第10話 信じること
「ご挨拶が遅れて申し訳ありません、神龍様。
私はラピス、この里のまとめ役のようなものです」
はっきりと目覚めた少女が、妙にかしこまって自己紹介をする。
既に他の妖精達は解散しており、この広場に残っているのは
俺とラズリー、そしてラピスだけである。
だが、他の妖精達も気になっているらしく、こちらの
様子を窺っているようだ。それならこっちに居ればいいのに。
なぜ彼女がこれ程に敬意をもって接してくるのかがわからず、
疑問に思いながらラズリーを見ると、こちらもキョトンとしていた。
どうやらわかっていないらしい。もう本人から聞くしかない。
「あ~、聞きたい事が多すぎるんだが・・・」
「私の知っている知識でよければ、いくらでも」
「じゃあまず、神龍って俺のことか?」
「え?」
・・・沈黙が流れる。え、これ聞いちゃまずいこと?
物凄い驚いた顔してるんだが。
「えっと、その、神龍様ではない?」
「あ~・・・」
どうしよう、ここは自分のことを説明するべきか?
それとも事情を隠して情報だけ聞き出すか?
・・・いや、そんな器用なことが出来るとは思えん。
ここは全部話して誠意を見せておくべきだ。
悪い奴には見えないし大丈夫だろ。・・・たぶん。
今はこの世界のことを知ることの方が重要だ。
「信じられないと思うんだが、聞いてくれるか?」
そうして俺は、自分の身に起きたことを話した。
ここではない世界で生きていたこと
目覚めたらドラゴンになっていたこと
魔法が使えるようになっていたこと
外に出てラズリーを助けたこと
ラズリーの頼みで君を助けたこと
この世界の情報が欲しいこと
「こんなところかな。俺は自分がその神龍って奴なのかもわからないし、
ここがどんなところかもわからない。君たちが何故人間に追われてるのかも知らない。
だから、少しでも情報が欲しいんだ」
俺の話が終わるとラピスはなにか考えこんでるようだ。
盗み聞きをしていた他の妖精は困惑した表情を浮かべている。
まぁいきなりそんな事聞かされたらそうなるよな。
そう思っていたのだが彼女は違ったようだ。
「まぁ、こんな与太話信じられないよな」
「そう、ですね。いきなり全てを信じるのは無理です・・・」
「だろうな「ですが」あん?」
「それでも、あなた様が私達姉妹を救ってくれたことは真実です」
「・・・」
「ですから、私でよければ力になります」
「いいのか?こんな怪しいドラゴンそうそういないぞ?」
「構いません。受けた恩はお返しします」
「それはありがたいけど・・・」
他の子達が納得するか?・・・そう思っていたのだが
「まぁ、2人を助けてくれたのは確かだしね」
「悪いドラゴンじゃなさそうだし」
「姫様が決めたことなら大丈夫でしょ」
軽いな、妖精族。この姉妹の信用が高いのか?
そういえば、妹の方が静かだけど・・・
「ラズリー、君はいいのか?こんな胡散臭い奴信用して?」
「え、どうして?」
「どうしてって、それは・・・」
「わたしを助けてくれて、姉さんも助けてくれた。
それだけであなたを信じるには充分」
・・・やばい、ちょっと泣きそう。こんなにまっすぐ信用してもらったこと初めてだよ。
「ありがとう、2人とも・・・」
この世界で始めて会えたのが優しい子たちでよかった。
「えっと、じゃあ色々教えてくれるか?」
「「はい」」
そうして俺は、ようやくこの世界の事を聞くことができたのだった。
お読みいただきありがとうございます。
中途半端な所で切れてすいません。
次回こそ世界のお話しです。




