桜の落差
春が来ると、決まってあの頃を思い出す。
僕の未来が、まだまだ希望に満ち溢れていたあの頃。
君と僕は、二人で花見に行ったよね。
記憶にあるのは、夜桜が綺麗だった事、酔っ払ったサラリーマンがうるさかった事、色々な屋台がいい匂いをさせていた事。
そして、君と話した事。
君は舞い落ちる桜の花びらを見ながら、同じ桜なのに、落ちて行くスピードが違うなんて、なんか不思議だよね。と言った。
僕は理解できるような、できないような気持ちで、生返事をした。
それから数年経ったけれど、二人で花見に行く事は二度となかったね。
できることなら君に会って、あの時桜を見ながら君が言った言葉の意味が、今なら痛いほどわかるよ。と言いたい。
でもそれはできない。
同じだけ歳をとったけれど、同じだけ成長は出来ていない。
桜の花びらが舞う様子と一緒で、全部同じというわけにはいかないんだと、歳をとって悟った。
君は高みへ行ってしまった。
僕はいつか追いつけるのだろうか?
桜の花びらが落ちる様を見ると、毎年思う。
あの頃、必死に受験勉強しておけば良かったと……。
単なるコメディーであり、風刺や意見の要素は一切ありませんので。