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へんてこ島、呆本  作者: 比古名
第二章 呆本のお風呂
5/7

2-①

 ヨットは海の彼方へと消え去った。俺と直太郎の希望と同時に。

「終わった。すべてが、終わった」

 俺は理解した。二度と、笑いの舞台へは戻れない。それどころか、日本へ帰れる見込みが全然ない。

「泰三君。これは、きっとドッキリだよ。やはり、ドッキリだったんだ」

 直太郎が、力なく呟いた。再び意識を宇宙へと飛ばしている。口を開けて、(よだれ)を垂らしていた。

「君たち! 良かったね。今日から、お社の相談役だよ。うちで暮らすんだよ。美味しい料理を作ってあげる」

 花撫が肩を叩いてきた。やけに嬉しそうだ。狼の餌を手に入れたからだろうか。この島では、ライフルやマシンガンでフル装備をしても、簡単に死ねそうだった。

「花撫。ちょうどいい。島を案内してあげなさい。なんだか、やたらと臭いから、温泉に案内してあげるといい」

 爺が鼻を(つま)む。確かに自分でも臭うが、無性に腹が立った。

「綺麗に洗わないとね! 背中を流してあげるよ」

 花撫が俺の背中を(さす)る。

「待て。背中を流すって、まさか混浴なのか!?」

 俺は、この島で生きる希望を見出した。

「こんよく? なんだ、それ。よく分からないけど、一緒に入ろうね」

 首を傾げて軽く微笑む。改めて顔を眺めると、やはり可愛い。島の食べ物がいいのだろうか。肌が赤ちゃんよりも瑞々(みずみず)しい。

 直太郎が、咳払いをした。意識が戻ったらしい。

「花撫ちゃん。早くお風呂に案内してほしい。ゆっくりと浸かりたいよ。きっと、いい眺めなんだろうな」

 直太郎は凛々(りり)しい表情で、花撫に語り掛ける。日本に戻れない悲しみよりも、混浴をする楽しみが(まさ)ったらしい。

「よし! 私に()いてきてね。可愛い女の子を紹介してあげる」

 花撫が駆け出す。

「泰三君も行くよ! この島は最高だ! 僕は永住するよ!」

 直太郎が、尻を振って追いかける。真面目な奴なのだが、助平には目がない。

「まったく、恥ずかしい奴め。俺は混浴なんて、興味はねえよ」

 クールを気取って俺も続いた。自然と、スキップを踏んでいた。


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