第7話 ラズリー
そこそこの時間が経ったころ、ようやく少女が目覚めたようだ。
「あれ・・・ここは・・・」
よかった~。このまま目覚めなかったらどうしようかと思った。
だが、まだ問題が残っている。
返事する前にこの娘が気絶したから、言葉がちゃんと通じるかどうか分からないままだ。
とりあえず話しかけるしかない。
「起きたか?俺の言葉わかるか?」
「ひゃあ!」
すごい勢いで後ずさる少女。・・・ショックだ。
まあ、起きていきなりドラゴンの頭があったらビックリするか。
だが、言葉は伝わっているらしい。なんとか怖がられないように話してみる。
「えっと、怖いのはわかるけどちょっと話を聞いてくれるか?
距離はそのままでもいいからさ」
「(コクコク)」
頷く姿がとても可愛い。やっと話せる、その時
少女が急にあたりを伺い怯えはじめた。
どうしたんだろう、そう思ったらオドオドしながら
「あの、わたし人間に追われてて・・・」
「あ~覚えてるかな、俺が降りてきて脅かしたらどっか行ったよ」
その時のことを思い出したのか、怯えた様子が収まりフワフワ浮かびながらこっちへ飛んでくる。
俺の前まで来ると、その場にへたり込んだ。
「ありがとう・・・あの人たち、とっても怖かった・・・」
うっすら涙を浮かべ、そう告げる少女。
「いや、俺の方が怖くないか?見た目こんなんだぞ」
あいつらもかなり悪人面だったが、こちとらモロにドラゴンである。
どう考えても俺のが恐ろしいと思うのだが、
「いいえ、言葉が通じる魔物よりも、言葉が伝わらない人間の方が恐ろしいです。
それに、あなたはわたしを助けてましたから」
「君を助けたつもりじゃないんだが・・・」
「それでも、この身が救われたのは事実ですから」
そう言いながら、涙を流す少女。
どうしていいのかわからないが、とりあえず頭を撫でてみる。
どうにか優しくしようとするが、手がデカく撫でにくい。
それでも満足してくれたようで、やっと微笑んでくれた。
「うんうん、やっぱり笑顔の方が可愛い」
「あう・・・」
頬を赤くしてうつむく仕草も可愛い。
大分リラックスしてくれたみたいだし、これなら話もできそうだ。
「ところで君はなんでこんな」
聞きかけたところで
「ラズリー、です」
「え?」
「わたしの名前、ラズリーっていいます」
どうやら少女はラズリーというらしい。
これは名前で呼べ、ということだろうか。
「えっと・・・ラズリー、どうして君はこんな所に?」
そう聞いてみたのだが、なぜか自分の体をしげしげと見ているようで
俺の声が聞こえていないようだ。
「あの~」
「服が元通りに・・・傷跡も残ってない・・・」
どうやら傷ついていた体に違和感があるようだ。
もしかして俺の魔法のせいか?
「ごめん、実は・・・」
寝ている間に回復魔法と時間魔法をかけたことを白状する。
よかれと思ってやったことだったのだが、
なにかマズい事でもあったのだろうか。
「時間魔法・・・もしかしてそれなら・・・」
ブツブツいいながら考え事をしている。
うーん、この様子を見るにどうやら俺は相当やばい事を
やってしまったらしい。
「あの!お願いがあります!」
「うひゃあ!」
いきなり大声を出してくるからビックリした。
「え~と、なにかな」
この時点で嫌な予感しかしないが、一応聞いてみる。
「姉さんを助けてください!」
切羽詰まった表情で妖精の少女は助けを求めてきた。
お読みいただきありがとうございます。
次回は流されるまま妖精族の里です。