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糖度100パーセント  作者: リクルート
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勇在しかいない日常

 私に学生生活はこの夏で終わる。その事実は私の胸の中に何か寂しさのようなものを生み出していた。これでも二年間ほど通っていたのだ、寂しさを感じるのも仕方ないのかもしれない。


 携帯電話が震えた。私に連絡をしてくる友人はいない。つまり、両親か研究所の人からだ。私は震え続ける電話に出た。

「もしもし、勇在ちゃん」

 電話は母からだった。自分であることを伝える。

「今から帰るから」

「わかった。というか、帰ってくるの早くないか」

 母は一度、旅行に出るとしばらく帰って来ないことが多い。一ヶ月も戻って来ないというのはよくあることだ。しかし、今回は二週間も経っていない。そう考えていると、母が電話の先でこういった。

「ハワイまで来たし、ホテルとか食べ物とか新鮮だったけど、ここより家がいいの。そういうわけだから、お出迎えしてくれると嬉しいかな」

 ふふ、と笑ってから母は電話を切った。きっとすぐに父にも電話して、それから父が急いで空港に向かうはずだ。出かけるなら支度をしよう。


「勇在、母さんを迎えに行こう!」

 突然私の部屋のドアを開けたのは父だった。まさか研究所から急いでここまで来たのだろうか。私の準備は完了しているので、父と一緒に空港に向かった。


 母はすでに空港にいた。椅子に座って、売店の商品を眺めている。

「か、母さん。迎えに来た。帰ろう」

「そうね。ふふふ、やっぱりあなたのこと、好きだわ」

「あ、え?」父は驚いているようだった。

 私は見逃さなかった。父も母もお互いを見つけた時に一瞬だけ安心した顔をしていたことを。母も父も表にはほとんど出さなかったがお互いを心配していたのだろう。

「そうだ。これからただ帰るだけじゃつまらないだろうし、久しぶりにどこかのレストランに入ろうか」

 その言葉に賛成して家族での外食を楽しんだ。


 翌日、母が家にいるので家事は分担された。本来、私は家事は苦手だ。料理もそこそこできるし、洗濯、掃除、整理整頓、このすべてのことをそこそこにできるのだ。しかし、手際が良くないのか、母がやった方が倍以上に早く終わる。まぁ、私には向いてないのかもしれない。そうして、ふと辺泥君の周りにいる少女たちがどれくらい家事ができるのか、気になった。私には彼女たちについての情報はほとんどないと言っていい。それこそ彼の事を知ったのだって最近の事なのだ。そうして彼女たちとの接点ができた。だから、彼女たちの事は知ることができなかったのだ。そのことを考えつくと彼女たちが今、彼の近くにいるのか、無性に気になってきた。今までこんなことはなかった。これまでの私の興味は研究にしか向かなかった。なので、今の人に興味を向けているということが私には理解しきれていないように思う。それを相談するべきなのか、どうなのか。母は近くにいるので、聞くことは簡単なのかもしれない。今までなかった体験は、私に少しの恐怖を与えてきた。ここは相談してみようか。


「お母さん、その相談したことがあるんだ。話してもいい?」

「あなたが私に相談なんて珍しい。もちろん、いいよ。でも、お父さんがわかるようなことは私では教えられないからね」

 母はそう言うと、服を畳みながら私の話に耳を聞いてくれた。私はこれまでの彼らとのことを話した。


「そう。確かにそれはお父さんじゃ解決できそうにないね。かと言って、私が正解を知っているわけでもない。それはあなた自身が気づかなきゃいけないことだと思うよ。自分ではありえないと思わないで、全部気にして考えてみなさい。昔から考えるの、得意でしょう」

 母の顔は大人の顔をしていた。普段はどこか幼いような印象を受けていたが、やはり母親は母親なのだろう。少なくとも私のような若者にはまだわからない体験をしているのだ。母は答えはわかっているようだが、こう言われたときはどれだけ訊いても教えてくれない。私自身が考えるしかない。


 ありえないと思わないで考える。きっとこれはヒントだと思う。つまり、私が体験してこなかったようなこと。それともこの高校生活で求めたものの一つなのか。私ではありえない、か。自分と向き合うなんてしてこなかった。そもそもありえないと可能性を切り捨てた覚えもない。いくら考えても何かの可能性を見落としているとも思えない。何が悪いのか、なんの可能性があるのか。全く、わからない。


 翌日、私の目の下にはクマができていた。鏡の前に立っていると今の自分を彼が見たら心配するだろうか。そんな考えが頭の中に浮かぶが、すぐに消えた。最近、無意識のうちに彼の事を考えていることが多い。そんなに彼に興味を持っているのか。それはなぜなんだ。悩みは増える。とにかく日が出てきたから、私は朝食を取りにリビングに入った。

 リビングでは父と母がテレビを見ていた。テレビではなんとか賞とかの授賞者を発表している。この分野には興味がないのでその賞の名前は覚えていない。私はテーブルに並んでいるサンドイッチを一つだけ食べる。両親の後ろあたりに移動して、テレビを見た。なんとか賞の発表は終わってしまっていた。テレビのキャスターが次のコーナーの紹介をして、次の画面に移った。番組の最後に占いをやるらしい。多くの人を相手にするテレビでは当たり障りのないことを言うしかない。いつか聞いたような言葉が並べられていた。私の結果は大したことは書いてなかった。しかし、他の項目に気になるワードが含まれていた。それは気になる人に話しかけられるかも、と言うもの。なぜ、その言葉に惹かれたのかはわからない。気になる人、何か引っかかりを覚える言葉だ。私はそれを気にしながら、自室へと戻った。


続く

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