プロローグ
「ぐすっ。痛いよぉ」
5歳ごろの少女、スピカは泣きながら薄暗い洞窟を彷徨っている。
スピカにとって長い長い時間彷徨っている。
スピカはどこかで足を滑らせ、気づいたらこの洞窟にいたのだ。
ルシェは家にに帰る事も出来ずにひたすら歩き続けた。
だが、それももうすぐ終わる。
「グオォォォォ」
「ひっ」
スピカの目の前に現れる一体の魔物。
爛れた肉体に朽ちた骨を持つアンデットだ。
敵性体を見つけたアンデットはその爪をスピカに叩きつける。
「いっ!!」
運良く直撃しないで済んだが、少女にとって浅くはない傷を負った。
「ひっ、いっ、いやぁ」
少女は逃げる。
なけなしの体力を振り絞って。
動きの鈍いアンデットからなんとか逃げだせたが限界だった。
「もう、だめ」
スピカはパタンと倒れた。
体力が限界を迎え、一歩も歩く事が出来なくなった。
さらに空腹も限界を迎える。
それよりも酷いのが先ほどアンデットから受けた傷だ。
抉り取られた肉、そこから送り込まれた不浄の毒。
それがスピカを苦しめる。
「わたし、死んじゃうのかな」
スピカが生を諦めかけたその時、
《しっかりして!!》
何かがスピカの心に語りかけてきた。
「だ、誰、私の心に話しかけてきているのは!?」
《死んじゃダメ!!》
「死んじゃダメ? 誰なの?」
《私はメーティス》
「メーティス?」
「………………!!」
スピカがメーティスの名を呼んだ瞬間、メーティスという名の精霊がスピカの心の中に宿った。
これは一人の少女と精霊の物語。