表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
糖度100パーセント  作者: リクルート
5/70

彼女の想い

放課後(二日目)

 放課後になった。奴が来るだろう。


「ごきげんよう。恋人さんはいるかしら」

「いねぇよ、部活だ」

 そう言って俺は教室から出ていく。かまってれるか、来織(こおり)に変な不安感を与えてしまっただろ。そういうことは起こしたくない。

「そう、部活ね。ならその競技でわたくしが勝って見せましょう」

 無視だ、無視。来織(こおり)にこいつが勝てるはずない。それにこいつは来織が何部か知っているのだろうか。そもそもこういうお嬢様みたいな人は卓球なんてやらなさそうだ。

「無視とはいい度胸ですわね。いいですわ、今から卓球部に乗り込んできます」

 そういって彼女は出て言った。というか卓球部って知ってたのか。


 彼女は卓球部に本当に乗り込んだ。来織を呼び出して、卓球の試合が始まった。俺は来織を応援するために、ここにいる。

「来織、大丈夫だ」

「うん、あっきーがいてくれれば負けないよ」

 ギャラリーは俺と卓球部の部員だけ。大した人数ではないが、なんというかどっかの漫画みたいな展開な気がする。最近はそういうことが多い気がする。


 試合は接戦になっている。まさか、彼女がこんなに強いとは思わなかった。来織は強い。この部活内には来織に接戦できる人間がいない。圧勝してしまうほどの実力なのに、それについていくとは。彼女は何かやっていたのだろうか。

「やるじゃん。でも、勝つのは私だから」

「ふふ、あきくんに近づくために努力してますもの。あなたとは違ってわたくしは幼馴染ではないですから」


 俺は勘違いをしていたのかもしれない。ただ俺と来織を離そうとしてやっていたわけではなく、彼女は本気で俺を好きでこんなにも努力をしていた。ただの嫌な奴ではなかったらしい。そうはいっても俺は来織が好きなのは変わらないが。


 試合は大接戦だったが、最後に勝ったのは来織だ。やはり長年やってきただけあって、負けることはなかったが、珍しく息をきらせている。

「ねぇ、あんた、やるじゃん。まさかこんなに苦戦する相手がこの学校にいたとはね」

「あきくんのためですもの。負けられなかった」彼女も息を切らせている。

「名前、教えてよ。あんた、いや、あなたの名前は何ていうの」

「わたくしは花前(はなさき)織姫(おりひめ)。あなたは?」

「来織。煮雪(にゆき)来織っていうんだ。よろしくね」

 いきなり名乗りを始めて、俺はとまどっていた。なんで、よろしくとか言っているのか。


 来織がこっちに来て、俺と目を合わせた。これは何かをねだるようなときに使う目だ。

「ねぇ、あっきー。友達になろうと思うの。花前さんと」

「どうして」

 少し嫌味な言い方してたし、俺たちのに入ろうとしていたのにか。そりゃ少しは見直した部分もあるけれど、仲良くなっていいのか。彼女は俺の恋人になろうとしてるんだぞ。

「だって、花前さんもあっきーのこと好きなんだよ。なら仲良くしたいじゃん。それに喧嘩した後は仲良くなるのが鉄則なんだよ」

 それは漫画の話だ。現実はそんなのではなくて、もっと考えて行動するものだろう。

 だけど、彼女が許しているなら、俺はそれを尊重してやるのだ。それに彼女は笑っているんだ。それなら。


「わかった。来織が決めたならそれでいいよ。俺も彼女とは友人だ」

「だって、花前さん。これで私たちは友達だね」彼女は花前に寄っていく。

「......いいのですか? わたくしはあなたに負け、それ以前にあなたたちの邪魔をした。なのに、あなたたちは許してくれるのですか?」

「いいんだよ。喧嘩した後は仲良くしなきゃダメなんだよ」

「え、でも、それは」彼女は戸惑っていた。それはそうだ。こんなこと言うやつは漫画か、来織ぐらいだろう。

「それにそんな約束無くてもあなたとは仲良くなれる気がするの」

「煮雪さん......」

「煮雪じゃなくて、来織って呼んでよ。私も織姫って呼ぶからさ」

「はい。ありがとうございます」

 彼女は肩を震わせていた。多分、本当にこの試合が終わったら、俺たちに会わないつもりだったのだろう。それを来織がやめさせた。残酷な優しさなのだろうか。俺にはわからない。これを彼女が苦しいと感じるのか、それとも友達でもそばにいることがうれしいのか。

「ねぇ、あっきー。今日だけ見ない振りするから、織姫の事、慰めてあげて」彼女はウインクして部室に戻っていった。それに続いて、ほかの部員も戻っていく。


 ここにいるのは俺と彼女だけ。俺はまだに名前をどう呼んだらいいのか、わからない。

「あなたは。あなたはいいのですか。わたくしと来織さんが仲良くなって、それにあなたとも友達だと」

「別に良いも悪いもない。お前が友人でいたいならそれでもいい」

 そんな質問に何を答えればいいのか、ぶっきらぼうになってしまうのは仕方ないよな。

「それによく考えたら、お前が俺と来織の中を割くなんてできないよな」

「っ!」

「だって、俺と来織は離れられないからな」

 びしっと指をさしてやった。我ながら嫌な奴になってしまった。しかし、彼女は安どした様子。

「お前ではなく、織姫とお呼びください。あきくん」彼女は走って去っていた。


 こうして今日も終わっていく。紅に染まる廊下を走っていく彼女はとても元気に見えた。

「お嬢様キャラが仲間になった、か」

 RPGの仲間になった音楽が頭の中で再生される。

 こうして今日は、友情度100%で幕を閉めた。

仲間が増えて、うれしうぅ!


つづく!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ