もしも、ダーク・ハンターの世界にパソコンが普及しオンライン・ゲームが流行したならば。
「朝早くから仕事とは大変だな、クルド。もしかして最近流行りのパソコンゲームかい?」
一階にパソコンルーム、二階に宿と。寂れた安宿を経営する好々爺の老人亭主が、朝食のパンとコーヒーをパソコンテーブルに並べながら、からかうようにそう尋ねた。
海外からの普及により、最近この街でパソコンによるゲームが流行し始めたこの頃。
安くて手軽に買えるとあって、庶民や貴族の間でも大人気の娯楽物となった。
クルドは一台のパソコンを前にして椅子に座り、すぐにパソコンを起動させる。
「ロンはやらねぇのか?」
老人亭主──ロンは微笑すると肩を竦めてお手上げした。
「ワシもやってみたいところだが、いまいち操作が難しくてね」
「じゃぁ俺がやるのを見とくか?」
「そうしよう」
ロンはクルドの隣に椅子を運ぶと、そこに腰を下ろした。
パソコン画面にゲームの初期映像が流れ始める。
◆
『オンラインRPGの世界へようこそ。
仲間を集めて悪い魔女を倒し、姫を救おう!』
◆
・勇者クルド さんが【裁判者ギルド】に入室しました。
クルド:「誰かいるのか?」
・魔法使いエミリア さんが【裁判者ギルド】に入室しました。
エミリア:「あ! おじさん見ぃーっけ!」
クルド :「げっ! なんでお前がこのギルド名知ってんだ!?\(゜ロ\)(/ロ゜)/」
エミリア:「あのねあのね、煙突掃除のティムに聞いたの。そしたらね、このギルド名を教えてknt」
クルド :「おい」
エミリア:「kuれrk」
クルド :「実は打ち慣れてねぇだろ、お前」
・賢者クレイシ さんが【裁判者ギルド】に入室しました。
クレイシ:「 」
クルド :「……お前まさか、ヴァンキュリア・E・クレイシス侯じゃねぇだろうな?」
クレイシ:「わたしの名前は ヤマダ・タロウ です」
クルド :「うそつけ!」
クレイシ:「こんにちは こんばんは ありがとう さようなら」
クルド :「お前も打ち慣れてねぇのかよ!」
・賢者クレイシ さんが退出しました。
クルド :「早ぇな、おい」
・賢者クレイシ さんが【裁判者ギルド】に入室しました。
クレイシ:「悪い、ミスった」
クルド :「どんな打ち間違いすればそうなるんだ!」
・盗賊ラウル(38) さんが【裁判者ギルド】に入室しました。
ラウル :「あれ? なぜ俺様だけ年齢が表示されるんだ?」