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糖度100パーセント  作者: リクルート
63/70

理解した勇在

 次の研究のために読書をしている時、部屋のドアがノックされた。父はいないので、母だろう。どうしたのかと思い、急いでドアを開けた。母は困っている風ではなかった。何か急ぐべきことがあったわけではないようだ。

「それで、勇在ちゃん。答えは見つかったの? こんな短い時間では見つからなかったかもね。でも、少しは考えたんでしょう。それを聞かせて」

 なるほど、私のことを心配してくれていたらしい。実は読書をしていたと言っても全く身が入ってはいなかった。今読んだ本の文字は覚えているが、内容は理解していない。私はぼうっとしている頭で、ぼんやりと考えていた。私は彼のことをどう思っているのか、そればかりを考えていた。そのことを母に伝えた。

「そうね。勇在ちゃん、もう少しだけ考えなさいな。あと少しで答えは見つかるはず。答え合わせはしないからね」

 そう言うと母は、部屋から出ていった。部屋を出るとき、洗濯しようかなぁと言っていたので洗濯するのだろう。それより、あと少しとはどう言うことだ。答えに近づいていると言うことなのか。私は気分転換に少し外に出ることにした。本屋にでも行こう。その趣旨を母に伝えて、私は外に出た。


 私は行きつけの本屋に来た。この本屋は経営が大丈夫なのかと思うほど、客が少ない。しかし、それは私にとって過ごしやすいと言うことでもある。静かで、通路に人がほとんどいなくて、さらに本も多く古い本も置いている。私の理想に近い本屋だ。ここに来ると落ち着く。本屋の中をうろつく。あまり興味のない種類の本も眺める。時には手にとってパラパラと中身も見てみる。今日の朝に見た占いのことを思い出したので、占いの本があるコーナーに移動した。色々な占い方法があるらしい。占いの方法は違うのに、結構な数の本に「恋」と言うワードが入っている。こう入れることで売れやすくなるのだろうか。それはいいのだが、その恋という言葉が今日は異様に気になった。好奇心には抗えない。占いの本を一冊買った。店主には珍しいねと声をかけられた。


 買った本を早速、読んでみた。どうやら質問に答えていくだけのようだ。その質問に答えていった。

 結果は、あなたの好きな人はあなたのことを気にしてます。もっとアピールしちゃおう! と書かれていた。少し頭の悪そうな文章だ。まぁ、占いの本なんてこんなものなのだろう。それに気にしなければ、読める。その後、恋が叶う魔法のおまじない、あなたのラッキーアイテム、好きな相手の好きなプレゼントなど、たまに理解に苦しむ文章を解読しながらも、なんとか読み切った。それから辺泥君のことが頭に浮かんだ。読んだ中に相性占いというものがあって、それは彼が近くにいないとできないのだ。しかし、彼との相性が気になるとは。さすがに気づいてしまう。きっと私は彼のことが好きなのだ。もちろん、異性として、恋愛対象なのだ。そう考えると、頭の中にあった気になっていたことが繋がっていく気がした。誰かを好きになったことなんてなかったし、彼が私の話し相手になってくれたことは嬉しかったが、まさか私が彼を好きになってしまうとは。母は分かっていたのだろう。そうなると、私が学校を去る夏までにこの気持ちを伝えたい。しかし、どうしたものか。経験のない私はどうすればいいのかわからない。好きだと伝えるのは簡単だと思っていたが、その瞬間を想像すると、なんとも恥ずかしい。思わず足をばたつかせてしまった。こんなに興奮したのは、初めての論文を父が褒めてくれた時ぐらいだ。


 しばらく告白の言葉を考えては悶えるというのを繰り返しているうちに母が部屋にやって来た。私の部屋も私も乱れていた。母は特に気にした様子もなく、ニコニコと笑っている。

「答えは出たみたい。全く急に元気になっちゃって。ふふふ、研究しかしてなくても、ちゃんと女の子なのよねー」

 そう呟いて、隠し事を盛大に打ち明けるような様子で、母はこう言った。

「勇在ちゃん、朗報だよ。学校は卒業するまでいて良いってことになったから」

 その言葉は私を驚かせた。状況を客観的に見ようとするもうまくいかない。

「少し大変だったけど、お父さんに話したら、なんとかしてみるって言って、本当に何とかしてくれたのよ」

 つまり、後一、二ヶ月しかいられないと思っていた高校にもっと入られると言うことなのだ。

「ほ、本当に?」

 母は大きく頷いた。

「よかったね。まだ時間あると思って、好きな人に近づくのを躊躇っちゃいけないよ。自分から行かなきゃダメだからね 」母はそう言って笑うと、部屋から出ていった。


 後少ししかいられないと思っていたが、もっといられるようになったらしい。しかし、母の言う通り、きっと何もせずにいたら勝手に時間は過ぎていってしまう。それは在学時間を延ばしてもらった意味がなくなってしまう。それは嫌だ。そうだ、まず手始めに、名前で呼び合ってみようか。よし、明日にでも実行しよう。

 そう考えながら、私はその日を終えた。

続く

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