プロローグ 始まりの日
初投稿です。よろしくお願いします。
・・・状況を整理しよう。一体全体何がどうなっているのか?
昨日もいつも通りの日々だったはずである。
朝に起きて行きたくもない会社に行き、
責任を押し付けてくる上司に叱られながら仕事をして、
仕事が終われば無理やり飲み会に付き合わされ、
スーパーの割引惣菜で晩飯を済ませて寝る。
なんとなく入社した会社だからか、
やる気も出ずただ毎日を過ごすだけで、
変わろうと思ってもただ思うだけでなにもしない、無意味な人生。
そんな日々を送っていたはずなのだが、目覚めた今少々おかしい事が起きているようだ。
まず一つ、妙に布団の感触が硬いのである。
確かに自分の布団は何年も使い続けている煎餅布団だが、
いくらなんでも今感じている岩盤のような感触ではなかった。
次に、部屋がかなり広くなっていた。
築25年のオンボロ物件、収納スペースほとんどゼロの四畳半部屋。
そこそこ愛着のある部屋だったのに、
今はどこの広間だよ、とつっこみたくなる広さである。
つーか電気もつけてないのになんでこんな明るいんだよ。
俺の部屋にこんなに光りモノがあるわけねぇし、貧乏社会人舐めんな。
そして、これが一番気になるのだが、体の感覚がおかしいのである。
視線は高いし腕はゴツい、背中と尾てい骨のあたりがムズムズする。
感覚器官が増えたようなイメージがずっとつきまとって離れない。
・・・うん、スルーしたかったけど駄目だよねー。
これ、明らかに人間の腕じゃないんだよねー!
爬虫類系列のゴッツい腕に異常に鋭い爪。
色は肌色ではなくギラギラした銀色。
背中と尾てい骨のムズムズしている感覚に、意識を向けると動かせそうなので
動かしてみればバッサバッサいってる翼と、自由自在に動く尻尾。
これはもう認めるべきなのだろうか。
なにかロクでもない事が起きているんだと。
少しだけ冷静になった所で周囲をグルリと見てみると、馬鹿デカい広間の隅に
水場のような一画を発見した。いや、してしまった。
俺はそこにノッシノッシと四足歩行で近づいていく。
・・・この時点でもうアウトのような気もするが考えてはいけない。
水場についた俺は、恐る恐るそこに顔をのぞき込むように、水面を見る。
するとそこには、いつもの見慣れた顔ではなく、
とても精悍な顔つきの、ファンタジーおなじみの存在、
うん、どこをどうみてもドラゴンですよね、わかります。
とりあえず日本人としてやっぱりこれは言っておかないとね。
「なんじゃこりゃぁあー‼‼‼」
・・・白神 透、27歳。どうやらドラゴンになってしまったらしい。
読んでいただきありがとうございます。