SS③
ちょっと寸止めかもです。ご注意下さい。
あなたは私がいなくなったらどう思うのかな。
きっと、どうとも思わないんだろうけど。
あと5分で日付が変わる。
(今日も、帰って来ないんだ…)
冷えた夕食を冷蔵庫に仕舞い、息をつく。
そしてリビングの電気を消して、階段を上がる。
静かな家に歩く音だけが響く。
二階にある寝室の扉を開け、暗い部屋の中に入る。
ゆっくりとキングサイズのベッドに腰掛けて、シーツに手の平を這わせた。
結婚して2年。まだ新婚と言われてもおかしくはないのだけれど、彼との仲は既に冷え切っていると言っても過言ではないと思う。
この半年、彼とまともに話した記憶がないのだ。
いつも夜遅くに帰ってきて朝早く出ていく。若しくは何日か帰ってこない。休日も無いようで、日曜祝日でさえ、同じように家を出ている。
彼がそんな生活を始めた頃は、戻ってくるまでは起きていたりしたこともある。
でも。
『まだ起きてたのか』
不機嫌そうに、溜息をついてそう言われてしまえば、頭が真っ白になって動けなくなった。
帰ってくるまで起きているのがダメなら、朝だけでもと思い、彼より早く起きてごはんの用意をしていたら。
『何でこんな時間に起きている』
眉間に皺を寄せて溜息をつかれたら、また動けなくなった。
そんなことがあっても彼を待つのは止められなくて、日が変わる頃までは起きていて、彼が仕事に行く頃にベッドで起きて寝ているふりをしていた。
………カタン…
小さな音でわたしは目を覚ました。どうやら眠っていたらしい。
彼が帰って来たのだ。
ガサガサと物音が聞こえる。
少ししたら寝室に入って来た。
扉が閉まる。
ドクン。心臓が嫌なほど大きく響いた。
彼がベッドに近付いてきた。
端の方に腰掛けて、ベッドに乗る。
必死に眠ったふりをして、彼の動きが静かになるまで待つ。
彼の寝息が聞こえてきた。
微かに目を開けて振り向く。
「………ッ…」
彼は私に背を向けて、眠っていた。
もう、我慢の限界だった。
彼のことが好きで結婚したはずだったのに。
どうして結婚してからはうまくいかないの。
これならまだ、付き合っていたころの方がもっと楽しかった。
部屋の棚に飾られている写真が目に入った。
彼と二人で出かけて、とても楽しそうに笑い合っている写真だ。
「………もう、むりだよ…」
声が震えた。
視界が歪んだ。
「……もう、だめなら、こんなのいらない」
その写真立てを手に取って、無理に笑った。
ああ、もうこんなふうに笑えない。そう思った。
そして、彼女は写真立てを床に叩きつけた。
ガラス製の写真立ては、ガシャンと音をたててガラスごと砕け散った。
これから、どうしよう?
このままここでは暮らせない。彼と別れないと。
2年で離婚かぁ。早かったな……。バツがついちゃった…。
部屋も片付けないと。安い部屋探して、仕事も見つけないと。
そんなことを考えながら、のろのろと動き始めた時だった。
「おい、大丈夫か!!?」
乱暴に扉が開かれて、彼が部屋に飛び込んできた。
あまりに吃驚して、涙が止まる。
彼の言葉に答えられないでいると、彼に肩を掴まれる。
「怪我でもしたのか? 何で泣いてるんだ? ここにいたら危ないからこっち来い」
二の腕を掴まれてぐいぐいと引っ張られた。そしてリビングに連れてこられる。
「座れ。怪我してないか確認する」
彼は私をソファーに座らせると、足を持ち上げた。
「何で、いるの?」
いつもだったら帰って来ていない時間だ。だってまだ、夕方なのに。
彼は丹念に、私の足の裏を確認しながら、答えた。
「仕事が終わったから」
「終わった?」
「そう。今日から早く帰ってこられるようになった」
え、なに。どういうこと。
「……怪我はないな」
安心したように、彼は言った。
「気をつけろよ。怪我したら危ない」
なんか、心配されてるみたい。
まだ好きでいてくれてるの?それとも、彼の優しさ?
最後に、こんな優しさをくれるなんて、ずるい。
「…ど、どうした?」
動揺した彼の声が聞こえた。
一体どうしたのだろう? 聞きたいのはこっちだ。
「何で泣くんだ……」
彼に言われて初めて気が付いた。
そして、気づけばもっと涙が溢れてきた。
私の頭を撫で、流れる涙を拭う彼は、すごく困った顔をしていた。
この後はお互い誤解を解いていちゃつく予定です。
異常なべた甘夫婦になるはずなんです。
でも、すいません。
今はこれ以上書けないのでありますうぅぅ( ノД`)…
いずれ書ける日が来たらちょっと続きを書くかもです。
ほんとすいません。
でもこのSS集、こーゆーのの寄せ集めだから、仕方ないですよね f(^ー^;