日常の変化
「ふぅ…とりあえず午前の授業は終わりだな。」
おおきく伸びをし、首をほぐして席を立つ。
今は昼休み、皆思い思いに昼食の準備をしている。
食堂に猛ダッシュで駆けていく奴、自前の弁当やコンビニ飯を机に広げる奴、屋上や中庭に移動する奴。そしてカップルでベタベタしながら弁当の内容について話、教室を出ていく奴…消えろ。
「ほんと、マジ恋人達なんて消えちまえばいいのにな!直哉、飯食おーぜ」
「まったくその通りだ…って、人の思考を読むな!」
横に突然雄介が現れたので驚きつつも、ツッコミは忘れない。
「俺、今日はパン。直哉はー?」
「………パン」
そんな直哉のツッコミを華麗に無視する雄介にに呆れつつ、さらにつっこむのは諦め飯の準備をする。
「今日は屋上にでもいって食べない?」
唐突な雄介の提案に、
「珍しいな?お前が外で食べるなんていいだすとは」
僕は驚く。
「いやー、直哉が珍しく朝早くから学校に来てたから俺も珍しいことしようかと。中庭は嫌だけど……」
「確かに…」
雄介が中庭を嫌がる理由はただ一つ、カップルがやたら多い。ただその一点につきる。
「わかったよ、俺はどこでもいいから早く食いたい。」
「なら屋上まで走るか!腹も減らせれて一石二鳥だぜ!!」
「やだよ、すでに減ってるし。廊下は走るな、だろ」
そんなやり取りをしながら屋上に向かう。
『今日は暖かそうだな』
と廊下の窓から外を見ながら雄介と他愛もない話を続けた。
「なんだよー、遅刻魔の癖に規律に厳しいのかよ?」
「遅刻ギリギリなだけで遅刻は『魔』が付くほどしてない…」
「でも、遅刻は遅刻だろ?」
階段を上りつつ、雄介の文句を適当にあしらう。
しかし、若干形勢が怪しくなってきた……
「だいたいさー直哉は…」
「静かにしろよ、もうすぐ職員室だぜ?」
雄介は以外に頭は回るほうなので(行動は抜けてるが…)負けそうになったため、話を逸らす。
「……卑怯者。」
雄介は口を尖らす。
でもまあ、職員室が近いのは事実。屋上に行くまでの道のりは職員室の前を通らなければならないのだ。
「…………よしっ。」
これで事実上は俺の勝ち…なはず。逃げた訳じゃないぞ?断じて。
対する雄介はさくっと思考を切り替え、
「パン〜パン〜♪」
変な歌を歌ってる……何と言うか……ごめん、俺の負けだわ。
すこし落ち込みながら視線を無意識にさまよわすと、視界に気になる人影が写った。
雄介も気がついたらしく、
「おっ、かわいい女の子がいる。」
すこし興奮ぎみに声を上げた。
雄介の言うとおり、確かにかわいい女の子が…あれ?あの子、どこかでみたような…?
「あれ?……もしかしてあの子、昨日の…」
「あら?直哉の知り合いなの?いいな〜…あっ、職員室に入ってった。」
雄介のゆうとおり、その少女は職員室におずおずとした様子で入っていった。
「可愛かったな〜…いや、どちらかと言えば美人系かな?」
「………」
「…直哉?」
「………おっ?すまんすまん。」
雄介に呼ばれるまで見とれてしまった、危なく本来の目的を忘れるところだった…
「じゃあ、さっさと屋上に飯を食いに行くか。」
雄介に声をかけ、屋上に急ぐ。
「………な〜る、こりゃいいや♪」
雄介のなにかを企んでいい案が閃いた!という表情に僕は気がつかなかった。