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糖度100パーセント  作者: リクルート
17/70

パーティーの終わり

「そうか、そうだったのか。思い出したよ。あの時は来織(こおり)はなんか変なのに夢中になってて一人で遊んでたんだけど、つまらなくて。そこに織姫が現れたんだ。そうだ、思い出した!」


 織姫(おりひめ)は満足そうな顔をしていた。それがなぜなのかは判断がつかない。思い当たることが二つ三つあるから。だから、これだけは俺の心の中で全部が嬉しいんだということにした。


「二人で外で何やってるの」

 いつの間にか来織と灯勇(ともよ)はゲームをやめてこっちに来ていた。

「星を見ながら昔話ですよ。わたくしの」


 それからパーティーはお開きになった。俺以外の三人は帰らなくてはいけないのだが、なんとも外は暗い。これはお送っていく必要があるだろう。さすがにこの暗い中を女子一人で歩かせるわけにはいかない。何かあっても困るしな。


 帰り支度の済んだ三人は俺と共に家を出た。来織はすぐ隣なので、彼女はすぐに帰った。それから俺は二人を送る。灯勇の家は織姫の家の方らしいので遠回りにならなくてよかった。

「......」灯勇は何かを気にしているようにちらちらと回りを気にしていた。

 何か気になることがあるのだろうか。


 あ、そういえば富勇が、灯勇はストーカー被害に遭って活動をやめたとか言っていたっけ。それのせいかもしれない。今後は気を付けよう。そうはいっても何に気を付けるのかわからないが。


「私の家はここ」

 そこは警備のしっかりしているというマンションだった。

「ここの三階の部屋」

 なんでそんなこと言うのかわからないが、本人は満足そうだ。

「じゃ、また明日」

 俺たちはそれに返事をしてマンションに彼女が入るまで見送った。


「じゃ、最後は織姫の家だな。行くか」

 彼女はこくりと頷くと俺の隣を歩く。


 しばらく話ながら歩いていくと大きな家が見えた。見覚えがある。多分ここが織姫の家なのだろう。

「つきました。ありがとうございます」

「ああ。それは気にしないで。こんなくらいのに一人返すわけにはいかないからな」

 そのとき家の扉というか門が開いた。そこに立っていたのは二人の女性。一人は織姫の母親とわかるほど、織姫に似ている女性。もう一人は丈の長いメイド服のようなものを纏った女性。年齢は若く見える。コスプレのようには見えず、仕事着としてしっかりとしている。


 織姫が振り返って声を出す。

「ああ、お母さんと世葉(よわ)さん。ただいま帰りました」

「少し遅いですよ。その方が送ってくださったの」織姫の母親は俺をちらりと見た。

 それから何かを思い出そうしながら、俺の全身を見ている。

「どうかされましたか。お母さま」

「ねぇ、世葉さん。この人見たことない?」母親は世葉という人を見て言った。

 しかし、世葉さんはさぁと首を傾げるだけだった。

「お母さん。その人はね、辺泥(にべ)在来(あきた)という人です。私の幼いころにハンカチを届けに来てくれた男の子がいたでしょう。その人です」

 母親は納得が言ったように何度も頷いている。

「それなら世葉さんが知らないのも無理ないですね。それにしてもあの子がこんなに成長しているなんて。時がたつのは早いですね」感慨を込めてそう言った。

「お母さま、お嬢様そろそろお家に入られてはどうでしょう。寒くなってきましたし、風邪をお召しになられては大変です」

「そうですね。では、送ってくれてありがとう。今度はゆっくり遊びに来てください」

「それではまた明日です」


 織姫に手を振り返し、彼女の母親と世葉さんという人に一礼して、俺はその場を去った。振り返ると織姫がまだ俺のことを見ていた。それがなんとなく幸せに感じた。

一旦落ち着くかもしれませんが、話は終わりませんよ!

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