第3話 外に出よう
「さて、今日はどうしようかな・・・」
異世界にきて一週間が経ったが、
俺はいまだに外に出ていなかった。
基本的にだらけることが好きなうえに、
この体になってから、食事も必要としないために、
完全にニートになりつつあった。
寝て、起きて、魔法をつかって、ゴロゴロして、また寝る。
そのおかげなのか、ほとんどの魔法を
自分の想像通りに扱えるようになっていた。
そのため、流石に少々魔法だけにも飽きてしまったのである。
・・・いくらこの世界の魔法が、イメージが
重要とはいえ、想像のままに発現させるなど、
非常識すぎるのだが・・・。
「こうやって永遠ゴロゴロしてんのも悪くないけど・・・」
そろそろ外に出てみようかな、と思っていた。
さすがにこのままニート一直線はまずいだろ、と。
寝そべった体勢でそんなことを思っても、
とても信じてもらえないだろうが。
だが、外出するには一つ問題があった。それは、
「そういや・・・どうやって出るんだここ?」
この広間というか洞窟には、出入り口が無いのである。
ドラゴンとしての巨体がゆうに収まるこの部屋は、
何故か密閉されている空間だった。
正確には一週間前にはあったのだが、彼が魔力を
アホのように撒き散らしたために発生した魔石が、
出入り口を塞いでてしまったのである。
「どこにも道がないし、天井も開いてない・・・」
壁に沿って歩いてみるが、グルっと一周回っただけだった。
それだけでもかなりの時間がかかったため、
もう諦めてふて寝しそうになったが、流石に
密閉空間だとわかった今だと、ストレスがたまりそうだ。
「う~ん、やっぱり壁掘っていくしかないか・・・
でも、それでここが崩れたら嫌なんだよな」
高密度の魔石で形成されたこの場所は、
そうそう簡単には崩落しないのだが、
変なところで心配性なこのドラゴンは、
安全策に出ることにした。
「空間ごと削って、結界で固定しながら進むか・・・。
よし、そしたら一番薄そうな所から掘ろう。」
彼にとっては安全策だが、普通では考えられない方法で
外に出ようとする。
少なくともかなり非常識なことには違いない。
壁に魔力を流し、一番薄いところを調べる。
そこはもちろん元々通路があった部分なのだが、
そんなことも知らないので
「お、ここなら掘るのは最低限でよさそうだ。
でも、ここだけ魔力の密度が濃いな・・・なんでだろ?」
自分が垂れ流した力のせいだとはつゆ知らず、
彼は自分で無意識に塞いだ道を再び開けていく。
道がつながった所で、通路全体と広間の入り口に
結界魔法を施し、誰にも侵入出来ないようにしておく。
「せっかくの寝床を、荒らされるのは嫌だしな」
そもそも規格外の強さを持つ龍の縄張りに、
忍び込む命知らずなどそうはいない。
「・・・そんじゃあ、異世界、行ってみますか!」
翼を広げ、外に向けて走り出す。
その顔に笑みを浮かべながら、
男は世界に羽ばたいた。
―そうして、異世界アースガイアに神龍が舞い降りた―
―世界を滅ぼす力と、世界を癒す力をその身に宿して―
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次は妖精のつもりです。