少女は誰?
「はぁ…何処にいるんだろう」
溜息をつきつつ、フラフラと捜す。
あのあと職員室に向かったのだが、既に彼女は職員室を後にしていた。
職員室には幸い一番取っ付きやすい担任の平井がいてくれて、話を聞くことには聞けた……
のだが……どうも質問していくに連れ自分でも気付かぬ内に興奮してたみたいで担任の平井に、
「ま、まあ落ち着け小鳥遊…!とりあえず…な?」
かなり驚かれてしまった。
なだめられてから我に帰り、何故興奮したのか分からなくてとりあえず落ち着く。
同時に担任の教師に詰め寄り、必死に彼女について聞いた自分が恥ずかしくなり赤面した。
平井先生は「ふぅ」と一息つくと、
「どうしたんだ小鳥遊、普段大人しいお前からは想像できないくらいの勢いだったから先生、びっくりしたぞ?」
と聞いてきた。
「いや…別に意味はなくて、その…ただ気になったというか…」
自分でも今一つ理解が出来なくて返答に困る。
そんな直哉の様子を見て平井先生は何かを感づいたような顔をし、
「小鳥遊にだけ先に教えといてやろう、彼女は転校生で明日からこの学校に来るんだよ」
と嬉々として教えてくれた。
「……転校生……クラスは!?」
転校生と聞いて、まずは彼女のクラスが気になる。
なぜかは分からなかったが、自分と同い年だという確信はあった。
「うちのクラスだよ。まあまあ、落ち着きなさい。」
鼻息荒く質問する直哉をなだめつつ、先生は答える。
「そうか…うちのクラスか…良かった。」
言ってから直哉は自分が安堵していることに戸惑う。
『あれ…なんでいま僕は良かったと思ったのだろう?』
自分の気持ちに理解ができず首を傾げる直哉の様子を見て苦笑しつつ、先生は彼女は今校内を回って学校に慣れて貰ってるよと教えてくれた。
とりあえず先生にお礼を言って、職員室を後にしようとする直哉を先生が呼び止める。
「小鳥遊、お前の事情は知っているからあまり深くは言わないが…もっと楽しそうに学園生活を送ってほしいと先生は思う。」
と、複雑そうな顔をしながら声をかける。
今日はやけに皆この話題をだすなと思いつつ、
「大丈夫です、充分楽しんでいますよ?顔に出にくいタイプなんです。」
と返した。
「そうか?ならいいんだが……まあ、青春は短いぞ?過去に縛られず、いい思い出をつくるんだな。」
「頑張りますよ。」
先生の言葉に笑いながら返し、直哉は職員室を後にした。
「一時期はどうなるかと思ったけど…大分ましにはなってきたな…しかし…」
直哉が去った後の職員室で平井は一人物思いにふける。
最近になって小鳥遊は大分明るくなったが、根本的なところで周りを避けているふしがあった。
『まあ、なんにせよこれは本人の問題…いや、本人達の問題だ』
彼らの事情を知っているからこそ、彼らにしか解決ができない。
これには自分が口を挟むべきではない……平井はそう思っていた。
「どちらにせよ、小鳥遊には頑張ってもらいたいな。頑張れよ、青春は短いからな…」
そう呟くと、平井は心底楽しそうに笑みを浮かべた。
そしてその後職員室を後にした直哉は、フラフラと彼女を探して校内をうろつき、今にいたる。