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第14話  それは唐突に

ようやく辺り一面を覆い尽くしていた光が収まった。


「ふう、なんだったんだ一体?」

周りを見渡しても特段変化があったようではないようだ。

ただ一つあるとすれば、妖精達の表情くらいだろう。

先ほどまで行われていた儀式のおかげか、とても楽しい様子だったのだが

今では初めて会った時のように驚愕の表情を浮かべていた。


「みんなどうした?キョトンとして」

「神龍様・・・ですよね?」

「そうだが・・・」

なんでそんな事聞いてくるんだろう。そんな有り得ないものを見たみたいに。

そうして彼女に問いかけられた時に、ようやく異常に気付いた。



目線が下がっているのである。さっきまでは相手が見上げ、

自分がかなり高い所から見下ろしていた。

妖精とドラゴンの体格差なら、それは当たり前のことである。

だが今は、視線が限りなく近づいているのである。

例えるなら大人が子供に接する位の感覚だ。


・・・なんだかなー。なるのが突然なら戻るのも突然ってか?

やっと身体に慣れてきたと思ったらこれですか?勘弁してくれよホント。

感じていた違和感の正体がわかった。翼も尻尾もなくなって

自分の腕を見てみれば、そこには見慣れた人の腕。


「なあ?俺は今やっぱり・・・」

「・・・人間になっていますね」

「神龍様・・・人型にもなれたんですか?」

「俺が聞きたいよ・・・」

ラピスもラズリーも驚いているようだ。そりゃそうだ。

ドラゴンがいきなり人になったら誰だってビックリだろうよ。


「ラピス、鏡かなにかあるかな?」

身体は見えるが一応自分の顔は確認しておきたい。

「鏡ですか?すいませんここには・・・」

「あー、顔が見れればなんでもいいや」

「えっと、少々お待ちください」

そういうとラピスはなにやら呪文を唱え始めた。そうすると

虚空にいきなり水が現れ、そのまま固定されたかのように動かない。


「これでどうでしょうか?」

「充分だ、ありがとう」

そういいながら水を覗き込むと、そこにはよく目にする顔があった。

この世界の出来事が衝撃的とはいえ、27年見てきたものはそうそう忘れない。


「うん、俺の顔だなこりゃ。髪と瞳の色以外は」

染めたこともない髪はなぜか見事な銀髪になっていた。

ここだけ神龍の要素が引き継がれてどうすんだよ。

瞳はラピスと同じような瑠璃色に変わっていた。こっちは誓約のせいか?


「う~ん、どうするかねぇ・・・」

「どう、とは?」

独り言のつもりだったが、ラピスが反応した。

「いや、人型も便利は便利だけど・・・この姿だとみんな嫌だろ?」

「それは・・・」

確かにこの姿のほうが便利なのは間違いない。細かい作業もできるし、

妖精の皆と触れ合うこともできる。ドラゴンの姿だと力が強すぎるのだ。

だが、彼ら彼女らに嫌われては何の意味もないのだ。

そう不安になっていたのだが・・・


「神龍様、それは大丈夫だと思います」

どうするべきか悩んでいると、そばにいたラズリーが答えてくれた。

「なんでだ?人間なんて見るのも嫌だろ?」

「わたしたち全員が目の前で神龍様が人型になったのを見ています。

それに儀式を行った時点で、その相手は妖精族と共に在るんですから。

人間というよりは、ちょっと大きい妖精みたいなイメージですよ」

他の妖精も納得したかのように頷いている。

・・・それでいいのか妖精族よ。



「まあ、皆がいいならいいんだけどさ・・・」

そういいながらラズリーの頭を撫でる。うん、やっぱりこっちの手のほうが

圧倒的に撫でやすいな。髪の感触もよくわかるし。

「ふにー・・・」

「っとすまない、つい」

余りに丁度いい位置にあったものだからつい撫でてしまった。

慌てて離そうとしたのだが、なぜかラズリーがぎゅっと手を掴んだまま離さない。


「えっと、ラズリー?」

「もう少し、お願いします」

「いや、でも・・・」

「お願いします」

「・・・はいはい。仰せのままに」

言われるがままに、彼女の頭を優しく撫で続ける。

気持ちよさそうにしているラズリーを見ると、こっちも幸せな気分だ。


辞め時が見つからないで困っていた所、もう片腕を何かに引っ張られた。

「ラピス?どうしたんだ」

そこにはふてくされたように、こちらを見上げてくる姿があった。

何かを訴えるように強い眼差しを向けてくる。

「・・・ずるい、です」

「え?」

「誓約したのは私なのに、ラズリーばかり・・・」

そういう彼女は、見た目通り年相応の少女に見えた。

そんな姉の姿は初めて見たのか、ラズリーも驚いていた。



・・・どうやらこの姫様は、結構なヤキモチ焼きのようだ。

そうして俺は、2人を一緒に撫でる羽目になった。



お読みいただきありがとうございます。

次回もよろしくお願いします。

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