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糖度100パーセント  作者: リクルート
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仲良し五人組

 次の日、俺以外の四人はお泊り会の撤収の為に、荷物をまとめていた。俺はそれぞれを手伝える範囲でだけ手伝っていた。それが終わると、来織と織姫が朝食を作っていくれていた。

「今日で来織と織姫のご飯、食べられるのは最後か」

「別に、これで一生作らないわけじゃないでしょ。それに作ってほしかったら、いつでも作るよ」

「そうですよ。わたくしは毎日作りに来ても、いいですよ」

 二人は料理を作りながらそう言ってくれた。しかし、そんな無理はさせられない。確かに来織は家が近いから、簡単に作りに来れるかもしれないが、そうなると、きっと他の人も俺の家に来たがるのは明白だ。家が近いからという理由で、彼女だけに頼るのはよしておこうと思った。それに何か贔屓しているみたいに感じる。というか、ここのところいろいろあって忙しかったからしっかり意識していなかったが、俺の彼女は来織だけなのだから、別に贔屓でも構わないのではとも思った。


 それから、学校に行く支度をして、登校した。登校中、もう視線は気にならなくなっていた。それよりも視線の数そのものが減っているのかもしれない。まぁ、毎日こんな風にしていたら誰しもが慣れてくるのかもしれないが。


 学校に着いて、俺たちはそれぞれの教室に向かった。姫灯も部室の方でなく教室の方に向かっていく。その背中は、最初に会った時よりも大きくなっている気がした。

 俺も自分の教室に入った。そう言えば、富勇にまだお礼を言ってなかった。それを思い出し、彼の席を見るが、今日も休みだった。ここ最近はずっと休んでいるが、何かあったのだろうか。俺から連絡をしてみるとしよう。


 授業では変わったことはなく進む。最近は考えることが多かったので、授業に身が入らないことが多かった。それなのにも関わらず、俺はノートをとっていたらしい。内容はほとんど覚えていなかったが。

 昼休みにはいつも一緒にいる彼女たちが、俺のところまで迎えに来てくれた。それを確認すると、俺は彼女たちと一緒に昼食を取りに行った。

 今日は中庭で昼食を取るらしい。来織がじゃじゃーんと言って取り出しのは、重箱。皆でつつけるというのはピクニックのようだ。しかし、来織と織姫曰く、皆の分を分けて作るのは面倒くさい、だそうだ。まぁ、俺は一切料理できないので、そこらへんに文句は一切ない。皆で食べる弁当は美味しいし。

「あき、今日、家に行ってもいい?」

 誰かが言うと思ったが、灯勇が言うとは思わなかった。しかし、俺には断るどころか、俺自身もいつ切り出そうかと思っていたところだ。

「もちろん。だけど、泊まるのは無しだ」

 灯勇は頷きだけで返事をした。

「じゃ、今日もあっきーの家だね。皆、着替えてから行くの?」

 そうして、放課後の予定が埋まった。彼女たちと一緒に居るようになってから、たいして時間は経っていないはずではあるのだが、彼女たちが周りにいない時間というのを、寂しく感じている自分がいた。


 午後の授業を終えて、荷物をまとめた。教室の外にはみんながすでに待っている。教室を出る前に富勇の席を確認した。今日も結局来ることはなかった。

 教室の外でみんなと合流して、俺の家に向かった。外に出るとまだまだ空は青かった。帰るのが遅くなることが多かったので、青い空の下で下校するというのは、なかなか新鮮に感じた。しかし、そんな感想を長々と述べる時間もなく、来織が俺の腕を取った。それに続いて、織姫が反対の腕を、背中側は灯勇、前は遠慮がちに姫灯が抱き着いてきていた。これでは歩くことができないということに気づいていないのか。それよりも、ここはまだ学校の敷地内だ。さらにそれよりも、俺が恥ずかしい。


 そんなことがありながら、俺の家に到着した。それぞれが挨拶をして、家に上がっていく。玄関の靴を見ると、珍しく母が帰ってきていることが分かった。

「あら、おかえり。在来」

「ただいま、母さん。今日は仕事終わるの早かったんだね」

「そうね。仕事時間が多すぎるから、休めって言われたわ。仕事を押し付けているのそっちだってのに」

 毎日、お仕事、ご苦労様です。照れくさいので、心の中だけでお礼を言った。

「おじゃましまーす」「お邪魔いたします」「おじゃまします」「お邪魔します」

 俺の後ろから入ってきた四人組に、母が驚いた顔をしていた。それはそうかもしれない。そもそも男友達だってたいして家に呼んだりしないのに、女子でしかも四人も呼んでいるのだから。

「まぁまぁ、もしかして泊まっていたのって、この子たちなの。在来」

「うん、そう。えっと、来織は知ってるからいいとして」

 それぞれを掌で示した。

「彼女が花崎織姫。お嬢様なんだけど誰とでも話せる人なんだ」織姫がお辞儀をした。

「それから、こっちの彼女が星流灯勇。歌が上手い人で、少し無口なんだ」織姫に倣ってか、灯勇もお辞儀する。

「そして、彼女が九々姫灯。ビリヤードが上手な人で、勇気がある人」姫灯もお辞儀した。

 それから各人が改めて、名乗り挨拶をした。

 それを聞いて母は、ふーんと言ってから、言葉を出した。

「それで、どの子が在来の恋人さんなの」

「……っ! げほっげほっ」

 驚いてむせてしまった。きっと、最初のころ、織姫と来織しかいなかったのなら、来織と即答していたかもしれないが、今は答えがすぐに出なかった。俺はその質問にまともに答えずにはぐらかした。来織が全員だよ、とか言い出さなくてよかったと思う。彼女ならそう言いかねないところがある。


 それから、俺たちは母が見守る中、皆で遊んだ。それから、暗くなく前に解散して、それぞれを家まで送っていった。それから家に帰った。

「あんたも意外と隅に置けないわね。しっかし、まさか私の息子がこんなにモテるとはね」

 その言葉にまともに取り合ってはいけないと俺の本能が言っていた。何か言ったら絶対墓穴を掘る自信がある。

「というか、あんた。勝手に人を泊めたらダメでしょ。母さんの帰りが遅いからってさ」

「あー、それは、ごめんなさい。最初は来織の家だけだったんだけど。隣だからってことで」

「言い訳しない。それにあんなに好かれてるんだから、男として彼女たちの責任を背負うぐらいの甲斐性は見せなさいよ」

 そんなこと言われても、難しい問題だと思う。

続く

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