表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/16

第9話 ラピス

さて、この状況どうするかね・・・


「なんでドラゴンが降ってくるのさ!」

「結界が破られたぞ!急いで張りなおせ!」

「戦える者は集まれ!なんとか追い返すぞ!」


うわー、集落全体が大混乱って感じだな。

これじゃあ俺が何を言っても聞いてくれなさそうだ。


「そんじゃラズリー、なんとかしてくれ」

「どうして説明する前に降りてしまうんですか!仲間のみんなが大パニックです!」

「うん、だから君が説得してくれ。今にも攻撃されそうだ」

「もう・・・」

話してる間にも、あちらこちらから魔法が放たれようとしている。

急いでもらったほうがよさそうだな。

文句を言って背中から降りるラズリー。その姿を見てさらに驚く妖精達。


「ラズリー!無事だったんだな!」

「うん、わたしは大丈夫。それより皆、魔法を止めて!」

「止めろって・・・こんな怪物放置できるわけないだろ!」

「平気だよ、悪いドラゴンじゃないから。それにわたしが

このドラゴンから降りてきたのをみたでしょ?」

「いや、でもな・・・」

ふう、この様子なら大丈夫かな。しかし妖精ってのは美男美女ばかりだな。

あまり歳取った奴もいないみたいだし、そうゆう種族なのかね。


「だが、そいつは結界を破って入ってきたんだぞ。並の魔物では近付くことすらできない

僕たちの力を合わせて作った結界を。そんな危険な魔物を自由にさせろと?」

ん?ちょっと待って。それってあの薄い壁みたいなやつか?

「もしかしてあれ破いたらマズかった?」

「はい・・・あの結界がないと魔物が入ってきてしまうんです

まずわたしが入って事情を説明するつもりでしたから」

・・・それは完全に俺のせいだな。急いで直さないと。

上を見上げて魔力の流れを詳しく見てみると、結構デカめの穴がポッカリと開いていた。


とりあえず穴を塞ぐため、元の壁の状態をイメージする。

使用する魔法は時間魔法。ラズリーの姉を治すのにも使うのだから

ここで出し惜しみする必要はない。名前があったほうがいいか・・・


時間回帰クロノ・リターン


光が煌き結界へと昇っていく。俺の身体から膨大な魔力が放たれ妖精達が警戒するが、

破られたはずの結界が元の状態に戻ったことにより警戒から驚愕へと変わった。


「なんだよ・・・今の魔力・・・」

「いや、それより結界が・・・」

「今のはまさか、時間魔法・・・」


「よし、直った。これで元通りかな」

「こうして見るのは初めてですけど、凄いです・・・」

結界はこれで大丈夫だろ。あとは説得か。まあこれはラズリーまかせだな。


「みんな聞いて。この力なら、姉さんが助かるかもしれない。

お願い、姉さんの所に行かせて」

「でも彼女には魔法も薬も効かないんじゃ・・・」

「いや、時間魔法なら、効果があるかもしれない。

少なくとも現状より悪くなることはないと思うが」

「いやドラゴンだよ?信用できるかな・・・」

「でも結界を壊したけどすぐに直してくれたし・・・」


「「「・・・」」」


うーんイマイチ反応が良くないな。まあいきなり現れたドラゴンが

大事な仲間を助けますって、うさんくさいにも程がある。説得失敗かな、そう思った時


「ちょっと待ってて」


「え?」

そう言うと何人かの妖精がこの場を離れていく。そのままぼんやりしていたが、

少し経つと妖精達が何かを抱えて戻ってきた。あれはベッドかな?


「よいしょっと、みんなそっと置くんだよ」

「わかってるってば、当たり前でしょ」

「大事なお姫様なんだから」


彼ら彼女らが運んできたベッドには一人の少女が眠っていた。

顔立ちはラズリーに似ている。多分この娘が姉さんなのだろう。


「みんな・・・どうして?」

「ドラゴンの身体が家に入るわけないじゃん」

「そうじゃなくて、いいの?」

「いいもなにも、僕たちだって助けたいし」

「君が連れてきたんなら、大丈夫だろってこと」

どうやら日頃の行いというやつか、俺はともかくラズリーは信じられるらしい。

「グスッ・・・みんな、ありがとう」

なんか、絶対治してやらなきゃいけない空気だよこれ。

あんまりプレッシャーかけないで欲しいんだけど・・・




「それじゃあドラゴンさん、お願いします」

「了解、やれるだけやってみるよ」

俺はベッドに近付き、覗き込む。少女は起きる様子もない。

どんな状態なのかわからないため、眼を凝らして見ると彼女の体内に2種類の魔力が見えた。

二つの魔力が反発しあっているようで混じらず別々に存在している。

一つは彼女本来の魔力のはずだ。なにせラズリーにそっくりだから。

問題はもう一つだ。多分これが目覚めない原因だと思うのだが、



・・・なぜか俺の魔力に似ているのだ。

な~んかいや~な予感がするんだよな・・・

さらなるトラブルに巻き込まれそうな嫌な予感が。


「あの・・・やっぱり無理ですか・・・」

「ああ、ちょっと待ってくれ。今やってみる」


ええい、もうやるしかない。全身まるごと戻すほうが早い!

少女に手をかざし、魔力を集約する。そしてその名と共に解き放つ。


「いくぞ・・・時間回帰!」


先ほどと同じように光が煌き、少女の胸に集まっていく。

すると、なぜか魔力が戻ってきた。失敗か?と思ったが、

よくよく見ると少女の中にあった魔力が俺に戻ってきている。

正確には『俺に似ている魔力』が俺に戻ってきているのだ。

すなわちこの魔力は元々俺の物、ということになる。



・・・つまり、この娘が倒れた原因って俺?

全く身に覚えがないんですけど!?



俺がパニックになっていると光がだんだんと収まってきた。

周りの妖精達も近寄ってきている。

光が収まりしばらくすると、少女の瞳がゆっくり開いた。


「あれ・・・私・・・どうして・・・」

「ラピス姉さん!!!」

「「「姫様!!!」」」

どうやら、魔法自体は上手くいったらしい。少女はゆっくりと身体を起こす。


「ラズリー・・・みんな・・・」

まだぼんやりしているのか、周りをゆっくりと見つめている。

そしてその中でもひときわ目立つ、俺と目が合った。

その瑠璃色の瞳が、こちらを見つめて動かない。

夢うつつのような状態で、少女ラピスは呟いた。






「神龍・・・様?」











お読みいただきありがとうございます。

次回やっと世界と自分の情報を手に入れます。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ