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朝から五月蝿い奴

 早朝の町を余裕を持って通学するのはいつ以来だろう。正直、高校生になってから初めてかもしれない…。


「意外と寒いな…」


 まだ夏になる前だからか、朝の空気は清々しいが少し…寒い。


「さっさと学校に行って二度寝でもするか。」


 そう決めると、早足で学校に向かった。



 一年生の教室は校舎の三階にある。とりあえず無駄に長い階段をぐだぐだと文句を言いながら上り、教室に入る。


「誰もいない…」


 正直自分より早く来ている奴が誰かいるかなと期待していたが、誰も来ていなかった。


「…寝るか」


 誰もいないというのは意外と寂しいもので、少しふて腐れる。しかしそんな気持ちも一瞬で、すぐに元の思考に切り替えて机に突っ伏した。


「……ひんやりしてる…気持ちいい……」


 意識はすぐに遠のく。

 やはりなんだかんだで朝が早いと多少の睡魔が残る。なのですぐに気持ちよくなり、ホームルームまで寝ようと決める。


『机で寝るのすげーなんかいい…』


 固いのに気持ちよく感じる不思議な感覚を味わいながら寝息を立てはじめる…ぐぅ。



 机に突っ伏すしてから数分、教室のドアが乱暴に開けられた。

 そして乱暴に開けた張本人は教室にはいると一声、

「おっはよー!!今日も俺は教室に一番乗りだぜー!!……って、直哉がこんな時間から来てるーー!?なんでー!?」

と挨拶から驚くまでの動作をかなりのオーバーアクションでおこなった。


『朝から五月蝿いのがきやがった…。あいつ、こんな時間から登校してたのか……無視しよ。』


 顔も上げず声だけで判断すると、すぐに睡眠を続ける。眠い。


 一方、自分が驚いているのに反応のない友人をみた彼は大袈裟にショックをうけ、友人に駆け寄り、

「なんだよー、早く来てるなら挨拶くらいしろよー?俺が可哀相な奴になっちゃうだろー」

 自分を無視して睡眠を続ける友人を揺する。


「………。」

「起きろー!」

 体を揺する、ゆさゆさ


「………………。」

「なーおーやー!」

 机を揺らす、がたがた


「……………………。」

「これならどうだ!!」

 髪をひとふさひき抜かれる。ぶちっ。


「いてぇな!!ぶん殴るぞこら!」

 我慢ができなくなり、顔を上げキレる。


「おー、起きた起きた」


 対する彼は友人が怒っているのを無視。ニコニコと笑い、

「朝から学校来て寝るなんて、つまんねー奴だな」

と顔を突いてくる。


「ほっとけ…第一、お前に面白い奴と思われたって俺にはなんの得もねーから…」


 折角いい感じに気持ちよくなってたのに…と恨みがましく睨みつけてみたが、


「なんでこんな朝早くから直哉来てんの?いつも遅刻ギリギリのくせに」

 睨まれているのを普通にスルー、こちらに質問してきた。


 こいつ…!!


「たまたま早く起きたから学校に来ただけ、家にいてもやることないし。」

 呆れつつも、彼の質問に答える。


「なら、なんで学校で二度寝してんだよー?家で寝たってかわんなくね?」


「家で寝たら遅刻するかもしんないだろ?」


 不思議そうな顔をする彼にそう返す。


「でも普段のお前なら家で二度寝して、遅刻ギリギリでくるのに…今日はなんで遅刻気にすんの?」

 直哉らしくねーぞ、と彼は聞いてきた。


「………今日はそういう気分だったんだよ、気にするな。」

 自分でも確かにと思いつつ、言葉で認めると負けな気がしたので適当に返しておく。


「そっか、気分か、ならいいか。」


 そう言うと彼は自分の席に着き、荷物を整理し始めた。



 朝からうっとうしいくらいに元気な彼は、一応高校生になる前からの友人で名前は佐伯雄介(さえきゆうすけ)


 とりあえず元気……だけどどこか抜けている、そんなよくいるアホな奴。勉強はできるけど…。


 朝から元気なのはうっとうしいことこのうえないが、別に悪い奴ではない。

 むしろ他人に気遣うべきところではちゃんと気遣う、良くも悪くもさっぱりとした気持ちのいい性格をしている。

 周りからもその性格と微妙に天然なおかげで、男女問わず慕われている数少ない僕の友人だ。


 なんで仲良くなったかは僕は覚えていない、気がついたら友達同士になっていた。

 まあ、そんな感じで一緒に話すようになった。


 荷物を整理し終わったのか、雄介はニコニコしながらこちらへ戻ってくる。


「直哉、トランプしよーぜー?」


 楽しそうな彼のその手には、トランプが握られていた。


「眠らせてくれないのね…はぁ…」


 ため息をつきつつ体を起こし、仕方ないなと雄介の相手を始める。


「なにする?」

「何でもいいよ。」


 それからはホームルームが始まるまで、雄介と後から来たクラスメイト達と雑談しながらトランプをした。



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