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糖度100パーセント  作者: リクルート
68/70

これからの俺

「よ、あっくん」

 教室に入ると、富勇が声をかけてきた。こいつとは久しぶりだ。

「どうした。というか、学校、なんで来なかった。なんかあったのか」

 彼は俺の質問に対して、話しにくそうにしていた。俺は無理に聞こうとしているわけではない。

「話したくないなら、話さなくてもいいぞ」

「いや、話しても信用しないと思う。俺自身、未だに夢だったんじゃないかって思ってるぐらだし」

 何があったんだよ。

「不思議体験でもしてたのか?」

 彼は俺の質問に今度は一つ頷いた。

「この街を支配しようとしてた悪魔と戦ってた」

 何? こいつの言っている意味が分からない。

「ほら、そう言う顔する。信じるなんてできないだろ」

「もしそうだとして、この街は今、危ないのか」

「いや、もう終わったことだ。なんとか悪魔は倒した」

 彼の訳はよくわからないが、たとえ作り話だったとしても、話は面白かったので、それに耳を傾けていた。


 富勇がこれからは授業にしっかりと出ることができるというので、それは安心できることだ。しかし、今、俺は悩んでいた。昨日考えたことを再び考え、皆と結局のところどうすればいいのか。ハーレムじみたものなんて作れはしないのだろう。それは、誰か一人を選ぶことと同じことではない、と思う。

「何、難しい顔してんだよ」

 俺の肩を叩いてきたのは、富勇だった。

「そんな顔してたか。ただ考え事をしてただけだ」

「考え事?」

 誰かに聞かせるようなことではない。これは俺だけで解決するべきだ。

「大したことじゃない」俳優のように大げさに首を振って、ふざけて返す。

「大したことじゃない、ね。どうせ、来織たちの事考えてたんだろ。何かあったのか。喧嘩とか?」

 全くお節介なヤツだ。久しぶりに登校しているというのに、俺の相談に乗って時間を過ごすというのか。俺以外にも友人はいるだろうに。

「話せよ。力になれるかどうかは別だけどな」

 全く、良い奴だよ、お前は。


 さすがにこれまであったこと、全てを話すのは無理なので、俺の悩みに関連する部分だけを話した。彼は無言でうなずきながら、聞いていた。

「今すぐに解決方法を考えて、教えるってことはできない。なんせお前の中だけの問題だしな。きっとお前を慕ってる女子たちは気にしてないと思うぞ。それでもなお、考えるというのならそれはそれでいいと思う。何か困ったら俺に話してくれ。力になれるとは限らないが」

 彼のその言葉に俺は驚かされた。俺はどこかで彼女たちのためと思っていたようだ。彼の言葉を聞いて、それに気づかされた。全く守るとか何様だよ。俺が上とか下とかではなく、彼女たちと一緒に同じものを見て、一緒に進みたいのだ。

「ああ、なんか俺は勘違いしてた。富勇、ありがとな」

「いや、まだ何も言ってないと思うんだが。まぁ、何か俺の言葉で救えたなら良かったよ」

 そう言うと彼は教室を出ていった。もうすぐ授業が始まるのに、どうしたというのか。

「トイレだよ、トイレ」

 俺の視線に気づいた彼はそう言った。


 俺はどうすればいいのか。それは結局のところ、一人で考えるべきではなかったし、彼女たちの考えも聞かなくてはいけない。彼女たちと向き合っていかなければ。


 放課後、来織たちが俺の教室に迎えに来てくれていた。俺はそれを見つけて、鞄を持って席を立った。それから、玄関で靴を履き替えて、校舎を出た。

「外はまだまだ明るいね! どっかで遊ばない?」

 来織がいつもの元気なテンションでそう言った。しかし、俺としては一人一人話を聞きたいというのがある。いや、焦りは禁物だろうか。

「お金、ない」

 灯勇が小さな声で、しかし、はっきりと聞き取れる音で、そう言う。

「では、わたくしの家でお喋りしましょう」

 織姫が上品な態度でみんなを誘った。

「それが一番いかもね。まぁ、外が明るいのは関係ないかもしれないけど」

 冗談のように優しい声でそう言ったのは姫灯。

「織姫の家はどういうところなんだ? なかなか興味が出る」

 一学年上とは思えないほど、このメンバーに早くも馴染んでいる勇在先輩。


 みんなが楽しく話しているのを見ると、俺はそれだけでどこか幸せになれる。まぁ、幸せがどんなものなのかわかりもしない、男子高校生がこんなこと言ったって説得力はなさそうだが。それでもこの気持ちが幸せだと思うのだ。この気持ちを守っていきたい。そのためにはやはり、話し合いが必要だ。


「皆、今日は俺の家に来てくれ。皆と話したいことがある」


 この言葉は俺の決意の表れなのかもしれない。この言葉を言ったあと、俺はそう思った。

あと一話です。構成的には。予定通り終わるかどうか。

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