人目が気になる時間
なんかモテてる主人公
二人が作ってくれた朝食を食べた後、家を出た。今日もドアは開いていたらしい。母親には注意が必要かもしれない。三人での登校はなんというか、新鮮だ。いつも一人で登校していたころとは違って、賑やかで楽しい。しかし、忘れてはいけないのは、彼女は来織だけで、織姫は彼女ではない。
女子を二人も連れているからか、かなり注目を浴びている気がする。他人の視線を多く集めるのは不愉快ではあるが、これは、多分、優越感という奴だと思う。二人も女子を連れていて、モテているという錯覚にとらわれないようにしなくてはいけない。俺の恋人は来織だけだ。
「何を考えているのですか」
「いや、何でもない。なんかさっきから視線を感じるだけだよ」
「それはやっぱりあっきーが格好いいんだよ。やっとあっきーの素晴らしさにみんなが気づいたんだよ」
そんなことを通行人に聞こえる声で言うんじゃない。ほら、みんな目をそらして、気の毒そうな顔してるだろうが。彼女は俺のことを過剰評価しすぎだ。
「わ、わたくしもそう思います」
なんで余計なことを言うのかな。俺が二股かけてるみたいだ。ほら、心なしか周りの目が怪しい目になって、蔑まれているだろ。モテる主人公を現実でやるのはかなり難しいだろう。俺なら心が折れる。
そんな風に登校して学校。二人と別れて、俺も自分の教室に向かった。
向かったのだが、また俺の席の前に人がいる。ショートカットの女子だ。まさか、というかやっぱりというか、フラグは現実にもあるらしい。
「どうかした。何か用事か」
できるだけ平静を装って声をかけた。すると彼女は振り返って、俺と目を合わせる。しかし、言葉は発しない。
「ん」発したのかわからない程度の音で、そう発音し、手を差し出していた。
その手には手紙と思われるものがあった。俺が戸惑っていると彼女はそれを俺の手に押し込んで去っていった。いったい何だったのか。それよりも多分、俺宛なんだから読んでもいいよな。
辺泥在来様へ
いきなりの手紙でごめんなさい。あなたのことをずっと見てました。格好いいと思ってたらいつの間にか好きになっていました。今度は手紙じゃなくて、私の口から言いたいので、放課後に屋上に来てくれませんか? お忙しかったら来なくてもいいのですが、来てほしいです。 星流 灯勇より
名前はなんて読むんだろうか。苗字も名前もうまく読めない。苗字は『ほしながれ』なのか『せいりゅう』なのか、名前に至ってはうまく読めない。というかそれよりも、放課後に屋上か。ちゃんと言わないといけないよな。彼女がいるってこと。どうも今の人は俺に彼女がいるってこと知らないようだしなぁ。なんか憂鬱だ。傷つけるの前提で知らない女子に会わなくては行けないなんて。
「よーっす。何落ち込んでんだよ。朝から縁起悪い」わけのわからないことをいいながら、やってきたのは富勇だった。
「縁起悪いってなんだよ。意味わからん」
「悪い。正直俺も意味わからん。で、何かあったのか。喧嘩したとか?」
「あー、昨日の人はなんとか収集は着いた。まぁ、変な流れにはなってはいるけど」
特に朝に来織が言っていただけだが。
「それ以外になんかあったんだろ。そんな顔してるぞ」
「なんでわかるんだよ。はぁ、バレたしいいか。実はな――――」
先ほどのことを話すと、彼は驚いた顔をしていた。
「たぶんそれ、星流灯勇だと思う。何でも動画投稿サイトに歌ってみたシリーズで投稿して一度ブームになってたんだよ。知らないか?」
「あー、知らん。そういうのは全く見ないからな」
「いつからかはわからないけど、活動はやめたらしい。ストーカーとか変なファンが出て大変だったらしいから」
なるほど。そんな人が俺に手紙をくれたのか。それこそもっといい人が見つかりそうなはずなのだが。
それから少し彼に星流のことを聞いて、そのうちに朝のチャイムが鳴った。
勉強度100%な朝が終わった。
新たな登場人物。さらに修羅場は加速する?
つづく!