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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

ヤンロリ先生

ヤンデレロリコン先生の放課後修羅場大戦争

作者: どるふぇ

混濁していた意識が、徐々に冴え始める。

体の節々が軋み、座ったまま寝ていたのだと気付いた。確か、宿題の不備とかで放課後に補習をしていたはず。

居眠りしてしまったらしい。着ているのもまだ新品の制服で……。


あれ……?


「お目覚めですか、児囃(こばやし)さん」

暗い部屋に、蝋燭がゆらめく。

「……先生……?」

名前は知らないが職員室にいた先生。

そんな先生は誰にでもいると思うんだ。

だけどさ、そんな先生が麻縄持ってんの? それ明らかに私の事を椅子に拘束してるのとおんなじだよね。

「先生、これは一体」

「さしずめ児囃さんの十字架、とでも言ったものでしょうかね」

「は? 私、悪い事した覚えはありませんけど。課題はしくじりましたが」

「あれは児囃さんを誘き出すための口実です」

「……うそん」

だったら早く帰してよ。漫画の単行本発売日なんだけど。クソが。

「それで、あなたに命令したい案件がひとつ」

「ひとつだけですか? だったら職員室にでも呼んでくださればよかったのに」

「いいえなりません。場合によってはあなたを消さざるを得ません」

「うへぇ」

先生は麻縄を放り投げ、それはそれは強烈なダークスマイルを浮かべた。


「あなたの妹を、寄越しなさい」


「嫌ですね」


「それでは遠慮無く」


先生が指を鳴らすと、室内に幾つもの蝋燭が灯る。そして何処からか取り出したチェーンソーを構えた。

私は拘束を児囃ちゃんパワーで引きちぎる。

なめんなよ、児囃一族の力。

室内にモーターの音が響いたのと同時に、戦いは始まった。

「ちっ、道理で最近視線を感じると思ったら! 糾子(きゅうこ)は私の妹だ!」

「力づくで奪うまでです」

制服の袖を電動刃が掠める。

「あっ畜生、制服いくらすると思ってるんですか!」

「死ねば必要無くなるでしょう」

「死なねーよ! 絶滅した鬼の血を継ぐという最後の一族、児囃家の存続がこの私に掛かってんですよ、それに糾子をお前みたいな男にやる訳無い! 穢れる! 血ではなく糾子が!」

「はっ、あなたのように醜く愚鈍な女が、あの天使を姉気取りで守るなんてちゃんちゃら可笑しいですね」

渾身の一撃をかわされ、再び刃が迫る。

「出た、高校生からはババア発言! だいたいお前なんかどうせちっちゃけりゃ何でもいい腐れロリコンなんだろ?」

「そんな時期が私にもありましたね。でも文化祭の日、無邪気に笑う彼女の笑顔を見てからそんな考えは捨てました。天使のような純粋さ、妖精のような愛らしさ、そして神々しいまでの魅力を纏った体。糾子ちゃんこそがこの世の全て。糾子ちゃんを手に入れるためなら将来義理の姉になるであろうあなたでも容赦無く殺します」

「ガチか! 衝撃の告白! テープレコーダー持ってくるんだった!」

「ですよね、ドラマなんかで主人公が肝心の時に無防備なのを見るとイライラします」

「……悔しいけど、同意」

拳と刃が、衝突。

そのまま張り合うも回転し続ける刃に抉られ、血が飛び散る。焼け付くような痛みが私を苛む。

圧倒的不利。このままじゃ……糾子の純潔が危ない。

「諦めたらどうです?」

「……くっ……!」

力の限り蹴る。快感にも似た手応えを感じ、吹っ飛んで壁に衝突した先生に思わずガッツポーズ。右手が痛い血が止まらないけど糾子さえ守れればどうでもいいや! あはは!

「妹は誰にも渡さない!」

「……なかなか、お強いですね」

ぱち、という音の後、モーター音はフェードアウトした。

「そこまで仰るのなら、ここはひとつ交渉しませんか?」

「死ねロリコン」

「待ちなさい私を殴り殺したら警察行きですよ」

「あんたもな」

「それでは、こういうのはどうでしょう。僕は糾子ちゃんとホルマリン漬けを前提にお付き合い、あなたは特別に警備係として糾子ちゃんのそばにいる事を許可します」

「聞けよ」

先生はずれた眼鏡を直し、

「だったら僕と協定を結びましょう」

と提案する。

「僕は糾子ちゃんに害を成さない。その代わり、あなたは糾子ちゃんと僕の交流を許可しなさい」

部屋の中を見回す。金属の扉にはぐるぐる巻きの鎖に南京錠。鍵はきっと、こいつが持っている。私かて流石に金属の扉は叩き割れない。まあ、さっきの児囃一族がどうのとか麻縄を引きちぎったのは気にしないとして。

「……そしたら、部屋から出してくれますよね」

「ええ。あなたはこの後、糾子ちゃんの為に書店へ寄る予定だったのでしょう?」

「何故それを」

「糾子ちゃんへの愛故に」

「キモい、けど……」

頭に糾子の顔を思い浮かべる。まだ小学二年生である妹の、満面の笑み。膨れっ面。べそかき顔。


『おねーちゃん!』

『なぁに? 糾子』

『一緒におふろ入ろ?』

『はいはい』

『わーい、やったー!』


『おねーちゃん、きゅーこのお菓子食べたでしょ!』

『ふんっ、名前書いとかないから悪いんだよ』

『書いたもん!』


『ぐすっ、うええ……』

『どうした?』

『……怖い夢、見たの』

『そっか。じゃ、お姉ちゃんのお布団で一緒に寝ようか』

『ホント?』

『今日は特別だよ?』



『おやすみ……おねーちゃん、だいすき……』



「仕方ありませんね」

とりあえず今は先生に従っておくしか……後で抹殺すればいい話だ。それに、なんつーか、妹の事を考えてたら自然と許せてきた。

「交渉成立、これからよろしくお願いいたします」

「ええ、よろしく」

かくして、私とヤンデレロリコン先生の放課後修羅場大戦争は、一時休戦となったのだった。


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