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糖度100パーセント  作者: リクルート
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戦うなら

 風呂から上がって、頭が少しくらくらする中、リビングに戻ると、みんなはテレビを見ながら、話しているだけだった。世葉さんと北さんの勝負はとっくに終わっていたらしい。俺はどれだけ風呂の中にいたのだろう。というか、考えすぎていただけか。

 それから、俺たちはそのテレビが終わると、布団に入った。


 今日は俺の家ではないから、客室のようなところを使わせてもらっている。もちろん、北さんは俺の隣に布団を敷いて、寝る準備を整えている。

「それでは、寝ましょうか」

 その言葉にええ、とだけ返した。


「辺泥君。世葉さんから聞きましたよ。変な男に倒されていたそうですね」

 それは急だった。電気を消してから少し経った頃、まどろんでいたところの話だ。俺の頭は金づちで不意に殴られたように眠気が覚めた。

「あなたは今、星流様を助けようとしているとか。これは彼女自身が彼女に聞いたことです。しかし、あなたは肉体的にも精神的にも強くはない。それでもあなたは彼女を助けるのですね」

「ええ。俺は灯勇にまた動画を録らせてやりたい。というか、これは彼女には内緒ですけど、俺も見たいんですよ」

「そうですか。それには覚悟がいるかもしれませんね。本当に彼女を……いえ、あの四人を救う覚悟が必要でしょう」

 四人。俺を好きでいてくれるあの人たち。彼女たちを救う覚悟、か。

「もし、ないのであれば、一人だけを救いなさい。もし、君がそうするのなら、私は姫灯お嬢様を振ってもそのときだけはあなたを許しましょう」

 救う覚悟。そんなの高校生に求めるものじゃない。だけど、俺は多分、あの来織に告白されたときから、決められていたのかもしれない。運命なんて言葉は大げさだと思っていたけど、本当はあるのかもしれない。

「今はまだ、覚悟とかそういうのはわかりません。それに言い訳にしかなりませんが、俺は高校生で、漫画や小説の中の主人公ではありません。それでも、俺を好きでいてくれている人を守りたいです」

「そうですか。私は力になれませんが、応援しますよ。それでは、おやすみなさい」

 それから、俺は今の事を考えているうちに眠った。


 翌日の放課後、俺たちは暗い夜道を歩いていた。原因は教師からの頼み事だ。明日までのプリントの回収を頼まれ、断るわけにもいかず、引き受けた結果、思いのほか時間がかかって外は暗くなってしまった。街灯があるにしても照らされていないところは暗く、その場所は不安を掻き立てるようだ。

「あっきー、なんかついてきてる」来織が小声で俺にそういった。

 確かめてみると、昨日見たような影の形をしていた。きっと昨日の奴だろう。

「気にするな。普通に歩いていこう。気づいてると思ったら何をするかわからないからな」

 俺の言葉に頷くが、何か引っかかる様子だ。


 しばらく歩くと、急に来織が進行方向とは逆に走り出した。歩いている中で黙っているから、何かしようとしているのはわかったが、まさか向かっているとは思わなかった。いや、普段なら気づいていたのかもしれない。しかし、今はそれを考えている時間はない。来織は一直線に奴に向かっていく。

「来織、待て!」

 俺の声は届かず、彼女は走っていく。俺もそのあとを追った。

 少し振り返って、灯勇を見ると少し気分が悪そうだった。


「来たな。お前を殺すのに、人質が必要だったんで、こいつを借りたよ」

 奴の前には来織が地面に伏せていた。

「お前、何をした」

「ちょっと眠ってもらっただけさ」

「そうか。そういうことか。じゃ、殺してやる」

 俺にはもう制御不能の感情の濁流があった。それは正常な流れを大幅に超えて、理性を破壊していた。


 俺はどうしたのか、何をしたのか覚えていなかった。ただ、目の前には奴が倒れていた。顔にはあざと腫れた部分が多く、腕や服がめくれて見えている胴にもそれがあった。俺がやったのだろうか。というか、ここでこんなことできるのは俺しかいない。周りを見るといつもの顔ぶれが四人、俺を凝視していた。

「あっきー……? 大丈夫なの」

 果たして、俺は彼女たちにどんな顔をしているのか。自分の拳を見ると、赤くなっていた。血がついていいるわけじゃない。顔を触る。頬が痛い。額が腫れていた。

「あきくん、こっちに来て」

 手招きされた女子の方にふらりふらりと近づいていく。彼女は俺に怯えているように見えるが、きっと俺の為に笑顔を作っている。


 やっと今の状況の認識が追い付いてくる。それを思い出すと、来織が立っていることや奴が倒れているところを見ると、俺はストーカーをぶちのめしたのだろう。始めに考えていた話し合いなんてのは一切なかったと思う。来織が倒れているのを見て、俺の理性はなくなった。そこまでしか覚えていない。

続く

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