果、学府の生徒か先生が黒い宝玉を保持している可能性が高いという結論に至った。


「何とか、学府に入れないかな?」

《学府に入学するっていう事?》

「うん」


 学府は普段一般開放していないため、スピカが学府内に入る事が出来ない。

 しかし、学府の生徒になればほぼ自由に探索する事が可能である。


《そうね。…………あっ、ゲルテさんに聞いてみたらいいんじゃない?》

「ゲルテさんに?」

《ええ。エーデル商会の元会長であるゲルテさんなら学府に入る方法を知っているかもしれないわ》

「そうだね。今日は遅いし明日、エーデル商会に行ってみよう」



 そして、翌日。

 スピカはエーデル商会の本部に来ていた。


「すみません。ゲルテさんにお会いしたいのだけど」


 普通の受付ならば、少女がいきなり元会長に会いたいって言ってきても困惑するだけだろう。

 しかし、この受付の人は話を聞いていた。


「失礼ですが、スピカ様でいらっしゃいますか?」

「はい」

「でしたら、急ぎ取り継ぎいたしますので少々お待ちください」


 受付は奥へ引っ込み、数分後。


「おお、嬢ちゃんよく来たな」


 直接ゲルテがスピカの元にやってきた。


「ゲルテさん、態々呼び出してごめんね」

「なに、ワシと嬢ちゃんの仲じゃないか。それよりも時間はあるか?」

「うん」

「ならば、ここで話すのも何じゃし、シュリも会いたがっていたから家に来てくれんか?」

「うんいいよ」

「決まりじゃな」


 家は商会からそう離れておらず、すぐに到着した。

 ゲルテやシュリが住んでいる家は、大商人らしく大きな家であった。


「スピカお姉ちゃん!!」


 出迎えてくれたのは一人の女性とその隣にいる女の子、シュリである。

 シュリはスピカに満面の笑みで抱きついた。


「シュリちゃん。元気そうだね。あれから体調が悪くなったりしていない?」

「ううん。大丈夫。スピカお姉ちゃんのおかげだよ」

「そっか。よかったよかった」


 念のため、シュリの容態を確認しながらその小さな頭を撫でる。

 特に問題はなさそうだ。


「スピカさんですか。私はシュリの母親です。娘を助けていただいて、本当に何とお礼を言ったらいいか。本当にありがとうございます」


 そう言って頭を下げるのは、シュリの隣にいた母親である。


「ううん。元々ゲルテさんが馬車に乗せてくれたお礼だから」

「じゃが、シュリを助けてもらったのは事実じゃからな。だから、ワシはお嬢ちゃんが何かあればワシを訪ねるように言ったんじゃ。ワシに出来る限りの事はさせてもらおうと思ってな。それでお嬢ちゃんよ。何かあったんじゃろ?」

「うん。実は少し協力してもらいたいことがあって」

「そうか。続きは応接室で話そう」

「わかった」

「スピカお姉ちゃん。後で私と遊んでくれる?」

「うん。ゲルテさんとお話が終わったらね」

「ありがとう!!」


 スピカはシュリと遊ぶ約束をしてゲルテと応接室に向う。


「さて、それで協力して欲しい事とは何じゃ?」

「実は、どうしても学府に入る必要が出来て」

「学府にか? 生徒としてか?」

「うん。でも、私はここに来たばかりだから学府に入る条件がわからないの。何とか入る方法はないかな?」


 ふむ、とゲルテは顎に手を当てて考える。

 学府は有能であれば生まれや経歴を問わずにその門戸を開いている。

 しかし、今は入学の時期から大きく離れている。

 だが、他者の推薦があればこの時期からでも編入させる事はできる。

 そしてそれはゲルテには可能であった。


 しかしとゲルテはスピカを見る。

 珍しいアルビノの少女。

 美しく、そして弱々しく儚げで触れただけで壊れそうな外見とは裏腹に圧倒的な強さを誇る。

 さらに、見た事もないほど強力な回復魔法を使う。

 貴族の子息子女も多い学府に編入すれば、必ず目をつけられる。

 スピカの洗練された仕草は高度な教育を受けた者である。

 おそらくは何処かの貴族の子女であるとゲルテは思っているが、王都でのスピカは平民なのだ。

 平民が貴族に目をつけられて逃げるのは難しい。

 それをスピカが望むとは思えない。

 ゲルテはそう考えていた。


「……ワシならお嬢ちゃんを学府に編入させる事ができる。じゃが、ワシはそれに反対したい」

「この外見だよね」


 コクリとゲルテは頷く。


「いろいろなデメリットを承知してゲルテさんを訪ねてきたの」


 どうかお願いいたします、とスピカは頭を下げる。

 ゲルテはそのスピカの姿を見て、スピカがいろんな事を本当に承知して、その上で学府に編入したいのだと理解したのであった。


「わかった。学府にはワシから話をつけておく。3日後にまたここに来てくれ」

「ありがとうございます!!」


 学府に入る算段がついてよかったとスピカは微笑んだ。



 ー▽ー



 それから何やかんやあり、宿を引き払って寮に入ったりして、無事学府に編入する事に成功した。

 そして、今日は登校初日である。

 先生に連れられて教室に入る。


「スピカ・スターティアです。今日からこの学府に編入させていただきました。これからよろしくお願いします」


 と、クラスメイトに無難な挨拶をする。

 ちなみに、スターティアはスピカの師匠のデュランの家名であり、流石にリンカネーシアは名乗れなかったのでスターティアの方を名乗る事にしたのだ。

 そして、やはりスピカの弱々しく儚げな外見は男子生徒はもちろん、逆に言えば守ってあげたくなる容姿でもあるので、一部を除いた女子生徒にも高評価であった。


「キャー、スピカちゃんかわいい!!」

「髪もサラサラで綺麗だし、肌もツルツルね。羨ましいしいな」

「スピカちゃんは外に出ても大丈夫なの? アルビノって太陽の光に弱いって聞いたのだけど」


 さっそくスピカは女子生徒達に囲まれている。

 一人、いまさらな心配をしている子もいるが、太陽の光がいくらスピカに害を与えようと、スピカの回復魔法の前には無力であるので何の問題もなかったりする。


《不浄の気配は感じないよね?》

《ええ。少なくともこの子達からは感じないわ》

《とりあえず、この教室の人達に接触して、それから順次他の人たちの所にもいこう》


 そして、肝心のスピカは黒い宝玉を警戒するのであった。





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本作品の改訂版です。

大いなる癒しの竜少女~アンデッドの弱点は回復魔法です~

竜と精霊の回復ファンタジーです。

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