第12話 神龍
なんか、スケールの大きな話になってきたな。
横を見てみれば、初耳だったようでラズリーも驚いている。
「姉さん、それ本当なの?前に聞いた時は四龍神のことだけだったのに」
「私も半信半疑でしたから。ただでさえ圧倒的な力を持つ龍神。
その更に上位の存在など、そう簡単には受け入れられません」
「時間に空間、概念に世界創造ってまさに神だな」
「はい。世界の創ったのが真実かどうかはわかりませんが、
時間と空間を操っていたのは確かだそうです」
ただのドラゴンになったと思っていたのだが。確かに時間魔法も
空間魔法も使うことができたな。概念の魔法というにはよくわからんが
後でできるかどうかやってみるか。あれ?ちょっと待ってくれ。
「そういえばラピス、なんで俺が神龍だと思ったんだ?」
目覚めて話を聞いた後ならともかく、起きてすぐに言ってたよな。
夢うつつの状態だったし勘違いかと思ってたけど。
「・・・わかりません。神龍様の存在など信じていなかった筈なのに、
一目見ただけでなぜかあなた様がそうだと心が感じとったのです。
まるで生まれた時からそう知っているように」
うーん、よくわからん。俺自身と会ったこともないはず。
唯一考えられるとしたら、彼女が眠っていた原因そのもの。
「君の中にある魔力と関係あるのかもな」
「どういうことですか?」
「ああ、実は・・・」
俺はラピスを目覚めさせた時のことを詳しく語った。
体内に2種類の魔力を内包しており、2つが反発していたこと。
うち1つが俺自身の魔力と似ている、というか同じであり
時間魔法をかけるとそれが俺に入ってきたこと。
消したわけではなくあくまで戻しただけなので、まだ身体に元の
魔力が存在しているため再び倒れる可能性があること。
そう話すとラピスはなにか納得したような表情を浮かべている。
「このことだったのですね・・・」
「なにか心当たりがあるのか?」
「はい、水龍神様にお会いした時に言われたのです。
その時はほとんど理解できなかったのですが」
『いつの日か我らの神に出会うでしょう。その時に貴方の力は目覚めます。
神に寄り添う神龍の巫女として、再び我らと出逢えることを願っています』
「やはり、あなた様は神龍様です。間違いありません。水龍神様も、
私の力に気づいておられたのでしょう。これで何故私が倒れたのかわかりました」
「え?なんで?」
なんかどんどん置いてけぼりにされている。
「おそらくですが、神龍様がこの世界で目覚めた時に私は倒れたんだと思います。
覚醒した魔力が共鳴し、急激に増幅したため一時的に眠りに就いたのかと」
「その増えた分を、俺が時間魔法で戻したってことか」
「はい。元々の持ち主であるあなた様に戻ったものかと」
あくまで元に戻しただけなので、根本の力はまだ残っているようだ。
「それだとまたいつか倒れるんじゃないのか?」
俺の魔力に反応して増幅するなら、下手すると魔法を使う度に。
その都度治していくなんてキリがないぞ。なにか対策を・・・
「方法が無いわけではないのですが・・・」
少し言い辛そうに言葉を詰まらせる。
「そうなのか?それならよかった」
女の子に負担をかけ続けるなんて自分で自分を許せない。
「えっと・・・その」
何故か頬を赤く染めてこちらを見上げてくる。え、なにその反応。
「姉さん、もしかして・・・」
ラズリーはなにをするのか見当がついているようだがこっちはさっぱりだ。
「俺にできることならいくらでも協力するぞ。元はと言えば俺のせいで
倒れたようなものだし、なんでも言ってくれ」
そう言うとラピスはうつむいてしまった。
この言葉に嘘はない。いくら成り行き任せで助けたとはいえ、
ここまで深く関わってしまったんだから。
しかも元々の原因は俺がこの世界で目覚めたことのようだし責任は取らないと。
しばらくうつむいたままだったが、意を決したように顔をあげた。
その表情には何かを決断したような、覚悟を決めた顔だった。
・・・なぜか顔は真っ赤だったが。どんな無理難題なのよ!
こっちまで緊張してきた所にとんでもない爆弾が投下された。
「・・・神龍様。私と永遠に、一緒にいてくれますか?」
・・・告げられた言葉は、まさかの結婚してくださいだった。
お読みいただきありがとうございます。
次は理由と誓約です。
次回もよろしくお願いします。




