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糖度100パーセント  作者: リクルート
61/70

恋人

 これですべて片付いたとまではいかないが、大きなことは成し遂げた、そんな感覚が俺の心にあった。あの時からすれ違って、喧嘩して仲直りまで、経過した時間はたいして長くはなかった。しかし、俺はそこに長い時間がかかってしまったような気がする。そう思う理由はここにあった。

「これから遊びに行きましょう」

「賛成」

「いいね。久しぶりにみんなで遊ぼう」

「わ、私も行きたい。いいかな」

「「「もちろん」」」


 来織と仲直りを果たしてから、三日が経った。来織はまだ皆に遠慮している様子だ。彼女の前のような元気の良さは今はなりを潜めている。だが、彼女たちと接しているうちに元に戻るだろう。一か月しない内に戻ると思う。それから勇在先輩は最近見かけなくなった。あの時、俺にいつもと違う態度で話しかけてきて以来、話をしていないどころか、彼女の顔を見ても居ない。学校にも来ていないということか。せっかく来織と仲直りしたから勇在先輩に紹介して友達になってほしかったのだが。事はそう上手くいかないということか。

「どうしたの。ぼーっとして」

 気づくと目の前に姫灯の顔があった。どうやら勇在先輩の事を考えている間、ぼーっとしていたらしい。

「さてさて、問題です」何やら姫灯がふざけた態度でそう言った。

「私たちはこれからどこに行くでしょうか」

 どこかに行く約束なんてしてたか。いや、考えている間に何か決まっていたのかもしれない。どこだ、どこに行くんだ。これは適当に勘で行くしかない。

「あー、どっかでスポーツ、するんだったよな」

「ふふ、聞いてなかったってことだね。実際はどこに行くかなんて決めてなかったんだよ」彼女は笑っている。

「ひっかけたのかよ。全く」

 そうは言ったものの、怒っているわけでも飽きれているわけでもなかった。彼女だけではないが、最近はどうにも上手くいかないことが多く、彼女たちに多くの不安を抱えさせてしまっていたのだ。それがなくなった今、どうにもこの普段通りの空気が嬉しく思えた。

 ――きっとこれを守っていくことが俺にとってとても大事なことなんだ。

 そのことが自然と頭の中に浮かんでいた。そして、この光景の中に勇在先輩を混ぜたいとも思う。

 それから結局、今日は遊びに行くのはやめて、明日の休みの日に遊びに行くことになった。


 ピンポーン、ピンポーン。

 布団の中でぼんやりとその音を聞いていた。その音が夢の中の出来事のような気がしていて、布団から出ようと思えない。それから何度か、チャイムが鳴った。何度目だろうか、俺はぼんやりとしていた頭でようやくベットから出た。そうして、今日は約束があることを思い出した。反射的に時計を見る。時間は九時五十分ぐらい。待ち合わせは確か、九時半だったはず。そのとき、初めて「血の気が引く」という現象にあった。さぞ、俺の顔色は悪くなっていたことだろう。それから、大慌てで玄関の扉を開いて、待っていた彼女たちを上に入れる。

「あきくん、わたくし怒ってます」そういったのは織姫。

 後ろから入ってきた灯勇、来織、姫灯も頷いていた。いや、わかってる。うん、俺が全面的に悪い。

「あー、その、ごめん」

「あき、ひどい」

「そうだよ。まさかデートすっぽかすなんて」姫灯がニヤリと笑いながらそういってきた。

 デートではなかったはずだが。まぁ、何にしろ俺が遅れて彼女たちが迎えにきてくれたことには変わりない。俺が支度している間に暇させるのは悪気がして、自分が食べようと思って買っておいたお菓子をテーブルに出し、食べていいといって、支度を始めた。


「あっきー、もう着支度終わった?」

 俺の支度が終わって、自室からリビングに向かおうとした時、トイレに行こうとしていたのか、来織がそこにいた。前にように元気な笑顔ではない。まだ遠慮しているのだろうか。

「ああ、もう終わったよ。みんなには悪いことしたよ」

 俺はそういって、リビングに入った。


「すぐに外に出るのは嫌かなぁ」

 準備もできたので彼女たちにそう声をかけるとそんな返事が返ってきた。文句が出ないところを見ると、どうやら彼女だけの意見ではなく、みんなの意見のようだ。俺が遅れてしまったのだし、仕方ないだろう。

「そういえば本名先輩は誘わなくても良かったのですか」

「ん? 本名先輩って誰」

 そういえば来織にはまだ紹介していなかったか。俺は彼女との出来事を話した。

「あっきー、節操ないね」

「い、いや、そんなことないだろ。な?」俺は来織以外のみんなに訊いた。

 その時、彼女たちは一斉に視線を逸らされた。えぇぇ。

「在来君のことは放っておいてそろそろ出かけよう。時間なくなっちゃうよ」

 姫灯の声かけに素直についていく一同。俺が一人、床に手をついているにのを気にもせず、俺の横を歩いていく。

 なぁ、君たち。俺のこと本当に好きなの?


 それから素早く起きて、彼女たちに置いていかれないように家を出たのだった。

続く

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