喧嘩
新たな展開!
学校に向かう前に問題が発生していた。それは誰が俺の隣を歩くかということだ。昨日までは二人しかいなかったので、両隣に居れば何の問題もなく、歩くことができていたが、三人ともなるとそうはいかないらしい。幸い、喧嘩のようなことは起きていない。口喧嘩にもなっていない。というか、誰も口を開いていない。怖い。
「なぁ、は、早く行こう。このままじゃみんな遅刻する」
俺は無言の三人にそう言ったが、全く動く気配がしない。三人とも誰かを睨んでいるわけではない。だから、むしろ怖い。
「遅刻、するから、さ」
俺の言葉は途切れ、途切れになっていく。仕方ないだろう。怖いんだ。
「そうですね、早く行きましょうか」
「あっきーの隣は?」
「学校、行く」
三人はようやく口を開いたが、話は解決していない。
「じゃ、織姫と灯勇が隣でいいよ」
その言葉に俺は安堵していた。これでこの話はおしまいになるんだと。しかし、話はそんなに単純ではなかったらしい。
「どうして。来織はいいの」
「いいんだよ。私はあっきーとの時間は長かったし、二人に分ければ同じくらいになるでしょ」
「それは来織があきくんとの時間を自慢しているんですか」いきなり織姫が難癖をつけていた。
どうしたんだろうか。普段は温厚でまったりしているような人だと思っていたのだが。
「どうしたんだ、織姫。そんな言いがかり的なこと言わなくてもいいだろ」
そうは言ったが、彼女は何も言い返してこなかった。
彼女は先に歩いて行ってしまったので、俺たちも学校に向けて歩き始めた。
「どうしたんだろう。織姫、なんかおかしかったよね」
「ああ。いつもはあんなこと言わないだろ。それに来織だって何度かああいうこと言ってるんだろ」
その言葉にこくこくと頷く彼女。
「おっとりしてる感じに見えた」彼女と会って間もない灯勇もそういう意見だった。
何かあったのだろうか。それなら、言ってほしいと思う。俺が彼女の助けになろうというのはやっぱり、ひどいことなんだろうか。彼女がいながら他の女子を助けるというのは彼女にとっても他の二人にとっても最悪の事なんだろうか。
俺は何がしたいんだろうか。
学校について靴を履き替える。そのまま二人と別れて、俺は自分の教室へ。
「よっす、あっくん。彼女が増えたなぁ」
教室の戸を開けたすぐそこに彼はいた。富勇だった。
「ん、そういえば増えたのに増えてなかったな」
何を言っているのだろうか、こいつは。
「あ、増えたと思ったのに、二人しかいなかっただろ。あと一人はどこいった」
「わからない。今朝は急に怒って、先に行っちゃったからな」
ふーん、とどうでもよさそうな返事だった。なら聞くなよ、そう言ってやりたい。
「で、あっくんはどうするんだ。その人と仲直りするんだろう」
「正直、迷ってる。だって考えてもみろ。俺の彼女は来織だけなのに、今は他に二人も近くにいる。それはなんか誰に対しても不誠実じゃないか」
つい勢いで悩んでいたことの一部を話してしまった。どどう返ってくるのか、それが一つの答えになる。
「何言ってんだ。それはお前が考えてる相手の気持ちでしかない。それこそ失礼だ。ちゃんと三人の気持ちを聞け。話はどう考えてもそれからだ。お前が答えを出すのも、だ」それだけ言うと俺の肩を軽くたたいて、教室を出ていった。
彼女たちの気持ち。そんなことは考えていなかった。自分でしか考えていなくて、俺の考えを本当だと思っていた。しかし、それは違ったんだ。ちゃんと彼女たちのことを知ろうとしなかった。それは俺の傲り以外の何物でもない。彼女たちのことを考えるんだったら、富勇の言った通り、しっかり彼女たちの考えを聞かなくてはいけないのだ。俺は決意を新たに、彼女たちと向き合うことにする。
富勇に言葉に認識を改める彼。この先に解決は見えるのか
次回に、続く




