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糖度100パーセント  作者: リクルート
29/70

接触。…それだけじゃ終わらない

一週間以上開けてしまいましたが、やっと書き終わりました

 放課後になった。俺たちは今日もお泊り会をするということになっているが、今日は俺の家ではなく来織の家ですることになっていた。しかし、いつもなら俺のクラスのホームルームが終わる直前には来織たちは来ているはずなのだが、今日に限ってはそうではなかった。まぁ、俺の方が上の階にあるのだから、毎日俺が下に向かえばいいのだが、俺がそうする前に彼女たちは俺のところに来てしまうのだから仕方がない。うん、そうだ。


 下の階に降りて、来織のクラスに向かった。その途中で織姫がクラスの中から出てきて、合流した。といっても、どうやら、来織と織姫は隣同士のクラスらしいので、すぐに来織のクラスに着いた。クラスの中をのぞくと、来織がすごい勢いで掃除をしていた。なるほど、掃除当番だったか。彼女は俺たちの方に気づくと、大声で少し待っててと言って、さらにその掃除のスピードを上げた。一緒に掃除していた人はその光景に唖然としていた。


「ごめん。待たせた」

 そうは言うが、待ったのはたったの五分ぐらいだ。掃除ってそんなに早くできたっけ。

「いいこともあったよ。初めて、あっきーが迎えに来てくれた!」快活な笑顔で言った。

 そう言って俺の腕に抱き着いてきた。それを見て、空いている逆の方の腕には織姫がちゃっかり抱き着いている。

 ……周りの視線が痛い。

 突き刺さる視線を避けずに、というか避けられずに、俺たちは結果的に堂々と廊下を歩いていた。


 玄関に向かう前に灯勇、姫灯と会って、学校を出た。

 これからどうやって灯勇のストーカーと接触しようか。俺だけが抜けることができればいいのだろうが、きっと俺だけではストーカーは出てこないだろう。やはり、少なくとも灯勇は巻き込んでしまう。これは仕方のないことなのかもしれないが、できれば巻き込みたくはない。来織の家に着く前に何か対策を考えなくてはいけないな。散歩とでも言っておけばいいか。でも、それでは他の人がついてくるかもしれない。やはり、すぐには彼女たちの対策は思い浮かばなかった。


 来織の家に入る前に、俺の家にいた北さんと世葉さんをつれて、来織の家に入った。これから出歩くチャンスがあることを祈るのみだ。


「お邪魔します」

 俺たちはあまり声は揃っていなかったが、来織の母親が迎えに出てくれて、皆で挨拶をした。

「あらあら、こんなに多くの友達がいたなんて、知らなかったわ。それにしても、あきくんは見るたびに大きくなっている気がするわね」

 来織の両親とうちの両親とは仲がよく、家族ぐるみ付き合いがある。そのため、よく会うのだがそのたびにこういってくる。悪い気はしないが。

「さぁ、あがってあがって」

 そう促され、俺たちは彼女の家に上がった。何度も来たことのある見慣れた家だ。自分の家と同じぐらいに落ち着ける場所である。


 それからは世葉さん、北さんは来織の母親の手伝いをするといって、いろいろ始めた。女子たちはというと、来織の家にあったタロットカードを使って占いをはじめていた。俺はそれに構わず、彼女の母親に一言言って、外に出た。言い訳に言ったのは、自分の家に忘れ物をした、だ。


 外はまだ暗くなり始めたばかりで真っ暗ではなかった。そのせいか、何なのか。家を出てまず目に入ったものがあった。それは電信柱に隠れるようにして、この家を見張っているものだ。世葉さんも北さんも気づかなかったはずはないとは思うのだが、さして脅威ではないのだろうか。というよりも関わりたくないというのが本当のところかもしれない。多分、隠れている彼はストーカーだろうから。俺は彼の真正面から近づいていく。彼は俺の顔を見ていた。

「何やってんだ」

 彼の前まで来たとき、俺はそう問うたが、返事はなかった。近くまで来て気づいたが、彼は俺を睨んでいたのだ。その眼には敵意がある。俺は彼に何かしたのだろうか。

「お前は彼女を幸せにはできない。早く彼女から離れろ」

「彼女って誰のことだよ。俺は知らない」

「しらばっくれるな。彼女は彼女だ。知らないなんてありえない。星流さんのことだ!」

 彼がそう言った瞬間、俺の背中が冷たく、そして、熱を持った。すぐに判断できたには驚いたが、俺は背中を地面に打ち付けられたのだ。彼の力は強く、さらに下ではあまりに不利な体勢で力が入らない。いや、入っても勝てる気はしない。彼の力は緩むどころか、その力は増していく。まるで親の仇を討つような雰囲気で、その拳は俺の胸にめり込んで貫くんじゃないかと思うほどだ。

「……っ!……っ」

 いくら必死でもがいても、あがいても、手の力は強くなっていく。その手は俺の首の方へと近づいてきている気がして、焦ると同時に、冷静な部分もあった。なんというか、人間はピンチになるとむしろ冷静になるんだと考えていた。


 そんなとき、不意に力が緩んだ。

 というか、相手の体が視界から消えた、が正しい言い方かもしれない。


「大丈夫ですか。全く、暗い中、お一人で出歩くのは感心いたしませんね」

 そこにはメイド服姿の世葉さんが俺に手を出して、立っていた。

「な、何を……?」世葉さんの手を掴むでもなく、訊いた。

 それには答えず、彼女は俺を抱き起した。それから改めて答えた。

「お嬢様があなたがいないとおっしゃっていまして。それであなたを探してみればこのようなことになっていました。それを見過ごすわけにもいかず、助けてしまいました」

「あ、ありがとうございます……?」

 俺はいまだに混乱しているようだ。一応、お礼は言えたようだが。


 俺は思い出したように不審者の方に振り返った。そいつは呻きながら、起き上がろうとしていた。

「くそっ。彼女を守るにはお前を殺してやらなきゃいけないんだ。だから、待っとけよ。その時をな」

 そいつは捨て台詞を残して、去っていった。世葉さんは追いかけますかと言っていたが、それを断った。

 その後、俺は後悔と恥を抱えて、来織の家に入った。


 殺気というのはこんなにも恐ろしいものなのか。今まで平和な世界で生きてきて、本物の殺気なんて受けたことがなかった。あの時、感じたのは恐怖だ。俺は多分、これをどうにかしないと、灯勇を助けることなんてできない。


 はじめは交渉をしようと思っていたのが、甘かった。いや、俺ではない人がすれば、何とかなるのかもしれないが、それは誰にも任せられるものではない。鍛えるか、それとも他の方法を考えなくてはいけない。これから先が思いやられるな。

これからもなんとか一週間に一回上げていきます。

それではまたよろしくお願いします。


続く。

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