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糖度100パーセント  作者: リクルート
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信じたいもの

 昼休みになった。今まで全くと言っていいほど捕まらなかった。織姫と灯勇。トイレに行こうと席を立ち、廊下の曲がり角で、織姫と灯勇と鉢合わせた。俺は尿意を忘れて、彼女を見た。彼女も俺を見て、驚いている。いや、誰であっても驚いたかもしれない。曲がり角でぶつかりそうになるのはよくあることだ。しかし、硬直から先に立ち直ったのは俺だった。急いで、目の前で硬直している彼女の肩を掴む。彼女は抵抗することなく、俺の瞳を悲しい視線で見続けていた。そこには離してという意思は少ない。だから、俺はその場で放課後、校門に集まってくれ、といった。それでここでの俺の話はおしまい。肩を話すと彼女は頷きもせず、そのまま俺の横を過ぎ去っていった。来てくれるかはわからないが、来てくれると思っていよう。もし、来てくれなかったのなら、俺から言えばいいだけだ。


 昼休みを終え、午後の授業。授業の途中に教室を移動した。その途中に他のクラスの生徒も来た。その中には織姫がいた。この時間に話すことができればいいのだが、と考えて、授業に戻る。あいにく俺の席からは遠くに座っている。授業の終わりに急いで、話してみようか。

 授業が終わって、彼女を目で追う。かなり早く片付けて、足早に教室を出ていこうとしていた。そのあとを急いで追う。俺の方はほとんど片付いていないが、今のこのチャンスを逃すわけにはいかない。

「織姫、待ってくれ」

 思ったよりも大きな声が出た。周りには絶対に聞こえている。何か卑怯な気がしたが、周りには俺が彼女を呼ぶ声が聞こえているなら、彼女は止まってくれるだろう。止まらなければ、彼女にあとで疑問の嵐が他の女子から集まるはずだから。

 果たして、彼女は俺の顔を見て、嫌そうな顔で俺の方を見た。今までそんな顔を見たことはないが、会いたくない人に会うと誰でもこうなるのだ。その事実は心に少しだけショックを与えた。

「何かしら。わたくしは忙しいの」

 彼女のその口調は出会った頃を思い出させた。しかし、あの時ほど温かみは感じない。

「今日の放課後、校門の前に集まってほしい。それだけ。引き留めて悪かった」

 彼女はその言葉をすべて聞く前に俺に背を向けて、歩き出していた。俺の言葉はすべて聞こえていてほしい。放課後、彼女が来てくれると期待した。


 これで彼女たち三人に集まってくれということは出来た。皆が集まってくれるという保証はないが、来てくれるだろう。あとは、そう、彼女もいてほしい。


 放課後、俺は呼んだ彼女たちに会いに行く前に、本名先輩を探してここまで来た。しかし、彼女はそこには居なかった。彼女たちを待たせるわけにもいかない。早く校門に向かわなければ。


 玄関から校門は直線上にある。だから、玄関で靴を履き替えるとき、校門には姫灯しかいなかった。俺は彼女にだけでもしっかりと謝ろうと思って、靴は履き替え走って向かった。


「こんにちは。少し遅かったね。すぐ来るものだと思ってたけど」

 彼女は微笑みながらそう言った。

「ああ。ごめんな、呼び出して」

 彼女は首を横に振るだけで答えた。


「俺は自分の事しか考えてなかった。皆が用事あるからって他の女子と会って、仲良くしてた。その用事がどれだけ重要なものかって言うのも考えずに行動してた。俺だけ楽しそうにして、それが気に入らなかったんだろ。それに一人一人用事があって、その中でも大変になっているかもしれなかったのに。俺は誰も助けず、楽しんでいた。それは自分でもひどいと思う。もっと皆を大切にするべきだった。それは恋人だからとか友達だからとかそういう話じゃなくて、きっと皆が好きだから。皆、大切だから。そんなこともわからず、俺は一人能天気に遊んでいた。しかも女子と。それは責められて当然の事なんだと思う。だから、謝る。本当にすまなかった。ごめん、なさい」


 俺はそこで彼女の顔を見た。微笑み続けていた。

「在来君。私は昨日、許してるって言ったよ。だから、私はあなたを許すよ。でも、まだいいたことあるでしょ。顔に書いてある」

 そう、謝罪はここまで俺の心境も聞いてほしかったのだ。

「そうか。わかられているのか。なんか姫灯は凄くなったなぁ」

 そう呟いてから、彼女たちがいない間の事を覚えている限り、詳しく話した。彼女は相槌を打ちながら真剣に俺の話を聞いてくれた。


「だから、俺にとって、本名先輩は友達で、なんか放っておけなくて、それでずっと一緒に居たんだ」

「そっか。そうなんだ。本名先輩だけを好きなわけじゃないのかぁ」

 姫灯は笑っていた。昨日よりも魅力的な笑いだ。口では許すと言ってくれたが、不安だったのだろうか。俺にそこの判断はできない。けれど、彼女のその笑顔を見ることができて、俺は安心していた。

「そう言うことなんだってさ」彼女は急にそう独り言を言った。

 その声が合図だったのだろうか。校門の外、俺の死角になっていたところから、織姫と灯勇が出てきた。織姫は泣いているのか、その声が漏れてきていた。灯勇は目を覆って、何度もぬぐっていた。

「最初から、いたのか」姫灯に向かって問うた。

 彼女はにっこりと笑っていた。俺は相当間抜けな質問をしたらしい。

「最初からいたに決まってるよ。好きな人に呼び出されて行かないのは、恥ずかしがり屋かひねくれ者だけだよ」

 そうなのか。その声が外に出ていたのかは定かではなかった。

続く

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