#9
コロコロ変わる態度と表情についてけない自分がいた。一体どれが本当の顔なんだろう。謎の好奇心に支配されて、呆然と立ち尽くしてたけど。
「さてと! ムカついたら仕事やる気失せちまった。帰ろ」
「えっ!?」
今までの流れから、これからもっと口論をけしかけてくる気がしたのに。七瀬は俺の横を通り過ぎて、さっさと廊下に出てしまった。
「オラ、さっさと出ろよ。鍵かけるんだから」
「あ、はい……?」
仕方なく言われるまま、部屋を出た。振り返って見ると、上に札が出ていた。
「あ、ここ生徒会室だったんだ」
「今さら? 目ん玉ついてる?」
さっきは勢いのまま入ったから、確認する余裕なんてなかったんだ。それをこいつは……。
「しょうがねえだろ。てかお前口悪すぎ! そんなんでよく会長に選ばれたな!」
「普段は演技してるに決まってるだろ。こんなクソみたいな空間で本性出すかよ」
鍵をかけ、七瀬はため息たじりに歩き出した。智紀もその後をついていく。
「学校では勉強と部活と委員会のみ専念すればいい。従って恋愛をする必要はなく、むしろ著しく学業を妨げるものと判断して……全ての権限を乱用して俺が叩き潰す」
「権限は乱用すんなよ! 最低過ぎるだろ!!」
慌ててツッコむけど、彼は“恋愛”の二文字には反吐が出ると言った。
男同士の恋愛が許せない、と言う。
……でもそれって所謂ヒガミじゃないのか。
下へ続く階段が見えたとき、七瀬は足を止めた。
「俺は親切心でやってるから、言わばボランティア活動なんだ。やめる気はない」
誰もいない廊下で、気持ち悪いぐらい声だけが響く。
胸の中で何かが暴れた。実際、この学校の同性愛者達の為に俺が頑張る必要なんてない。ないけど……。何か、何としてもこいつの暴走を止めたくなった。
考えまくって結びついた提案は、自分でも驚くようなもので。
「じゃあ俺が、楽しい青春生活を送らせてやる。カップル潰しなんかよりずっと良いと思うぜ」
自然と口から零れ出て、笑いかけた。
彼はわずかに目を見開き、心底不思議そうに見返してきた。気持ちは分かる。俺も、何でこんなことを口走ったのか分からない。
それでも返事を待っていると、七瀬は俺を追い越した。
「……好きにしていいけど、俺の邪魔をした時はそれなりの処罰をするから」
処罰って何だよ……。
ドン引きしてることがバレないように俯く。視線を下に落とすと、彼の声がよりクリアに聞こえた。
「口先だけで終わんないように頑張れよ。俺、そういう奴本気で嫌いだから」
顔を見なくても威圧だけはひしひしと伝わったきた。
ほぼほぼヤンキーだな。顔だけならむしろ可愛いぐらいなのに……。




