織姫生還パーティー
「あっきー、ちゃんと見つかった?」
「あき、見つけたら連絡」
二人の声が耳にしていたイヤホンから聞こえた。
そうだった、二人も探していたんだった。早く連絡しなくては。
「二人とも織姫は見つけたぞ。それにちゃんと戻ってきてくれた」
俺のその言葉に彼女たちは息を吐きだしているのが分かった。安堵からくるものだろう。
「ちなみにどこにいるの」
「屋上だ。玄関で集合な」
「織姫、皆のところに行こう。二人とも心配してたんだからな」
彼女は俺に抱き着くのをやめて、少し離れて頷いた。しかし、その表情は浮かない。
「どうした、何かまだ問題があるのか」
「まぁ、それはあるでしょう。でも、こん今回はそれではなく、さんざん冷たくしたのに二方は許してくれるのでしょうか」
なんだ、そんなことか。俺はその問いに間髪入れずに答えた。
「当たり前だ。俺が保証する」そう言って俺は屋上から出た。
俺の横には彼女はちゃんといる。俺と腕を組んでいるのはわけがわからないが。
玄関にはすでに二人はいた。
「遅い」
「二人で何をやっていたのかな」彼女らはそんなことを言ったいたが、顔はにこやかだった。
俺たちは靴を履き替え、紅に染まった外を見る。今日一日をつぶして、織姫を戻ってこさせることができた。一日の時間など安いものだ。
「あの、ごめんなさい。わたくし、二人にひどいことを言ってしまって。本当はこうやってみんなでいるのが一番楽しい時間です。遊びではありません。全部、本気です」
「あは、今日は織姫生還祝いでなんかしよ!」灯勇もそれに同意するように頷いている。
「来織、灯勇、許してくれるんですか」
「許すも、許さないもないよ。だって、私たちは友達だし。それに許せないことはないんだよ。全部、本人が許さないだけだから」来織が言うと漫画のような言葉も本心に聞こえる。不思議だ。
「私は、この中では新参者だから、先輩がいなくなるのは寂しい。だから、これからもよろしく」なんとも灯勇らしいものだと思った。
「じゃ、俺の家でパーティーだな」
「ほんとにしてくれるの! やったー!」
しまった、冗談だったのか。でも、いいか。生還とは大げさかもしれないが、それぐらいのことはやりたいしな。
かくして俺の家でパーティーとなった。買い出しを料理できない組の俺と灯勇で行くはずが、結局全員で行ったり、そのために料理できない組が料理をしてみたりと、本当に暗い雰囲気になっていたことなど忘れて、バカ騒ぎした。もちろん近所迷惑にならない程度に。
それから、うちにあるテレビゲームをしていた。二人でしかできないのでプレイしていない二人は観戦していた。そのうちゲームが好きだったらしい灯勇がコントローラーを離さなくなり、負けず嫌いな来織が何度も勝負しているうちに見るのに飽きたのか、織姫が庭にでていった。俺は彼女の後を追うように庭に出た。
「二人とも熱中しているな」後ろから声をかけた。彼女は少し曇った空を見上げていた。
「そうですね。ふふ、楽しそうです。私も楽しくて、うれしいです。やっぱり、ここは居心地がいいです。私はここにいますね。あきくんが好きですから」
最後の言葉は悪戯っぽく言っていた。
「そういえば、俺のこと好きって、廊下でぶつかっただけなのにどうしてだ」
言ってから思ったがこれは随分と最悪なことを訊いたかもしれない。しかし、出た言葉は取り消せない。
「そうですね、知ってもらうのもいいかもしれません。それとあきくんの前でだけ私は自分を『私』とよびます」
それにどんな意味が込められているのか、なんとなくではあるがわかった。そして、彼女の俺への好意の理由が彼女の口から語られた。




