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人の恋路を邪魔しちゃいけません。  作者: 七賀ごふん
転校生の初日

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8/46

#8



いい加減、空が夕焼け色に染まった頃。生意気な彼もすっかり元気を取り戻していた。


「チッ、何でこんなとこに一昨年のファイルがあんだよ。出したんならしまえよ、クソが」


うわ、こいつほんとに口わるい。

心の中で引いていると、七瀬はファイルをキャビネットに仕舞った。

「で。いつまでそこにいんの」

沸騰は速いが切り替えも早い。ソファに座って寛いでる智紀を一瞥して、面倒そうに吐き捨てた。

冷ややかな目つきで腰に手を当てている彼に、昼間の面影は残ってない。

「もしかして、さっきの奴に謝るまで帰らないとか言う気? それなら」

「いや。それは、一旦いいや。とりあえず」

よっ、とソファから立ち上がり、智紀は七瀬の目の前に立った。


「これから、男同士の恋愛を妨害しないって約束すればいーよ」

「は? そっちの方が意味わかんない。何のメリットがあんの?」

「メリットとかじゃなくてさ、単純に不愉快だって言ってんだよ。人の恋愛にチャチャ入れるとか、中学生だってしないんじゃね」


またちょっと説教ぽくなった。こいつ相手だと、どうしても刺々しい物言いになってしまう。

「とにかく、男同士でもカップルを引き裂くなんてしないこと! 約束してくれる?」

「やだね」

「オイこら」

スッと逃げようとした彼の行く手を阻み、壁に押し付ける。体格や腕力からも、彼に負ける気はしなかった。

力で言うことを聞かせようなんて思ってないけど、ナメられまくっても困る。


「約束しないなら、俺も何するか分かんないよ」


思ったより細い七瀬の肩を、逃げられないよう押さえる。

男なのに、ムカつく奴なのに。よくテレビなんかで見るこのシチュエーション自体は、妙に意識させられた。


「ははっ、面白いじゃん。怒らせたら、例えばどんな事してくれんの?」

「え? それは……」

予想外の切り返し。全然考えてなかったから回答に困る。

「えっと……暴力以外の何かだよ」

案の定アバウトなものになった。人を脅すのって難しいな……。

「ふっ。ははは、何それ。ウケる」

「こ、こっちは真剣に……」

「分かった分かった。いや、言う通りにはしないけどね。言いたいことは分かった」

七瀬は子供みたいな顔で笑った。

それにちょっとだけ見蕩れる。


何だ。……普通に笑えんじゃん。




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