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糖度100パーセント  作者: リクルート
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決めなくてはいけないこと

 彼女の叫びに返事を返せなかった俺は彼女を見つめた。彼女は無言で去って行った。家は隣なのに、彼女との距離は空いてしまった気がした。しかし、その時俺の決意を話すには全員揃っていなかった。そんな状態で話すのは公平ではないと思った。全員の前で話したい。自己満足なのだが、それでいいと思っている。これだけは俺がそうするべきだと思っているだけなのだから。


 今日は学校に行かなくてはいけない。週末は拉致監禁で時間がなくなった。まぁ、過ぎたことを言っても状況は変わらない。学校に行こう。


 学校内は何も変わってなかった。俺と来織の話なのだから、誰かが気にする方がおかしい。


 昼休み、廊下を歩いていると本名先輩にあった。

「やぁ、こんにちは」

「あ、こんにちは」

 先輩はニコニコと笑っている。何かいいことがあったのだろうか。

「先輩、何かあったんですか」

「何かあったと言えばあった。なかったと言えばなかったよ。それでも今日は気分がいい」

 やはり何かあったのだろう。けれど、この様子ではしつこく聞いても教えてもらえるか、わからない。

「ふふふ、最近、調子もいいのさ。君と一緒にいるようになってから、明るく見えるんだ」

 俺は何かしたことはないとは思うが、先輩が楽しいなら、良いか。

「なぁ、辺泥君。私の名前を言って見てくれない?」

 今日の先輩はテンションが高い。話し方も違和感があるような。

「と、突然どうしたんですか。名前を呼べって」

「そのままの意味だよ。君に名前を呼んでほしい、それだけ。先輩って呼んでるだろう。だから、名前で呼んでみてほしいんだ」

 先輩がおかしい。金曜日は何も変わってなかったはずだ。それが週末を経て、こんなになってしまった。何があったのか。

「ほら、早く呼んでみてくれ」先輩の瞳が輝いて、期待がそこにある。

 ……仕方ないか。

「えっと、勇在先輩」

「先輩はいらない」

「……勇在」

「よし合格。今日からはそう呼んで」

 そう言うと彼女はどこかに去っていった。なんだったのだろうか。


 変な勇在先輩と話して、午後の授業を終えて、放課後。俺の決意を伝えなくてはいけない。みんなを集めたいのだが、何をすれば良いのか。そもそも来織が呼んできてくれるのか。そんなことを考えながら歩いていると、姫灯に会った。

「在来君。今帰り」

「ああ、一応」

「一応って。何かするかもしれないの」

「あ、いや、帰るよ、うん」

「じゃ、帰ろう」そう言うと彼女は俺の右手握った。

「手、繋ぐのか。織姫と灯勇もいるんだろ。良いのか」

 彼女はその問いには答えなかった。そのまま彼女は俺の手を引いて歩いた。俺もそれの続いた。


「あ、あき君と手、繋いでる」

 そんな声が後ろから聞こえてきた。そして、 走るような音がして左手を誰かが握る。左を見ると、織姫が笑っていた。その笑顔にどきりと心臓が跳ねた。

「私はどこを掴めば良い」

 また後ろから声をかけられた。その声は灯勇だ。俺は手以外に掴む場所がわからず、彼女に顔を向けるだけしかできなかった。しかし、彼女は首を少しだけ傾けた後、俺の制服の裾を掴んできた。体に触れてはいなかったが、それはそれで良いかもしれない。心があったかい気がする。


 ではなく、今日はいつにも増して彼女たちがおかしい。前は手を繋ぎ出すなんてことは無かったし、こんなにくっつこうとはしなかったはずだ。それに勇在先輩も様子がおかしかった。それとこの状況が繋がっているとは思えないけれど。


「なぁ、今日なんかあるのか。妙にくっついてくるけど」

「あき君、わからないんですか?」織姫は不思議そうな顔をしていた。

 わからないのかと聞かれてもわからない。最近俺は最低なことをしたのに、それでなぜ、こんなにくっついてくるのだろうか。

「喧嘩した後はもっと仲良くなるんだよ。雨降って地固まる、だよ」姫灯は得意げにそう言った。

 もしかして、彼女たちは俺を元気づけようとしてくれているのだろうか。つくづく思う。最近は俺は彼女たちに助けられてばかりだ。俺は彼女たちが近くにいてくれるだけで、元気になる気がする。心強い。そして、やはり、仲良くするなら、一人にだけを仲間外れにはできない。


「みんな」

 彼女たちから少しだけ前に出る。手も離して、俺に触れている人はいない。それから、彼女たちの顔を見るために振り返る。その顔は俺が何を言いたいかを知っているような様子だった。それでも俺は声に出して言った。声に出すことで俺の本当に気持ちを伝えられると思うから。


「やっぱり来織もいないと嫌だ。何か寂しくて、物足りない。みんなが俺の周りにいてくれるのは嬉しい。だけど、全員揃ってこそ、俺たちだと思うから。それに俺自身も来織と織姫、灯勇に姫灯、勇在先輩みんなで笑っていたい。そりゃ喧嘩もするだろうし、不満だってたくさん出てくる。それでも最後は笑ってみんなでいたい。だから、来織とも仲良くしてくれるか? あんなこと言っていたけど、俺が頼むのは筋が違うと思うけど、許してくれるか」


 彼女たちは俺をじっと見つめていた。俺はこれ以上、言葉は出さない。言いたいことは色々思いつく。それでもこれ以上は言わない。言ったら、期待とか弱音とかそんな言葉も出て、卑怯な言い方になりそうだった。

「仕方ないなぁ」

 そう言ったのは、姫灯だった。他の人は難しい顔をしている。あんなこと言われた後に、はい、許しますなんてとっさに言える人は少ないと思う。それを言えた彼女はどれだけ心が広いのか、俺なんかでは測りきれない。

「わ、わたくしは、決められません。来織があんなことを思っていたとは思っていなかったですし、それにあきくんに酷いことをしました。それを簡単に許すかと言われましても、決められません。でも……」

「私もすぐには決められない。あきの近くにいたいけど、来織とまた仲良くできるかどうかはまだわからない。私たちと仲良くしていたのが嘘だったみたいで、ショック。でも、また仲良くできたらって、そうも思う」

 織姫も灯勇も許せないわけではないと言ってくれた。彼女たちは葛藤してくれていた。こんなしょうもない、いや、自分を卑下する言い方は好きと言ってくれている人に失礼か。でも、思ってしまう。こんな俺のことを好きでいてくれる皆には仲良くしてほしいと思う。

 彼女たちを説得する前に来織に話さなくては。

続く

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