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糖度100パーセント  作者: リクルート
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大遅刻の朝

 俺は少し焦っていた。身支度をかなり急いで、済ませる。それから、時計を確認すると、すでに十時近くを示していた。

 そう、今、俺は遅刻しているのだ。それも大遅刻と言っていい。なんせ起きたのは九時半も結構過ぎていた時だ。それにしても今日に限って、寝坊するとは思わなかった。いつもは来織が迎えに来てくれるのだが、今日は何か用事があるそうで、彼女は早くに登校している。それをわかっていたのにも関わらず、何故か、俺は寝坊した。目覚ましだってかけたのに。そう嘆いていても遅刻には変わらない。俺は急いで登校した。


 小走りで十分ほどで校門の前に来た。その場所にはもちろん誰一人としていない。俺はその小走りの勢いを保ったまま、校内へと入った。靴を取り替え、そのまま教室へと向かう。今は休憩らしく、廊下には人が結構いる。俺はそれを気にせず、自分の教室へと向かった。


 無事、教室に着いたと思ったら、次は移動教室だったらしい。そこには誰一人としていない。それを認識したとき、無情にもチャイムが鳴った。時間割では確か、体育だったはずだ。ジャージに着替えなくてはいけないのだが、更衣室で着替えると時間を取られてしまうので、ここで着替えることにした。もうすでに授業は始まっているのだから、人が来ることもあるまい。鞄に入れてあるジャージを取り出して着替えに入った。


 着替えを済ませ、体育館の方に向かう。当たり前だが廊下に人はいないはずである。しかし、俺の前には一人の女生徒が歩いていた。後ろから見る限り、とても大人びたような雰囲気を纏っているように感じる。まぁ、後ろから見てるだけではよくわからないというのが本音ではある。しかし、こんな時間に廊下を歩いているということは何かわけありなのだろうか。俺は気にはなったが、その人には話しかけずに、授業に向かった。


 体育は二時間連続であり、この授業が終われば昼休みになる。教室の扉のすぐそこに来織たちはすでに来ていた。来織は早く来いと身振りで言っている。

 今日は娯楽部での昼食となった。その部屋は相変わらず、ビリヤードの台が片付けられることなくおいてある。しかし、そこには北さんの姿はなかった。きっと、姫灯がもう心配ないと思っているのだろう。彼女が呼べばすぐに来るような気もするが。

 来織と織姫が作ってくれた弁当を広げて、皆でつついて昼食となった。

「そういえば、あきくん、今日は遅刻してましたね。何か理由があるのですか」

「あ、ああ。ただの寝坊だ。目覚ましに気づかなくてな」

「あき、大丈夫。私もそういうこと、ある」

「そうだよ、在来君。私なんてしょっちゅうだよ」

 二人はそう言ってくれているが、この二人はあまりちゃんとしている印象がないので、励まされてもあまりうれしくはない。しかし、励ましてくれていること自体には感謝しなくてはいけない。

「ありがとな。まぁ、これからは気を付けるよ」


 それから昼食を食べ終え、皆はお喋りをしながら時間を潰しているようだ。しかし、こういう時に一番騒いでいる来織が今日はあまり話してはいなかった。訊かれたことには答えているようだが、自分からは話そうしていない。何かあったのだろうか。それにいつもならあっきーと言いながら俺の近くにいることが多いというのに、今は俺から一番離れた位置にいる。今日の朝に何かあったのだろうか。それとも俺が気遣何うちに何かあったのかもしれない。たびたび来織がこういう風になることがあった。高校に入ってからはあまり見られなくなっていたのだが、今はそうなってしまっている。あとで訊いてみるか。


 それから授業開始五分前になったので、娯楽部の部室から出て、皆教室へと向かった。来織だけは少しだけ暗いままだった。


 そして、放課後。今日はタイミングが悪い。来織は部活で練習試合を頼まれ、織姫は家の用事があるらしい。灯勇は昔の友達がこっちに来ているらしく、彼女の友人たちと会う約束があり、姫灯は両親に一度、家に帰ってきてと言われているらしい。状況を改めて考えてみたが、つまりは今日の放課後は一人ということだ。教室の扉の外には誰もいない。それが寂しいものだと思った。迎えに来てくれているのが当たり前だったことがわかる。そして、皆がいない間は俺は何をすればいいのか、わからなかった。そう思いつつも、結局は帰ることにして、荷物をまとめて、教室を出た。

 

 階段を降りたところで、国語の教師にあった。ダンボールを二つも抱えていたので、さすがに大変そうだと思って、手伝うことにした。

「あの、畑先生。手伝います」

「あら、ありがとう。じゃ、上に乗っかってるのお願い」

 そう言われて、上に載っていたダンボールを持った。そうしてやっと、お互いの顔を確認した。

「お、辺泥君だったのね。ちょっと大変だったのよ。誰も通りかからないし、ダンボール二つは無茶だったのよね。おかげで助かったわ」先生は心底助かった、という顔をしていた。

「いえ、まぁ。それで、これはどこまで運ぶんですか」

「図書館ね。私が国語の教師だからって、本と資料を運んでくれって。全く女性に対する言葉じゃないわよね。女性はいたわってくれなくちゃ」

 そのあと、冗談よ、と言って笑う。先生は教師の中で若い方の教師だ。この学校には二年間いる。俺が入学したときに、ここに来た教師だ。ちなみに、男女問わず人気のある教師で昼休みは生徒といるのをよく見かける。

「それにしても、辺泥君、いつもの皆はいないの」

 いつもの皆。きっと、来織、織姫、灯勇、姫灯の事だろう。俺は先生にそれぞれに用事があることを伝えた。

「そうなの。でも、それで私は助かったのね。はぁ、二つぐらい大丈夫とか思わない方がよかったわ」

「でも、通りかかってよかったです。先生一人だったら怪我とかしてたかもしれないし」

「ふふ、優しいのね。それであれだけモテるのか」何やら一人で納得した様子。

 それから、世間話をしながら図書館へと向かった。

続く。

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