第13話 誓約の儀式
「姉さん姉さん、その言い方だと勘違いするかも」
「え?・・・ふあっ!違うんです!そうじゃなくて、あの」
「えっと、とりあえず説明してくれるか?」
全く話についていけなかったところだ。余りに驚いて
一瞬思考が停止したよ。あ~ビックリした。
顔を真っ赤にしてパニックになっているラピスはさておき、
事情がわかっているようなのでラズリーに聞くことにする。
「わたしたち妖精族には、古来より伝わる儀式があるんです。
生涯を共にする相手との、一生に一度きりの誓約です」
「一回きりって・・・そんな大事なことを俺と?」
そもそもなんでその誓約とやらが彼女を救う事になるんだ?
疑問に思ったところでようやく回復したらしいラピスが教えてくれた。
「この儀式を行うことで魔力の総量を多くすることができるんです。
相手が元々持っている魔力の分だけ器が広がるといいますか・・・
これを代々繰り返してきたことで、私達妖精族は力をつけてきました」
「そうすれば、俺の魔力も受け止めきれる?」
「おそらくは、ですけど」
要するに俺の魔力が注がれても大丈夫なように、許容量を増やすってことか。
それができるんなら何の問題も・・・
「ですが、この誓約を交わすというには、その」
またラピスが赤くなりながら告げる。
「私達妖精にとって、お互いと永遠に過ごす誓いなんです」
・・・なるほどね。そりゃ恥ずかしくもなるわ。
「つーかラピスはいいのか?そんな大事な誓いの相手が、
同じ妖精じゃなくてこんなドラゴンで」
そもそも異種族オッケーなのか?
いくら治療の為とはいえ一生に一度の大事だ。
もしかしたら他にも方法があるかもしれない。
「神龍様が受け入れてくださるのならば、私は・・・」
「俺は構わんぞ。色々教えてもらった借りもあるしな」
実際問題ここで情報を聞けなかったらどうなっていたかわからないし。
それに可愛い子に頼られるのも悪くはないしな。
「・・・ですが、」
「他にもなんかあるのか?」
この際だ、気になってることは全部言っておいて欲しい。
「神龍様と誓約を交わすということは、私に神龍の力を渡すことになります」
「ん?それの何が問題なんだ?」
全く理由が掴めず聞き返すと、驚いた表情を浮かべていた。
「私にそれだけの力を与えてもよろしいのですか?もちろん悪用する
つもりなどありませんが、もしも悪意を持った者に捕まれば・・・」
ロクでもない使い方をされるかもしれない、と。
何を言うのかと思ったらそんなことか。
「何言ってるんだよ。ずっと一緒にいるんだろ?」
「・・・え?」
自分に告げられた言葉の意味がわからないようでキョトンとしている。
そもそもそんな誓約なかろうと、こんだけ優しくしてくれたんだ。
恩義を返すのは当然だろうに。
「・・・・・・」
「えっと、ラピス?」
呆然としている。どっかで見たことあるなこれ。
しばらくするとゆっくりこちらに近付き、そのまま手のひらをこちらに向けてきた。
「神龍様、御手を・・・」
「お、おう」
こちらも手をかざし、大きさは違うが合わせてみる。
手が触れ合うと、ラピスがなにやら言葉を紡ぎだした。
そうすると足元に魔法陣が描かれ、輝きだした。
その光は辺りを照らし、俺達を包み込むように広がっていく。
「私、妖精王の娘ラピスは、永遠にあなた様と共に在り続ける事を誓います」
そう言った後こちらを見上げてくる。これは俺もなにか言う流れか?
「えっと・・・?」
名乗って誓いを告げればいいんだよな。
そういや俺、こっちきてまだ名乗ったことなかったっけ。
どうしよう何にも思いつかない。元の世界の名前でいいか。
「神龍トールは、永遠に君と共に在ることをここに誓う!」
そう告げた時光が溢れ、俺の中からごっそりと力が抜けていった。
代わりにラピスから暖かな力が流れ込んでくる。
その暖かな輝きの中、彼女が話しかけてきた。
「神龍様・・・」
「ごめん、名乗ってなかったな。改めて、神龍トールだ」
「トール様、とお呼びしたほうが?」
「好きな方で構わない。呼びやすいほうでいいさ」
「ではやはり、神龍様で・・・流石に名は恐れおおいです」
そんないまさらな会話をしていると光が収まってきた。
「儀式は成功したみたいだな」
「はい。余りに送られてくる力が多いので驚きましたが」
「身体に異常は?」
「問題ありません。これが神龍様の魔力なんですね・・・」
嬉しそうな表情で呟く。どうやら元々もっていた魔力と上手く馴染んだようだ。
これで俺が魔法を使っても、いきなり倒れることはないだろう。
光も魔法陣も消えると妖精たちが寄ってきた。
この儀式はめでたいことらしいから、みんなテンションが高い。
ラズリーなんて背中から抱き着いてるし。
ふう、良かった。やっとこれでひと段落ついたな。
そうして気をぬいた瞬間、全身に違和感を感じた。
力をごっそり渡したせいか?そう思っていたのだが
突然全身が輝き出し、辺りを埋め尽くした。
「神龍様!?」
ラピスの驚いた声が聞こえたが少しばかり遅かった。
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