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第5話 妖精族の少女

ちょっとシリアスかもです。

その少女は、ひたすら逃げていた。



捕まった時に、全てが終わってしまうから。



だからこそ、逃げ続けるしかなかった。



追いかけてくる人間達に、捕まらないように。



森の中を、ただ逃げ続けた。





この世界において、妖精族は希少である。

可憐な容姿は、人型のみならず魔物も惹きつけ、

妖精固有の魔法は、普通の魔法に比べても

別格の力を持っていた。

普段は立ち入ることも困難な樹海に

里を作って暮らしているらしく、

人前に現れることも滅多にないため、

存在そのものが神秘とも言われていた。


そのために妖精達は愚かな人間の標的になった。

その容姿に惹かれて、奴隷にしようとする者。

その魔法に惹かれて、研究材料にしようとする者。

己のステータスのために、その身を求める者。

その者から依頼を受け、妖精達を狙うもの。

あらゆる悪意が、妖精を追い詰めた。


元々人間達にいい感情を持っていなかった妖精達は

樹海の奥深くにこもるようになった。

さらに広範囲に結界を施すことによって、

あらゆるものの侵入を防いだ。

いかなる人間だろうと樹海を彷徨う結界。

これによりようやく安息の地を手に入れた。


だが、森の中だけの生活を退屈に感じ、

外の世界に夢を見る妖精もいた。

ここ以外にも居るはずの仲間を探しに、

外に向かう妖精もいた。




その少女は、そこまで外に興味はなかった。

性格も臆病で、いつも家族の後ろに

隠れているような少女だった。

このまま森の中で生きていくはずだった。

だが、そうも言っていられない事情があった。

少女の姉が倒れたのである。

魔法でも治せない、薬も効かない、

もうどうしようもなかった。


その時、とある話を耳にした。

自分達妖精を統べる存在、妖精王の話。

本当か嘘かわからないその話を聞いて、

仲間たちの静止を振り切って

里を飛び出していった。


外への恐怖はもちろんあったが、

家族を失うことの方が

少女には耐えられなかった。


だが、世界は優しくなかった。

ずっと安全な場所に居たため、

戦うことすらなかった少女は、

逃げることしかできなかった。


身の丈より遥かに大きい魔物。

唸り声をあげて威嚇する魔物。

空からじっと睨みつける魔物。

追われ、逃げ続けていたため

自分がどこにいるのかも

わからなくなってしまった。

さらに状況は悪化する。



気がついた時には、森が開けた場所に着いた。

見晴らしのいいその場所には、

少女が決して見つかってはいけないモノがいた。

仲間を欲望のままに襲い、

自然を破壊する忌むべき存在『人間』

それが3人。うち1人がこちらを見ていた。

濁った眼で、下衆な笑いを浮かべた。

残りの2人もこちらを向いた。


それらに背を向け、少女は逃げ出した。

今まで出会ったどんな魔物よりも、

恐ろしくおぞましかった。

元来た道を引き返す。

ここがどこなのかわからないまま。


少女は必死に逃げていた。

捕まったらどうなるのか、考えたくもない。

浮かびながら逃げることで、

足元に気をとられないことが救いになり、

少しづつ距離を離していった。

このまま逃げ切れる、その時


  ヒュッ


独特の風切り音のあと、腕に痛みが走った。

どうやら短剣のような物を投げられたらしく、

服が裂け血が出ている。

なんとか回復魔法をかけて傷を塞ぐものの、

そちらに気を取られ進行速度が遅くなる。


なんとか防御魔法を張りつつ、距離をとろうとするも

時折投げつけられる短剣に何度も振り返る。

その都度近付く人間が、恐ろしくてたまらなかった。



それでも、少女は逃げ続けた。

だが体力の限界か、眼に見えて速度が落ちた。

その様子に喜ぶ3人の追手。

彼らの頭では、もう捕まえた気になり、

血で汚れた剣を構え、生け捕りにしようとしていた。



人間に捕まえられそうになったとき、

少女は心から願った。


こわい、いやだ、だれかたすけて


少女はこの森で、ずっと1人だった。

そんなことはわかっていたはずなのに

そう願わずにはいられなかった。










その時、だった。


最初に感じたのは、膨大な魔力だった。

今までに感じたものに比べて、

桁違いの魔力だった。

次に、爆音と共に何かが降ってきた。

かなりの質量が、いきなりである。

周りの木は倒れ、煙が舞い散る。

煙が晴れた時、そこにいたもの、



それは、龍だった。



あまりに神々しく、綺麗だった・・・。

自分が追われている事も忘れていた・・・。

ただただ驚き、その顔を見つめ続けていた・・・。



―そうして少女は、神龍と出会った―





お読みいただきありがとうございます。

メインヒロイン登場です。

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